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2014年4月 6日 (日)

The Masked Empire, Chapter 1 (全訳1-2)

 建物の中の空気はひんやりとしているが、秋風の肌寒さはなく、外に居たよりは快適であった。ステンドグラスの窓から振り注ぐ深紅の光は、チャントリー内をその磨き油の匂いで満たす木製の座席を照らしていた。講堂の別のほうの端には、永劫の焔が大きな黄金の火鉢の中で明るく燃えており、窓から差し込む光以外唯一の灯りであった。

 チャントリーには、平シスターのローブを身に着けた赤毛の女性ひとりだけがおり、セリーンが近づくと立ち上がった。「皇帝陛下」と彼女はつぶやき、深々とお辞儀をした。
 エルフの件に関するモラク総長との肩慣らしは、この朝の真の試練の穏やかな前触れであった。セリーンは女性に直るように合図した。「ディヴァインが会見をお望みなのは喜ばしいことです」

 赤毛の女性は微笑んだ。チャントリーに仕える者がしばしばそうであるように、彼女はマスクを身に着けておらず、言葉は生粋のオリージャンのアクセントである一方で、その容貌はフェラルダンのものだった。マスクは、オーレイの王朝が生まれては消えて行った非情で終わりのない戦い、その「ゲーム」の一部であり、チャントリーがマスクの着用を忌避する理由は、自分たちは政治の世界の埒外にあるとの意思表明だ。オリージャンの貴族でそんなことを鵜呑みにする者はほとんどいなかった。「今取り組むべき問題は、陛下の密使が述べられましたとおりに大変深刻なものであり、ディヴァインはその解決をお望みです。この件について、私が彼女の代弁者となります。ナイチンゲールとお呼びいただければ幸いに存じます」

 そのマスクの下で、セリーンは眉を吊り上げた。オーレイの女帝が相手から偽名で呼ぶように求められることは滅多にない。とはいえ、ジャスティニアが送り込んでくるのだから彼女が全幅の信頼を置いている者であろう。

 礼儀作法を抜きにして、セリーンがベンチのひとつに腰掛けると、彼女のクリーム色のサテンのガウンが不恰好に膨らみ、紫水晶が木に擦れてカチャカチャ音をたてた。「あなたは、ナイチンゲール、テンプラーとメイジの間の緊張関係について詳しくご存じですね?」ナイチンゲールが躊躇すると、セリーンは彼女にも腰を下ろすように手を振った。
「もちろんです、輝けるお方」ナイチンゲールは、何気ない優雅さを示しながら、彼女の簡素なローブが皺にもならず、膨らみもしないように腰を下ろした。そのさりげない一連の動きは訓練を受けたバードの証であり、セリーンはその観察を後で用いるために銘記しておいた。

「カークウォールの一件以来、テンプラーは以前にも増して焦燥しています」、セリーンはそう言うと、火炙りの薪の上に立つアンドラステを描いたステンドグラスの明るい紅い光を見つめた。何年にも渡る訓練により、横にいる女性の動きを視界の端でもはっきりと捉えることができる。「その点はメイジもまた同様です。ドロシアはどうするおつもりかしら?」

 彼女は敢えてディヴァイン・ジャスティニアの本名を呼んで、そして視線の端でナイチンゲールがそれに反応するのを見た。相手の女性の両眼がほんの少しだけ狭まったが、その姿勢は全く変わらなかった。怒りを感じたようだが、無礼な素振りは見せなかった。ナイチンゲールはディヴァインを本名で呼ぶのかもしれないし、彼女がその地位に就く前から深い知り合いだったのかもしれない。

 鼓動一回分の間を開けて、ナイチンゲールが言った。「ディヴァインは、カークウォールで起きた一件について、信仰に熱心過ぎたテンプラーたちの手によって、ひとりの気の狂ったメイジが痛ましい行動に追いやられたものであるのに過ぎない、という見方を取るお考えはございません。ご承知のとおり、マーチャーのいくつかの都市国家のメイジたちは、オーレイよりも厳しい監督下に置かれています」

「承知しています」とセリーンが言った、「そしてまた、あなたがまだ、わたくしの質問に答えていないことも承知しています。ドロシアがテンプラーとメイジの仲を取り持つために何の
算段も講じないのであれば、彼女はグランド・クレリック・エルシナ、カークウォールが引き裂かれる間もただ待って祈っていた彼女と同じ轍を踏むことになるのでしょう」
 相手の女性は、ディヴァインの本名に再び反応した。「ジャスティニアは、この世界がより良くなることを望んでいます、輝けるお方。気まぐれに行動を起こしても得るものはございません」
「欲しいだけの時間が手に入らない場合もあるのですよ、とりわけ魔法が関与しているとなると」セリーンがナイチンゲールのほうを見ると、彼女は、簡素なローブに身を包み、真っ当な淑女の物腰で寛ぎ、落ち着いて、そして思案していた。「先のブライトでは、ひとりのシニア・メイジがアボミネーションに化したことによって、フェラルデンのサークル・タワーが壊滅寸前となるところでした。フェラルデンの英雄はその化け物を殺した後に、タワー内に生き残ったメイジたちを皆殺しにすべきかどうか、その場で決断を迫られました」

