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2014年4月19日 (土)

The Masked Empire 3(3)

 The Masked Empireの紹介、「要約版」と表題につけてしまって、失敗しました。
 この表題がずらっと並ぶと、きっととても気持ち悪い。
 過去分も含め、表題から「要約版」を取り、逆に第一章のみにあったベタ訳に「全訳」をつけることにします。

***

 ブリアラは宮廷から外に出ると、マスクと羽毛の外套を脱いで、いつも用いる隠し場所に仕舞った。ただのエルフに戻った彼女は、サー・ミシェルの足取りを探り始めた。

 オーレイで最も著名な密偵はバードたちだ。情報を嗅ぎまわる伝説的な技能を有していて、貴族たちを思い通りに操ることができる術策にも長じている。それにもかかわらず、ときにはそれが故に、貴族の男女から演奏のため招かれる。「ゲーム」に興じる貴族の男女たちは、欺瞞の達人たちに機知の戦いを挑むことを好み、またそこからいくばくかの手口を学ぶ。

 だが、バードが貴族たちを遣り込めることができると言っても、著名で、伝説的ですらある以上、監視されている。今のブリアラは、市場に数多く行きかうエルフのひとりに過ぎない。
 香辛料の荷降ろしをしていたエルフの少年からは、チャーニューの今年の収穫は思わしくないこと、洗濯女からは、ヴァル・ファーミンの商人の話として、アダマント要塞で奇妙なことが起きていることを聞いた。最後には、駅馬車のヒューマンの御者から、この早朝、チャントラル伯爵が、大公ギャスパードの邸宅に乗り付けたことを聞きつけた。

 ブリアラは、サー・ミシェルの行き先を示す手がかりを見つけるまで、歩き、見聞きし、そして待った。

 子供の頃、まだ十歳のセリーンの髪を直している間、マンティロン侯爵未亡人と、セリーンの母方の従兄にあたるプロスパー公爵が、セリーンの両親と晩餐の卓を囲んで話をするのを聞いていたことがある。最初は貴族たちの狩りの話だったが、やがてプロスパーが、セリーンは黄金の獅子を射止めるかもしれないと言ったのを聞いて、ブリアラは不思議に思ったものだ。セリーンは、レディ・マンティロンからようやく弓矢の扱いを教わりはじめたばかりだった。だが、セリーンの息遣いがその話題に反応し、レディ・マンティロンとセリーンの両親が彼女の顔を見つめていた。ブリアラは躾けられたとおり、食卓の誰とも目を合わせず、壁に掲げられたヴァルモント家の紋章、紫地に描かれた黄金の獅子のほうを見た。ヒューマンたちは狩りについて話をしているのではなかった。 

 ブリアラは、自分の母親が別のエルフの召使いの女性と、どちらの娘がセリーンの侍女になるべきかについて口論していたことを覚えている。だが次の朝には相手の女性は屋敷から姿を消しており、セリーンの父親であるレイノード王子の財布から盗みを働いたせいだと皆が噂していた。ブリアラの母親は何も語らなかったが、彼女にセリーンの言うこと全てに従い、その友人になるように言い含めた。
 貴族たちがオーレイの玉座を射止める話をするのを聞いてはじめて、彼女は母親がなしたことの重大さに気がついた。

 市場では、ヒューマンの針子の女が召使いのエルフの少女をしかりつけている。ヒューマンたちはにやにや笑い、エルフたちは目を逸らしていた。ここにはエルフの商人の姿は少ないが、特別な品を売るエルフ商人は、上流階級向けの市場で商売することを許されており、彼らに対する脅しはセリーンが厳しく戒めている。徐々にではあるが、ブリアラの民たちの地位は良くなりつつあった。

