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2013年11月16日 (土)

【DAI】Dragon Age Asunder (22‐1)

 残っている塔のうち、一番背の高いものの頂上に立って廃墟を見渡していたリースの髪を冷たい風が揺らしていた。
 暗い雲が午後いっぱい降雪を予感させ、空気は冬の嵐の到来を告げていたが、空は持ちこたえていた。天候もまた、彼の気持ちと同様に予断を許さないようだった。

 アンドラルズ・リーチ(Andoral's Reach)はオーレイの周縁部に位置し、大昔にはテヴィンター帝国の強固な要塞であったが、蛮族の軍勢を率いたアンドラステがメイジ支配打倒のため決起した戦いで陥落した。ホワイト・スパイアにおけるもの以来初めてメイジの集会が開催される場所としてさぞうってつけに違いない。

 ひと月前にファースト・エンチャンターたちが到着して以来、メイジたちががぽつぽつと集まってきていた。しばらくの間は一日に一ダース程度のメイジたちが到着し、その後何週間はそのペースが落ちるといった感じだったが、今では百名を超えるメイジたちでごった返しており、その全てがアポステイトだった。この廃墟について皆が何を聴かされ、何を目的に来るのかリースにはわからなかったが、それでも彼らはやって来た。他にどこに向かうべきところがあるというのか? 

 皆が飢えていて、携える荷物もなく、目は不安に満ちていて、それぞれのサークルでの出来事を語り合っていた。テンプラーは厳重な取り締まりをはじめていた。一部の場所のテンプラーは、ホワイト・スパイアでの一件の情報をメイジたちよりも早く入手することができたため先手を打つことができた。だがそれでも何の違いもなかった。どのタワーでも、メイジたちは同じ反応を示した。彼らは戦った。多くが死んだ。生き残った者たちは逃亡した。

 リースは、本当は憂慮すべきなのだろうと思った。数多くのフラクタリが破壊されたのでメイジたちはしばらくのところ守られているが、他のタワーのメイジたちがアンドラルズ・リーチの集会のことを知れば、テンプラーたちの知るところにもなる。そうなれば彼らはフラクタリを必要としない。だがテンプラーがここを目指すのであれば、大軍を引き連れてこなければなるまい。廃墟は朽ち果て、壁は崩れてツタに覆われているが、その基盤はまだ守りに役立つ。百人ものメイジが胸壁に配置されれば、少なくともその十倍もの軍勢を食い止めることができるだろう。 

 来るなら来い、彼は断固として決意した。

 彼はもう何百回目になるかわからないほど地平線を見渡しているが、雪山と黒い空以外には何も見えない。たったひとりのテンプラーの影すらない。オーレイの内戦はさらに激化していると噂されている。ハートランズでは激戦が繰り広げられているという。ヴァル・ロヨーは炎上しているとの話だ。それらのどれかにでも真実が含まれているならテンプラーは手一杯のはずで、帝国周縁部に隠れているアポステイトたちに対処することなどできないだろう。 

 彼はエイドリアンが塔の階段を上ってくる足音を、彼女がこの頂上に姿を現すずっと前から耳にしていた。自分たちが見舞われたあの試練にもまるで堪えていない様子だが、彼女の場合はそれも不思議ではない。エイドリアンは挫けない。彼女は今や黒いローブを身に纏うファースト・エンチャンターだ。高齢だったエドモンドはホワイト・スパイアからの逃避行を生き延びることができず、タワーの生存者たちがエイドリアンを後継者に選出したのはほんの一週間ほど前のことだった。ファースト・エンチャンターと言っても、どこのそれかはリースにも言えなかった。彼女が主導すべきサークルはもはやない。どのファースト・エンチャンターもそれは同じだった。

 だからと言って彼女がその地位への指名を熱烈に受け止めないはずもなく、どれだけ短い間のことになろうと、留まるつもりだろう。近づいてくる彼女は彼に会釈すると、突然吹いてきた風のため顔にまとわりついた赤い巻き毛を手で押さえた。

 「皆が呼んでいるわ、リース」と彼女が言った。「もうすぐ始まるって」
 「わかった」

 彼女はそのまま立ち去ることもできたのだが、彼の傍らに留まった。彼女は彼と一緒に不毛の丘陵を見つめていて、二人の間に長い沈黙が続いた。「サー・エヴァンジェリンから、あなたがリバタリアンズ・フラタニティを抜けたと聞いたわ」と彼女はあっさりと、まるで何事でもないかのようにそう言った。リースは騙されなかった。エイドリアンが耐え難いほど侮辱されたと感じているときは、いつでも手に取るようにわかる。「彼女によれば、あなたエクイタリアンズに入るんですってね」 

 もちろん、それが彼女がここにやって来た狙いだったのだ。「もうそうしたよ」と彼は答えた。「今朝ファースト・エンチャンター・アーヴィングから、母の後を継いで集会の代表者になるように求められた。それを受けたよ」
「あなたが、彼らの代表者ですって?」
「どうやら僕の判断を信用してくれているみたいだ」
 彼女は思慮深げに眉をひそめた。「それで、投票はどうするつもり?」
「まだ決めていない」

 彼を注意深げに見据えている彼女が、彼が曖昧に答える理由を吟味しているのは間違いなかった。もしかしたらグランド・エンチャンターが彼女を送り込んできたのであって、ふたりの間の友情を手がかりにして、集会が始まる前にリースの投票権をエイドリアンに託すよう説得することを求められたのかもしれない。そうだとしても、それは間違いだった。エイドリアンと疎遠になったと感じていたのは昔の話で、今は完全に絶縁していると言えた。ふたりの友情は霧散して、言いようのないぎこちなさが取って代わっていた。彼が自分の居室で彼女を拒絶したことだけがその理由とは思えない。彼女が彼と目を合わせようとしないのは他に何か理由があるはずで、彼はそれについて入念に考えを巡らせていた。 

