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2014年4月19日 (土)

The Masked Empire 3(2)

 DiabloIIIを遊ぶ時間を削ってまでがしがし翻訳して、あたしゃいったい何をやっているんだろう。
 そう思って、Asunderの紹介記事を読み返していたら、やっぱ、やっといてよかったあ、と思った。老後の愉しみのためやっていることを忘れていた。

***

 午後の狩猟旅行の時間になってもチャンピオンが現れないため、セリーンはたいそう機嫌を損ねた。昨晩の勝利の流れを維持してギャスパードの動きを封じ、ディヴァイン・ジャスティニアがメイジ・テンプラー抗争に対する直接的行動を起こすまで時間を稼ぐのが重要だった。狩りの旅は旗幟鮮明にしていない貴族たちを見極め、正しく導き、ギャスパードに与する者たちには然るべき制裁があることを示す格好の機会だ。 

 常に時間厳守で責任感の塊であったサー・ミシェルが何の伝言も残していないことから、不在が意図的なものでないことは確かだ。
 セリーンは、彼の捜索にブリアラを派遣した。狩りの中止は弱さを示すことになるため、彼女は自分の白い牝馬を呼び、乗馬用スカートを正し、戦場へ繰り出した。

 貴族の男女たちは一ダースほどの人数で、彼らの従者たち、チャンピオン不在でもセリーンを守るに足りるだけの衛兵たち、それから貴族たちが自らするつもりのない細々したことを世話する狩人たちが付き従った。木々は丁寧に剪定されており、狩りの楽しみを奪うことなく、不慣れな乗り手でも怪我しないように配慮されている。

 セリーンの回りは、従者たちが手下に指図する怒鳴り声、貴族たちのおしゃべりや笑い声、猟犬たちの吠える声で騒々しかった。貴族たちは外套やレザーを身に着け、マスクの装飾とあわせた金銀やリボンで飾り立てている。後を追う従者たちは、狩りよりも飲み食いが好きな貴族のため、水で薄めた葡萄酒の入ったゴブレットや、肉、チーズ、酒づけの果物の串刺しをいつでも渡せるように用意していた。 

 馬上のセリーンは冷たく上品な微笑みを保っていたが、ミシェル捜索の指図に忙殺されて出がけに茶を嗜むのを忘れたため、その神経は昂りかつ曇っていた。
 普段サー・ミシェルが並び掛けている場所は、ギャスパードが占めている。

 モンツィマード侯爵から、弓を携えていないことを指摘されたギャスパードは、貴族たちが血を見て怖気づくことがないようにそうしたとうそぶく。セリーンは顔もむけずに、では従兄殿は何を飲むつもりか、と言い放つ。

 弓なくして獲物は手に入らない、そう言った馬上のチャントラル卿は、赤ら顔で不器用な動きをしていた。
 入り用になったら羽根飾りでも使うか、とギャスパードが笑いながら言うと、貴族たちは静まりかえった。

 得手でもないだろうに、昨晩は容易に奪われたわけだし、とセリーンが言うと貴族たちは笑ったが、味方としての盛大な笑いではなかった。昨晩の出来事で勝利を得たとの考えは間違いだったのか。 

 獲物を見つけた猟犬たちが猛追をはじめた。セリーンは衛兵たちに号令をかけ、森の中に馬を走らせる。いつもの狩りの時にはゆったりと構えている女帝とは別人のような態度は、貴族たちを驚かせた。ギャスパードとのやりとりで怖気を奮った女帝は、次のやり取りまでの間に気持ちを持ち直さなければいけなかった。

 他の乗り手たちの馬を振り切ったと思ったが、一頭の重い蹄の音が追い付いてきていることに気付くと、彼女は逃げていると思われることを恐れ、馬の進みを早足まで落とした。ほどなくギャスパードが並び掛けてきた。よく手入れされた径(こみち)にくつわを並べて進むしばしの間、他の貴族に声は届かない。

