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2013年11月16日 (土)

【DAI】Dragon Age Asunder (22‐2)

 今回の集会は前回とまるで違っていた。大理石とステンドグラスに囲まれた巨大な広間ではなく、メイジたちが集っているのは廃墟の一室で、そこはかつては兵舎に用いられていたのかもしれないが、今はもう何ものでもなかった。壁の半分は崩れ落ちた石材と化していて、天井のそこここもずっと昔に抜け落ちていた。雑草が床を貫いて生えており、表面に隙間があるところは全て苔むしていた。多少雨風が凌げるとはいえ、メイジたちは野外に集まっていたと言ってもいいくらいだった。

 ここに参集しているのも一ダースを少し超えるだけの数のファースト・エンチャンターだけではなかった。部屋には何百人ものメイジがひしめいていたので、天井が残っているところに皆が立てるはずもなかった。彼らの頭上からは雪が舞い落ち、ゆっくりと床に積もり始めていた。メイジたちは文字通り肩を寄せ合って立っており、部屋の中央に倒壊した石柱の周囲だけが辛うじて演台と呼べそうなくらい開いているだけであった。

 しかも、ここにいるテンプラーはひとりきりだけだ。リースが入って来た姿を見つけたエヴァンジェリンはほっとして微笑んでいた。彼も笑い返し、エイドリアンとの間の出来事を頭から脇に追いやった。エヴァンジェリンが近づいてくるに連れ、多くの者たちの視線がリースに集まって来た。室内の会話が少なくなり、やがて完全になくなった。誰もが集会が間もなく始まることに気が付いていた。

 グランド・エンチャンター・フィオナが倒壊した石柱に近づいた。注意深くその上に登ったエルフが一同のほうに厳粛な顔を向けると、彼女がその立場に適任かどうか疑いを差しはさむ者は誰もいなかった。彼女は不撓不屈に見えた。大胆不敵であった。彼女がかつてグレイ・ウォーデンであったことも容易に信じることができる。彼女がメイジたちを自由に導くのか、それともチャントリーの庇護のもとに皆を連れ戻すのか、それも今からわかる。

 「選択肢はふたつ」と彼女が告げた。彼女の声はよく通り、室内には囁き声も聴かれなかった。「ここにお集まりの誰しもがそれをご存じでしょう。私たちは服従するのか、戦うのか」

 彼女の目が、反論があるかと問いかけるように皆の顔を眺めまわす。誰ひとり異存はなかった。「服従するのなら」彼女は続けた。「私たちはまとまってそうします。たとえリバタリアンズであっても。チャントリーに帰還して彼らの慈悲を請うでしょう。その事実を知る者は多くはないでしょうが、私たちがホワイト・スパイアを脱出するにあたり、ディヴァインそのお方からお力添えをいただきました。彼女は友人です。トランクィリティや処刑からも何人かお救いいただけることになるでしょうが、皆が救われるわけではありません」

 誰一人口を開かなかった。「戦うのなら、私たちは一人残らずそうします。私たちはサークルの廃止を宣言し、それによってテンプラーやチャントリーが私たちを支配しようとするいかなる試みも拒否します。それは戦争を意味します。ディヴァインがたとえそう欲したとしても、テンプラーを掣肘することはできません。私たちも多くの者が戦いの果て斃れるでしょうが、皆が斃れるわけではありません」

 依然誰も口を開かなかった。天井の隙間から降る雪は強さを増していたが、そのことにも誰も気が付かなかった。リースの背中が寒さで凍みた。「議論のときは過ぎました」とグランド・エンチャンターが言った。「今は行動するときであり、さもなくばテンプラーがやってきて全ての選択肢を私たちから奪い去ってしまうでしょう。サークル・オヴ・メジャイのグランド・エンチャンターとして、私は今ここに、私たちの独立に関する投票の開始を宣言します」 