 エイドリアンは説得を諦めてこの場を立ち去ろうとしたが、その肩を彼が掴んだ。「待つんだ」と彼が言った。「尋ねたいことがある」
 彼女は身構えた。だが振り向いたときには平然さを取り繕っていた。「どうぞ」
 「ファラモンドの死の真相はどうなんだ?」
 彼女はぎくりとした。「テンプラーが殺して、あなたを嵌めたんでしょう」
 「ロード・シーカーは否定していた」彼は反駁した。「彼が嘘をついていたと言いたいんだろうが、なぜそんな嘘をつく? 他のことについては全て真実のみ語っていたのに、どうしてそこだけ嘘をつく? どうしてわざわざ苦労して僕を嵌める必要があった? 意味が通らない」
 彼女は肩をすくめた。「じゃあ他の者たちを殺害した誰かさんがファラモンドも殺したのよ」
 「彼の名前はコールだ。君も彼に会ったが、もう覚えていない」リースはエイドリアンの視線を逸らさず自分に向けるように強いた。彼女が再び目を逸らすと彼は顔をしかめた。「つまり、コールもまたエヴァンジェリンに自分は殺していないと言っていた。彼は他の殺害についてひとつも嘘をついていなかったのに、なぜそこだけ嘘をつく?」

 「さあね。どうして殺害について嘘をつくのかしらね」
 リースはエイドリアンに歩み寄り、怒りの眼を向けた。彼女は後ずさり、びくつき、欄干に背中が当たって行き場所をなくした。彼女は振り返って遥か下に見える廃墟の中庭を見下ろし、それから彼に目を戻した。「答えは別にあるようだ」と彼が唸った。
 

 張りつめた沈黙の中、ふたりは対峙した。彼女は身動きするつもりも、彼に答えるつもりも断固としてないようだった。やがて、ゆっくりと眼差しを下した。「わかったわ」と彼女が言った。彼女の声はとても静かで罪悪感に塗れていたので、リースには聞く前からその答えがわかった。「あたしがファラモンドを殺して、あなたのベッドの下にナイフを置いた」
 「なぜそんなことを?」
 「なぜだと思う?」憤りながら彼女が言った。「ウィンの考えを変えさせるにはそれしかなかったからよ。彼女は他の皆との会合に出向いて、またしても独立に反対の投票をするよう働きかけて、しかもそれはうまく行きそうだった」彼女は挑戦的な眼差しで彼を見上げた。「彼女は理由がなければテンプラーと戦うこともしなかったはずよ。誰か自分の愛する者がテンプラーたちからの危険に曝されなければ」

 リースは心の中に憤怒が沸き立つのを感じた。エイドリアンのローブの胸倉を掴んだ彼は、いっそ相手をここから投げ落としたいという激しい誘惑にかられた。それは容易なはずだった。どんな魔法も彼女の命を救うことはできないし、彼女も抗いもしないだろう。実際、彼女の顔つきはやれるものならやってみろと告げているのに等しかった。それがまた怒りを大きくした。「君が彼女を殺したんだ」彼は癇癪を爆発させた。「君がエヴァンジェリンを殺し、他の皆を殺したんだ。君の両手は血に塗れている」

 「自分の行いの責任は取るつもりだわ」と彼女は言った。「でもテンプラーのやったことは知らない。こんなことになるなんて思ってもいなかった。たとえわかっていても、あたしはまたやるわ。ファラモンドは死にたがっていた。彼はあたしに懇願した」
 「自分の行いに誇りを抱いてるのか」
 「誰かがやらなきゃならなかった。あたしたち皆のために」

 あたしたち皆のために。リースは乱暴に彼女を離すと背を向けた。もはやその姿を見ることすら耐えられなかったが、ある意味で彼女は正しい。死体の山にもうひとつ新たに加わったからと言ってそれが何だろう。自分のこともとても無辜とは呼べない。彼もまたこの一件の中で役割を果たしてしまったのだ。彼の両手もまた血に塗れている。 

 それでも彼はカークウォールの叛乱について想起せざるを得なかった。アンダースという名のメイジがグランド・クレリックを殺害し、あの街のサークルのほとんど全てのメイジたちが殺されることになる出来事の引き金を引いたのだ。だがそれもまた彼が他の皆のために善かれと思ってやったことだろうし、テンプラーと対決する以外の手段は彼には思いつかなかったのだ。誰がその巻き沿いになろうとも厭わず。

 本当にそれしか道は残されていないのだろうか? 正義の名のもとに、どちらか一方だけが残るまで互いに血を流し合い、殺し合うしかないのだろうか? サークルは争いをやめなければならないという意見に説得されたのはそう遠い昔のことではないが、それについてウィンは間違っていた。彼女はエイドリアンのおかげで考えを改めたが、自分はどうだ? だが今は愛想を尽かしたという気持ちしか感じられない。

 「これでおしまいだな、僕たちの間柄も」と彼は冷たく言った。「かつては友人だったが今は違う。覚えておいてくれ」 

 彼女は悲しげに見えたが、予期していたようだった。「わかったわ」
 「君にはなにもわかっちゃいない」

 彼女を後に残し、彼は塔から下りる階段に向かって足早に歩いていった。雪が降り始めた。

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