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2013年11月17日 (日)

【DAI】Dragon Age Asunder (22‐3)

 夜になって雪は強さを増していたが、リースは気にもかけなかった。

 彼は廃墟の中庭の暗い一角に腰を下ろし、ようやくひとりきりになって考えを巡らしていた。彼は自分の投票が騒乱を巻き起こすと思っていたが、沈黙に迎えられただけであった。サークル・オヴ・メジャイの廃止が決定された今となっては、残された問いはたったひとつだ。これからどうするか? それはまだ直面することのできない問いであったので、彼はその場を後にした。他のメイジたちも同じようにしていたのは、皆避けられない運命を潔く受け入れる心の準備が必要だったからだ。

 雪と風の中からエヴァンジェリンが現れた。他の誰であっても彼の慰めのときを邪魔する相手とみなしただろうが、彼女だけは別であった。
 「終わったわね」と言って近づいてくる彼女の面持ちは真剣だった。
 「ああ」 

 彼女は彼が立ち上がれるように手を差し出し、彼はそれを取った。「何を考えていたの?」と彼女は言った。
 「母のことさ」
 悲しげに頷いた彼女に、それ以上の言葉は必要なかった。「私があの暗闇の別のほうの側に立っていると、ウィンが金色の光を送ってそこから連れ戻してくれた。それは・・・、綺麗だった」

 エヴァンジェリンはあの夜のことを、今まで一度も話してはいなかった。リースは今でも彼女が生きていることに驚いていた。あのときまで魔法が生と死の狭間を乗り越えることはできなかった。それは不可能だと考えられていたのだが、エヴァンジェリンはこうして生き返った。スピリットでもなく、以前知っていた者の模造としてでもなく。奇跡だ。

 「それは・・・、君の中にいるのかい?」彼が不安げに尋ねた。
 「スピリットが? わからない。何も違いを感じないから」
 「その前に何が起きたかは覚えているかい?」
 エヴァンジェリンはしばらく何も言わなかった。「コールは覚えている。それから彼の正体を知ったときのあなたの瞳に浮かんだものを覚えている」リースが頷いて、恥辱のあまり頬を染めると、彼女は元気づけるように彼の肩に手を置いた。「自分を責めるべきじゃないわ」

 「そうかい? 彼は僕を騙していた。選りによってこの僕こそ、それに気が付くべきだったんだ」
 「私もフェイドにいた。あれは嘘じゃなかったわ、リース」
 彼は首を振った。「でも嘘なんだ。コールという名の少年はいなかった。あれも決して起きなかったことなんだ。きっとすべてが・・・」
 「ついさっき集まったメイジに思い込みを捨てるときだと言ったのは誰でしたっけ?」リースが口を閉じると、エヴァンジェリンは悲しげに笑った。「コールが誰か私にはわからない。彼はさまよう魂で、あなたは彼を何とか救おうとした。それだけでいいじゃない」
 「あのメイジたちもきっと僕が殺したんだ」
 「そうね。だからといってあなたは何も変わらない」
 しばらく静寂が訪れた。「またコールと会えると思うかい」とうとう彼が尋ねた。
 「わからない。会えるとは思えない」

 リースも同意の頷きを返した。「それで・・・、どうするつもりだい?」彼は静かに尋ねた。「サークルはなくなってしまった。フィオナが言ったようにテンプラーがやって来て戦争になるだろう。彼らと戦うつもりかい?」
 彼を見た彼女の顔から笑いが消え、至極真剣な顔つきになった。「あなたの傍らで戦うのなら、もう一度死んだって構わない」

 「それじゃあ、ふたりで一緒に未来に向き合おう」エヴァンジェリンは頷くと彼を強く抱きしめ、彼も喜んでそうされるままにしていた。この先何が待っているかなど大したことではないことにリースは気がついた。彼女と一緒なら・・・、だが彼女の瞳を見詰めているとその考えも途中で消えた。彼女を危うく永遠に喪うところだったのだ。二人の周りに雪が静かに降り続けているこの廃墟の中庭で、ふたりはキスをした。それは自然で真っ当なことに感じられた。

 ふたりが身体を離すと、彼女は笑って彼の手を取った。「一緒に来て」

 彼らはアンドラルズ・リーチからさほど遠くない場所までやってきた。巨大なオークの樹が一本だけ野原に立っており、とてつもなく古いごつごつとこぶだらけで灰色のそれが今でも立っていること自体信じられなかったが、また同時にそれは目にする者の息を奪うほど威厳に満ちていた。その樹はずっと長い間歴史を見続けてきている。ダークスポーンが跋扈していたブライトの時代も潜り抜けたが、汚染を浴びることもなかった。アンドラステの軍勢が強固な要塞を撃ち破るのも見ていたのかもしれないし、何千人もの兵士たちが斃れた戦いも目撃していたのだろうが、その樹は倒れることなくまだ立っていた。 

 ウィンの遺灰はその樹の根元に埋められていた。それはレリアナの示唆によるものだった。ウィンは墓碑も、大理石の墓石も、ファンファーレも欲しないだろうと彼女は言っていた。永遠の眠りに就けることができるだけの場所、彼女を知る者たちが訪れ、彼女を偲ぶことができる場所。彼女は、自分の信念に従って戦った女性、ダークスポーンと混沌に立ち向かった女性。この世界をより良いものにしてから去るため、与えられた命を捧げた女性。 

 そこにはレリアナも、シェイルも来ていた。ファースト・エンチャンター・アーヴィングもいた。他の者たちも集まって、亡き友を惜しんでこうべを垂れ、別離を心に刻んでいた。ゴーレムですらいつもの皮肉を封印しており、その眼窩の輝きも暗く灰色であった。

 リースとエヴァンジェリンは遠くから見つめていた。彼は母のことを、彼女の最後の微笑みを思い出そうとした。彼女が息子である自分と引き裂かれることなく過ごした場合の、自分の人生について、彼女自身の異なる人生について考えると心が痛んだ。それぞれにとってそちらのほうが良かったのかもしれない。 

 レリアナが歌いはじめた。エルフの言葉であったが、それでもリースには意味がわかった。それは歓喜と喪失についての、全てのものには終わりがあることについての歌だった。 

 それはまた、彼が今まで耳にした中でも最も心をとらえて離さない美しい調べだった。

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