「弓はどのみち無駄になったであろう」
「さほどにお粗末な狩り手?」 セリーンが尋ねた。
 ギャスパードは、くっくっと笑った。「いや。だがこの森はあまりに手ぬるい。むしろ庭園と呼ぶべきだ。わしはライデスの狩りの方を好む」
「では、この冬リマッチェ公爵から招かれないのは残念なこと」 
「実を言えば、昨晩リマッチェから招待を受けた、舞踏会のあとでな」 ギャスパードがそう言って、語気を強めた。「あそこの森は危険なほど育ってきたので、名誉ある男の同行を歓迎するとのことだ」
「ああ、おやめなさい」 セリーンは苛立ちまぎれに言った。「周りには他に誰もいないのですから」 

 ギャスパードは彼女の傍らでしばし沈黙した。それから大声で笑い出し、「メイカーズ・ブレス、セリーン!」 彼は自分の膝を打った。「いつも勇気を失わない、それは認めよう。男だったら、軍を指揮することもできただろうに」

 「だからわたくしに対してよからぬ企てをするのですか、ギャスパード?」 彼女は尋ね、相手の顔をつぶさに見た。「わたくしが男ではないから?」 
 彼は実際に考え込んだようだった。「いや」 彼はついに言った。「本当の問題は、お前がわしではないことだ」
「あなたのような人はまずおりません、ギャスパード」 セリーンは首を振った。彼は、少なくとも愚劣さにかけては正直だった。

 空地に出ると、セリーンは馬を止めた。「モンツィマードと、今やチャントラルを味方につけ、リマッチェとも通じていると」
「彼らだけではない」 ギャスパードは肩をすくめた。「羽根飾りの一件は度を越しておったようだ」
「玉座を奪うためにオーレイを脅かすつもりですか? この折も折?
「是が非でも」

 セリーンは怒りの身振りをした。「あなたこそ、冬の前にメイジとテンプラーの間で戦争が起きかねないことをわかっているのではないのですか、わたくしたちが食い止めない限り!」
「連中は間違いなく戦うだろう、そして輝けるお方にはそれに対してなす術は何もないとしか思えん」
「そしてわたしにも思えません、大公殿、フェラルデンに侵攻することが助けになるなどとは」 彼女は彼を睨んだ。「バン・ティーガンを殺していたら、わたくしたちの兵士たちは、あなたの愚劣さのせいで、春になる前に死んでしまっていたでしょう」
「良き戦は国をまとめ上げる。チャントリーとサークルのバカどもには、国境の中の者ではなく、外の連中を殺させるほうがいいのかもしれん」 ギャスパードは手を挙げ、セリーンが驚いたことに自分のマスクを脱いだ。 

 彼の素顔を最後に見たのは何年も前だった。顔つきは依然鷹のように鋭く、いかつく、野外で過ごすことが多いため、日ごろマスクで隠れている部分の縁には日焼けの跡がついていた。

 その行為は、事実上決闘の申し出を意味する。
 しばしの後、セリーンも自分自身のマスクを脱いだ。彼は笑顔のまま、小さく頷いた。

「お前は正しい、確かに」 彼は言った。「わしらには、強い帝国が今どうしても必要なのだ。戦が迫っておるというのに、ゲームにうつつを抜かしている場合ではない」

「ゲームにうつつを抜かしているのはあなた自身で、わたくしたちとフェラルデンとの関係を危うくさせ、周りではチャントリーが崩れかけているのに、わたくしが無為に過ごしていると決めつけているのです」
 ギャスパードは眉を吊り上げた。「ジャスティニアに権力を渡しているだろう」
 

「わたくしはチャントリーに、自力で立ち直る最後の機会を与えているのです、わたくしがオーレイを民の血の海に浸した狂える皇帝として、歴史に名が刻まれるような行動を起こさねばならなくなる前に」 

 彼は首を振った。「お前はいつも、歴史にどう残るかばかり気にかけ過ぎる、セリーン」 それから彼は身体を近付けてきた。「わしと結婚せい」

 彼女は度肝を抜かれ、それが顔に出たこともわかった。彼女は、マスクを脱ぐように脅した彼のことを呪った。「随分とずうずうしい、従兄殿」

「お前は筋金入りだ、セリーン」 彼の声には嘲りも、諧謔もなかった。「それには感心する」
「あなたの妻がわたくしの母を殺した」
「それゆえに、お前の父が彼女を殺した」 ギャスパードは、特段熱を帯びることなく言った。「それから自分も死んだ、おそらくキャリエーヌがいつも懐に忍ばせていた小剣に塗ってあった毒のために。そしてそれらは『ゲーム』であり、お前の側とわしの側双方が真摯に取り組んだ結果だ。オーレイを救う代わりに、わしらの血塗られた過去に拘泥するつもりなら、わしはお前を買いかぶりすぎていたわけだ」 彼は息を吐き、かすかな微笑みとともに彼女を見た。