 彼女の棘は急所を突いたらしく、ナイチンゲールは瞬きし、熱を帯びた口調でこう言った。「今は戦場にいるわけではありません、輝けるお方」
「わたくしたちは常に戦場にあるのです」とセリーンが言った。「いつも、それに気がついていない者がいるだけなのです。マージョレインという名のバードが、かつてわたくしにそう告げました。彼女はフェラルデンで残念な最期を迎えたと聞きましたが」彼女は溜息をついた。「悲しいことですね、ナイチンゲール?」

 ナイチンゲールはしばしためらい、セリーンのほうを用心深い関心とともに見た。「おそらく」と、ようやく彼女は言った。「ものの見方によるのでしょう。それから、私のことはレリアナとお呼びいただいたほうがよろしいかもしれません」
「そうかもしれません」セリーンはそう言うと微笑み、それから声を潜めてこう続けた。「ディヴァイン・ジャスティニアには知っておいてもらわなければなりません。この件について、玉座から直接的な行動をとるように、私邸の広間でわたくしに懇願する貴族たちがいるのです」レリアナの驚いた顔に、彼女は頷いた。「わたくしたちが、治安維持の名のもとに自らの民に刃を向けることになると考える、気の早いオーレイの者たちがいるのです。唾棄すべきことですが。ドロシアもその気持ちはおわかりのはずです。ただし、わたくしは連中に何らかの代替策を示さなければならないのです」

 レリアナは立ち上がり、思案気に眉をひそめた。「陛下はディヴァインに、事態を打開するための何らかの目立った動きを示すよう、お望みなのですね」セリーンは息を吐いた。「実のところ、それがどのような目立った動きであっても、わたくしがチャントリーに、この帝国をわたくしのために支配する行動の自由を与えたという批判を集めることになるでしょう」と彼女が言うと、レリアナは無言でうなずいた。「しかし、わたくしが帝国自身に刃を向けるように強いられる前に、ジャスティニアがいざこざを納めることができるのであれば、そのくらいの対価を支払うのはわたくしの望むところです」

 レリアナは微笑んだ。「私が想像していた以上に、ご自身のことよりもオーレイのことをよりお気にかけていらっしゃるのですね、輝けるお方。支配者として恵まれた資質をお持ちのようです、今まであまり目にかかったことのない種類の」
 セリーンもまた立ち上がると、一瞬の間、彼女のガウンがステンドグラスの深紅の光の色に染まった。「教えていただけないかしら。アーチディーモンはどのくらい大きかったのでしょう?」

 レリアナは、貴族の女性か訓練を受けたバードの、繊細で上品な笑い声をたてた。そのため、彼女のシスターのローブがお粗末な変装衣裳のように見えた。「とても大きいです、輝けるお方、あれを見たあとでは、ほとんどの問題が取るに足らないものに見えてしまうくらい」彼女の顔が真剣なものに戻り、こう付け加えた。「ジャスティニアには、直接的な行動を取るよう求めてみます。自分自身のために権力を簒奪しようとしているといった糾弾から彼女が身を守るためには、陛下の支援が必要となるでしょう」
「もちろん。彼女をお招きして開催する、宮廷舞踏会で声明を出すようにしたらいかがかしら?」

 レリアナはそれについて思案した。「彼女がそのような表明をする場としてあまりふさわしくはないのですが・・・」
「だからこそ、あなたは気に入っているのでしょう」とセリーンが言って、微笑んだ。「加えて、わたくしに行動を取るよう懇願している多くの貴族が、いやでも彼女の言葉を聞き、事態への対処がなされていることを知ることになるのです」
 レリアナはにこやかに笑った。「バードの訓練をお受けになっていたのですものね、輝けるお方。うっかり失念してしまうのですが。お申し出はディヴァインにお伝えします」
「三週間」とセリーンは言った。「長くても、ひと月。それ以上かかれば、わたくしも行動を起こさざるを得なくなってしまいます。貴族たちは冬の別荘に引きこもる前に、解決の糸口を手にするよう求めているのですから」
 レリアナはお辞儀した。「皇帝陛下」

 ディヴァインの密偵は隠し扉から退出し、セリーンはベンチに腰掛け直した。学習したおかげで、今回は物音を立てたり膨らみや皺を作らずに座ることができた。
 あと三週間、他の貴族たちを煽動して戦争をはじめようともくろむ大公ギャスパード相手に、歯ぎしりしたまま立ち向かわなければならない。あと三週間、世の中のあり方を考えようともしない、やくざまがいのテンプラーとメイジの間の思想的な抗争を無視し続けなければならない。

 そうした彼女の忍耐に対する報いは、彼女がチャントリーの権力をさらに強めていると非難するギャスパードの喚き声で、権力はまるで剣のように一度にたった一人の手中にしか収まらないとでも考えているようだが、それは事実ではない。権力はパートナーたちの間を渡り歩く舞踏であり、導くとき、従うときを知ることであり、そして宿敵のガウンの裾をあっさり踏みつけ、相手を床に転がして笑い者にする時機を見計らうことである。
 迂闊な者の手に渡ったら、そうした権力はセダス最大の帝国ですら崩壊に導く。セリーンは、オーレイのすべての文化と歴史を守護しなければならなかった。
 このようなときだからこそ、強情な教授を自分の意志に従わせるような、単純な気晴らしを彼女は楽しんだのだ。「三週間」とセリーンは言うと、しばらくの間、ステンドグラスを透して踊る炎色の光を眺めて過ごすことを自分に許した。

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