 ブリアラはまだ少女の頃から、注意深く観察することをセリーンに学んでいた。少女、とりわけエルフの少女は男性のように振る舞うことはできないからだ。素早く攻撃的な行動を起こす男は、大胆不敵だと称賛される。同じ行動を起こす女は、愚かで自暴自棄だとみなされる。ヴァルモント家の召使いであることを示すマスクがなければ、エルフであり庶民であるブリアラは侮辱からも暴力からも身を守ることができない。彼女の強みは、取るに足らない存在であることだ。貴族たちは、隠語や独特の言い回しを召使いが理解し、そのままセリーンに伝えているとは思いもしない。セリーンの家族の「ゲーム」を見守ることで、ブリアラは淑女の最大の武器である、耳と目を使う術を学んだ。

 セリーンの母親が死んだとき、セリーンを抱きしめていたのはブリアラだった。貴族たちは狩りの事故と言っていたが、ブリアラは「狩り」の意味をすでに知っており、プロスパー公爵は公然と涙を見せながら、セリーンと父親への支援を申し出ていた。喫煙室の外の闇の中で、室内にいるプロスパー公爵とレイノード王子が、狩り場の事故を演出した娘の父であるギスレインのバスティエン公爵邸を訪れる算段をしているのを、セリーンの代わりに盗み聞いたのもブリアラだった。 

 バスティエン公爵の娘が狩りの事故のため死んだ夜、ブリアラは、帰宅したレイノード王子の腕に小さな傷を見つけた。傷は日に日に黒ずんでいき、最後には彼の命を奪った。召使いたちは皆毒のことを囁き合っていたが、死因は病気ということにされた。

 両親を喪ったとき十六歳で、虚ろな目をしていたセリーンを世話したのは、皇帝フロリアンじきじきに出頭を命じられ不在だったプロスパー公爵ではなく、ブリアラだった。
 ブリアラはセリーンの舞踏会の着付けをする際、女性たちの衣裳について他の召使いたちに聞き込みをさせ、セリーンがほんの少し優位に立つように手配した。セリーンがジェネヴュール伯爵夫人の子息、それからレディ・マンティロン本人の子息を招いた席では、ブリアラは飲み物を給仕するため傍らに立ち、オリージャン・バードから教わった身振りで、セリーンが世界最大の帝国の玉座を争う際の味方になるよう、男性たちの気を引き付けるためのちょっとした提案を伝えた。

 両親の死以来、レディ・マンティロンから招待を受けた初めての日、セリーンが歓喜とともに思い切り抱きしめたのはブリアラだった。

 過去の勝利を思い出すことは、ブリアラの今の苛立ちを増すだけだった。サー・ミシェルはセリーンのチャンピオンとしての身分で動き回ったのではないらしく、足取りはつかめなかった。今どこにいようが、彼に身の危険が及んでいることは確かだ。忠誠心の塊である彼がセリーンを見捨てることなどありえないが、ブリアラの知る限り、彼の出自に脅迫を受けるような材料は何もないはずであった。彼はシェヴィン家の傍流の出だが、エティエンヌ・シェヴィンはセリーンの親密な仲間のひとりである。

 だが何か理由があるはずだ。ミシェルは今危険にさらされているか、または下級貴族に過ぎない以上、もう殺されているのかもしれない。「ゲーム」の賭け金が十分多ければ、身を守ることのできる身分なくして貴族たちの近くにいる者の身は危険である。ブリアラはその教訓を十分に学んでいた。

 カーテンの向こう側から、セリーンが隠れているブリアラを小声で呼ぶ。今は完全に静かにしていなければならないという。ブリアラが赤いヴェルヴェットのカーテンを開けると、読書室の床に敷かれた上等なネヴァラ絨毯には血だまりができていた。血だまりのあちらの端には、ブリアラの両親が倒れている。セリーンがブリアラの視界をふさぐようにして立ち、温かい両手でブリアラの両腕をつかむ。暗殺者たちが召使いを皆殺しにしており、もうじきここに戻ってくるだろう、とセリーンが言った。

 

 暗殺の意図がわからないブリアラは、セリーンがレディ・マンティロンと会ってきたのだから、彼女が助けてくれるのではないかと尋ねる。セリーンは涙を浮かべた目で、自分の両親が死んだときと同じ理由なのだと告げる。レディ・マンティロンはセリーンの支援を約束したが、皇帝フロリアンがそれを認めなかったのだろう。