「お前の両親が死んだとき、わしはお前が『ゲーム』から脱落したと思っていた。バスティエン公爵もそう思っていた。ジャーメイン公爵もそう思っていた。わしら皆が間違っていた」 彼は森のほうを身振りで示し、両手を振ってオーレイ全体を表した。「お前は大学や、条約や、舞踏会や晩餐会を気にかけている。わしは違う」 彼は再び、捕食者の笑いで微笑えんだ。「だが、わしはどれだけの血を流そうともオーレイの安全を守ることができる。ふたり合わせれば、この帝国を救うことができる」

 ふたりが遠縁にあたる事実は取るに足らないことであり、実際、その結婚はオーレイをひとつにまとめ上げることができるはずだ。セリーンはしばしそのことを実際に考え、マスクを脱いだまま大きな軍馬の鞍に、得意げな、いかつい顔をして跨るギャスパードを見つめていた。

 だが、最後に彼女は首を振った。「帝国を守るために、わたくしにはあなたの知恵と力が必要です、ギャスパード。夫は必要としていません」
 彼は首を振った。「尋ねるだけはした」 彼は肩をすくめた。 

 そして彼は、その体格から見てあり得ないほどの素早さで馬を寄せ、彼女に身体を近付けた。彼の片手が彼女の肩を掴んだ。
「お前の衛兵たちに声は届かず、お前のチャンピオンは具合が悪いようだ、セリーン」 彼はしかめつらで言った。「わしはお前の母の死には関係ない。実際、その話丸ごとにむかつきを覚える。だが、狩りの上での事故を装うやり方は知っている」

 セリーンの片手が彼の手首を握ると、彼は痛みで悲鳴をあげ、後ろによろめいた。彼の腕から煙があがっており、上質な服が焼け焦げていた。彼は傷を負った腕を別の腕で胸に押し付けた。

 「わたくしは十六のときに玉座に就いたのです、ギャスパード、あなたの妻が私の母を殺したあとに」 彼女はそう言うと片手をあげ、パチパチと炎をあげている輝くルビーの指輪を彼に示した。「そして、いいえ、わたくしには家族の血塗られた過去の話をするつもりはありません。それについてはよく承知しています、お生憎様」 彼女が素早く指を引くと、腕に隠した鞘からナイフが滑り出てきた。彼女が持ち上げるとそれも炎に包まれた。「そしてこの二十年間、わたくしは舞踏会と晩餐会でオーレイを支配してきたわけでもありません」

 彼は剣に手をかけ、しばしの間、ふたりは身動きしなかった。

 彼が動き、セリーンが激しく襲い掛かり、彼が鞘から剣を抜き去る前腕のあたりに炎の軌跡を描いた。彼女は馬を離して間合いを取ると、姿勢を低く保った。剣の長さでは彼に分があったが、彼の利き腕に彼女が十分な傷を負わせることができれば・・・。

 そのとき、遠くから猟犬たちの吠える声が再び聞こえた。ギャスパードはその方角を一瞥し、ため息をつき、首を軽く下げて会釈した。 「これだけは覚えておけ、従妹よ。これから何が起きようとも、婚儀の誓いで避けることができたことを」 彼は剣を鞘に収めた。

 彼女は、そのとき騒ぎ立てることもできたことに気づいていた。ギャスパード側の貴族たちの何人かは鉄の忠誠を誓っていたが、何人かは女帝相手に剣を抜く考えに青ざめるだろう。彼女は自分の衛兵たちが到着するや否や、従兄に手枷をかませることができただろう。
 だがそうすれば、オーレイは日没前に内戦に突入する。