 さざ波のような囁き声が室内を覆ったが、それもすぐにやんだ。「すべてのファースト・エンチャンターがここに集っているわけではありません。ディアズミッド(Dairsmuid)のサークルではライト・オヴ・アナルメントが発動されたと聞いています。タワーの全てのメイジが殺害され、ファースト・エンチャンター・リヴェラもその例外ではありませんでした」彼女は再び言葉を句切り、聴衆の間に驚きが染み渡るのを待った。「消息の知れない者も多くおります。ここに集うメイジたちが代わりに各フラタニティの代表者を選出しました。リーダーの方々は意見を述べ、投票を行ってください」 

 最初に投票を行ったのは腰のまがった老人で、ローヤリスツの代表者として任命されたファースト・エンチャンターに就任して間もない男だった。彼は震える声で短い演説を行い、メイジは服従すべきであると意見を述べた。テンプラーとの戦いに勝つ望みはないと彼は言った。セダスの人々は自由なメイジを決して許容することはなく、アンドラステの時代のように一致団結してメイジたちを撃ち滅ぼすであろう。サークルだけがメイジの唯一の希望である。 

 ローヤリスツの主張としては予想どおりのものだったが、それに追従する者たちの多さは予想外だったのかもしれない。続いて小規模のフラタニティが順に投票を行い、その全てがローヤリスツの主張に従った。抵抗ではなく服従を。支持者の数こそ少ないが、その言葉は室内に陰鬱な雰囲気を醸し出していった。グランド・エンチャンターの瞳に宿る生気がほとんど根こそぎ喪われていった。 

 次にリースの立っているところからさほど遠くない入口からエイドリアンが歩み出た。「リバタリアンズは戦うほうに投票する!」彼女は叫んだ。聴衆が一斉に彼女に注目しようとしてカサカサという音をたてた。「あなたたちは皆、家畜のように横たわって避けられない運命を甘んじて受けるつもりなの? 服従して何かが変わるというなら、もちろんそのとおりよ! 事態はいっそう悪くなる! すべてのサークルが監獄と化す。ここから一マイル以内に近づいたメイジは全てトランクィルにされる。奴らは他の手段を知らないし、私たちが教えなければこれからも何も学ばない!」

 彼女の言葉を受けて以前より大きな呟き声が聴こえてきたが、怒りの声はあがらなかった。彼女の主張を否定する者もほとんどいなかった。頭を下げ、涙を流している者たちの姿から、リースは今問われているのはどちらの選択がより多くの苦痛をもたらすかに尽きるように感じられた。その選択は容易なものではなかった。 

 騒音が止んだ頃、グランド・エンチャンターがリースのほうに目を向けた。エクイタリアンズは最大多数派のフラタニティで、今までも今も力の均衡を保つ役割を担っていた。リバタリアンズに与すれば過半数を握る。ローヤリスツの肩を持てばやはり議論は決着する。エクイタリアンの代表者の選出方法について訝しく思う者もいるだろう。ファースト・エンチャンターでもなければ、つい今朝までこのフラタニティの一員ですらなかった男だ。リース自身が悩んでいた。自分が母親の代役として役者不足のような感じがした。たとえそうであっても、誰も彼の回答を予想することはできない。 

 彼はエヴァンジェリンの手が彼の手を包んで、きつく握っているのを感じた。
 「僕の母については皆ご存じのとおりだ」彼は聴衆に向かって言った。「彼女は死ぬ少し前に僕にあることを教えてくれた。それは、過去に起きたことからの思い込みを捨てなければならないときがやってくるということだ。他者についてもそうだし、自分たち自身についての思い込みも捨てなければならない。僕たちはトランクィリティについても、ディーモンについても、それこそ自分たちメイジの限界についても何もわかっていない。次にやって来るのが何であっても、僕たちはそれを新しい目で見詰めることでしか生き残ることはできない。もしそうしなければ、昔の間違いをまた何度も繰り返すだけになるし、それがもたらすどんな運命も、自分たちで招いたものだと言わざるを得ないのだ」 

 何人かが頷いていたが、誰も言葉を発しなかった。しばらくの間待っていたグランド・エンチャンター・フィオナが、やがて彼を途方に暮れた顔つきで見た。「申し訳ありません、エンチャンター・リース」と彼女は言った。「どちらに投票するのか、はっきりと述べてもらえませんか」

 リースは一度深呼吸をして、最後のサイを投げた。
 「戦うほうに投票する」

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