 だが、ブリアラが盗み聞いた暗殺者たちの会話からは、連中はセリーンが今宵外出していること、そして程なく帰宅することを知っていた。その事実を知っているのは、レディ・マンティロンただひとりだ。

 読書室の中はとても暑かった。ギャスパードは、セリーンが「ゲーム」から脱落したと考えており、玉座は自分のものだと思いこんでいる。暗殺者たちが彼の差し金であるはずはないし、万が一そうであっても、連中が帰宅の時刻を知っているはずがない。レディ・マンティロン本人が送り込んだのではない限り。

 セリーンの涙は頬を伝わり落ちた。もしそうなら、ブリアラはここを立ち去らなければならない、とセリーンは言った。連中に見つかれば、ブリアラは殺されるだろう。物心ついてこの方、ここ以外で暮らしたことがないため困惑するブリアラに、セリーンはデーリッシュを訪ねて行けと言う。見つける方法もわからないと途方に暮れるブリアラに、セリーンは自分のために是が非でも生き延びるように命じる。

 セリーンはブリアラを抱きしめ、身体をこわばらせる彼女の唇にキスをした。それから相手を押しやると、彼女の外套と古いマスクを身に着け、彼女のように振る舞いながら馬車に乗り、できるだけ遠くへ逃げるように言った。その先はこれを売ってデールズまでの足代にするようにと言いながら、無造作に自分の髪から外した何かをブリアラの手に押し付ける。それはレディ・マンティロンから貰った宝石飾りのついた髪留めで、あまりに力強く握らされたため、ブリアラの手のひらに切り傷ができた。


 茶屋で待っていたブリアラのところに相手が到着したのは、午後の遅い時刻だった。彼とは毎月一度会って、いつもは情報を交換するだけだったが、今日のところは、サー・ミシェルの足取りを示す何の手がかりも見つからないので、助力を仰ぐつもりだった。

 茶屋に現れた外套姿の男の顔は頭巾で隠れ、その動きは流れるようで無駄がなく、あたかも森の中を進む狩人のようだ。彼は他の客たちの好奇のまなざしを無視しつつ、ブリアラの座っている席に静かに滑るように近づくと、椅子に腰を下ろした。午後の優しい日差しの中で、ブリアラは男の顔を覆う刺青をほんの少しだけ垣間見た。デーリッシュの間では、その刺青はヴァラスリン、「血の筆跡」と呼ばれている。

「フェラッサン」 ブリアラは救われたような声で呼びかけた。
「アネス・アラ、ダーレン」 彼は完璧なエルフ語でそう言うと、にやりと笑った。「麗しきシライーズの名に懸けて、一体全体どうしたんだね?」

***

 レディ・マンティロンは、"Dowager Marquise Mantillon"、マンティロン侯爵未亡人。実はDA2のDLCであるMotAには、その肖像画と人物紹介だけ登場します。先代皇帝フロリアンの愛人、暗殺者、バード、その他諸々。舞台の後ろで政界を操るフィクサー、キング(この場合エンペラーだが)メイカーという感じでしょうか。あるいは「ゲーム」の譬えに倣えば、それこそゲーム・マスター(GM)か。
 オリージャンの警句に曰く、「オーレイの『ゲーム』に参加したいなら、侯爵未亡人と踊らなければならない」

 いつか人物表でも作ってアップしておきたいが、中途半端にやるとネタばれになっちゃうのがつらいところ。

 なお、シライーズ(Sylaise)は、これも読み方暫定ですが、古代エルフの女神、暖炉の神(Hearthkeeper)。アウトドア派の狩りの神、アンドルイル(Andruil the Huntress)と姉妹の関係。シライーズはインドア派で、火を司る他、詩歌、芸術を嗜む。日本でいうところの竈(かまど)の神とはちょっと意味合いが違うようです。 

 第三章はまだ続きます。

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