 彼はマスクを被り直し、火傷した腕をまだ胸に押さえつけたまま、馬を空地から走り去らせていった。
 セリーンは首を振り、ナイフを鞘に戻した。
「具合が悪い」 彼女はつぶやいた。「サー・ミシェルを見つけないと」

***

 ここも、ギャスパードとのやり取りはベタ訳のほうがいいでしょうね。ギャスパードが「愚劣さにかけては正直」というのは、すごいな。"(H)e was honest in his folly."、「愚劣さを隠し立てしない」というか、それすら気づいていないので「愚劣さに嘘偽りがない」ということですかね? むき出しの愚劣さ。

 セリーンがギャスパードを"cousin"と呼ぶときは「従兄(いとこ)」、逆の場合は「従妹(いとこ)」としていますが、(原語ではいつものように)長幼の関係は実際わからない。でも、ギャスパードの亡き妻がセリーン幼少のころにその母を殺したというのだから、だいぶ年上という推測で間違っていないでしょう。

  ただし、日本語の従兄妹(いとこ)を「遠縁」(distantly related)と言うのには違和感がある。あちらの"cousin"は少なくともひとりの先祖を共有する関係であり(もちろん父母、祖父母、兄弟姉妹、叔父叔母など近すぎる関係を除く)、はとこ(またいとこ)なども含む、ずっと広い意味なんですね。日本でいう従兄妹は"first cousin"。

 あちらでは貴族同志は国内でも国をまたいでも"cousin"と呼ぶ習わしだったそうですが、遡れば共通の先祖がいることが多かったからでしょうか(もちろん最後まで遡ればごく限られた先祖たちに行き着くはずなんでしょうけど)。

 ご承知のとおり、リアル西欧のかつての貴族社会では、教会法に反していたはずの「いとこ婚」は禁止されていたわけではない。それどころか、頻繁に繰り返されていた。 

 そう言えば、NASAがはくちょう座の方向、500光年かなたに、地球によく似た(地表に水がありそうな)惑星を発見したとのニュースで、これも日本語では地球の「いとこ」と書いていますが、NYTimesによれば、科学者の発言は“Perhaps it’s more of an Earth cousin than an Earth twin(.)”
 この場合は、twin (双子の兄弟姉妹)と比べているから、first cousin(日本語のいとこ)のことでしょうね。

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コメント

サー・ミシェルが手紙を受け取ってスラムへ出かけたところから、狩場で女帝の身に何か起こるとは思っていましたが、なるほどこういうことだったんですか。

DAOのロゲイン、Asunderのロード・シーカーと、物語が示す危機からずれた視点を持った者が障害になってましたが、ここではギャスパードなんでしょうかね。
愛される敵役になってくれるのか楽しみ。

外国作家の訳本とか読んでいて、よくある「従兄妹」の表現に関してちょっとひっかかるものを感じたことがあったので、今回スッキリしました。

Vaniさんの翻訳の苦労は報われてると思いますよ~。
読み手は、早くDAIを遊んでみたいと胸がザワザワしてるはず。
ああ、あと半年…。

関係ないですが、Witcher3の発売予定が2015年5月になってました。
延びたのかな?
Bioへのリスペクトがあるから、DAIからの影響も当然受けるんだろうなぁ。
Vaniさんがよくゲラルドを木枯らし紋次郎になぞってたけど、去年のトレイラーを見たらそのまんまだったので笑ってしまった。
女性を襲うならず者を横目に「あっしには~」で通り過ぎようとするんですが、結局助けちゃう。

くっ、間違えてしまった。
Witcher3の発売は、2015年2月予定でした、ごめんなさい。

 ギャスパードは、ウォーモンガー、戦争屋ですね。主人公に分別ないから冒険活劇が成立するように、状況判断を見失うウォーモンガーがいなければ戦争物語もはじまりません。

 ゲラルトはどう見ても渡世人ですもんね。実はThe Witcher一作目の、火炙りにされそうなウィッチを村人の手から救うかどうかって話、オーソドックスだけど好きだったんですよ。本当に魔女狩りした国の人たちだから描き方半端ないしね。
 The Witcher 3、トリスは出るのかな?(そればっかり)

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