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2013年10月 3日 (木)

【DAI】Dragon Age Asunder (14-2)

 翌朝の太陽が地平線から顔を出す頃、野営地は慌ただしくなった。

 リースはエイドリアンと話して以来ずっと苛立って眠れなかったが、エヴァンジェリンには代わりに少し眠るようようやく説得することができた。彼女が毎晩一睡もせず過ごせるのはレリウムの影響なのか、それとも警戒心がそうさせるのかはわからなかった。

 他の者たちの寝顔をひとりで見つめるのは奇妙な感じがする。ウィンは寝ている間も顔は疲弊しているようで蒼白だ。なにしろ老齢にもかかわらず、帝国領土の半分を旅して、今は雨の中で野宿しているのだ。ファラモンドがそうであったように、アボミネーションは歪んで醜い姿に変化するものだし、ディーモンが憑依を隠そうとしても何らかの痕跡は見出せるものだ。それが感知できるはずのリースにとってみても、ウィンが憑依されているようには思えない。
 エイドリアンが間違っているのか。

 皆がのろのろと立ち上がり、朝の冷気に耐えるように身体を必死に擦っている。夜明けの空は晴れ渡っていて、物思いに耽っていなければ、赤とオレンジ色に彩られた日の出を美しく感じたことだろう。

 草原に放していた馬を集めているエヴァンジェリンに、リースはウィンと二人きりで話す必要があると告げて、一頭だけその場に残しておくように頼んだ。その言葉に髪に櫛を入れているウィン本人が驚き、他の者たちはふたりに好奇の目を向けたまま黙していた。エヴァンジェリンはただ頷き、ゆっくり進んでいるからできるだけ早く追いつくようにとだけ告げた。

 皆が押し黙って馬に乗ると、リースとウィンを後に残して去っていく。コールだけが心配そうな顔つきで振り返ったのは、リースが彼を見放そうとしていると考えているためだろうか。そのうち彼も渋々前に向き直り、馬上の一行の姿は見えなくなった。

 ウィンはその間リースのほうを見ようともせず、何事もなかったかのように髪に櫛を当て続け、今では丸く結った髪をピンで止めはじめていた。エイドリアンと話して以来、リースが一晩ずっと考えていたはずの話は頭の中から全部吹き飛んでしまい、どう切り出していいかわからないまま、ぐずぐずしていた。相手にアボミネーションではないかと尋ねることなんてできるのだろうか。

 あの娘が話をしたのだ、というウィンの言葉にリースは唖然として彼女を見つめた。それは質問ではなく彼女の所見だった。ウィンは膝の上で両手の指を組んで彼のほうを用心深げに見つめている。そうみたいだ、と答えたリースは、呆けたように口を開けているのはお行儀が悪いと叱られて慌てて口を閉じた。
 いずれわかると思っていたと溜息をつく彼女に、リースは本当に知りたいのかわからないまま、事実なのかと尋ねた。

 ウィンは、自分がスピリットに憑依されているのは事実だと答えた。そしてリースが言葉を継ぐ暇を与えないように指を一本立てると、辛抱強く微笑みながら、憑依と言ってもリースが考えているようなものではなく、何年も前にこのスピリットと最初に出会ったときから続いていることだ、と言った。

 ウィンは消えた焚火の灰を見つめながら話を続けた。

 ウィンは一度死んでいる。先のブライトが始まった頃、フェラルデンのタワー・オヴ・メジャイがアボミネーションの群れに蹂躙され、彼女もそこでの戦いで殺されたのだが、生死の際にあった彼女のところにスピリットがやってきた。ディーモンでもなく、おぞましくも自己中心的でもないその存在が、彼女に二度目の機会を与えてくれた。
 リースはまだ話の続きがあると思って身構えていたが、ウィンはその後押し黙って彼を見つめていた。彼女の様子はまるで懺悔をしているようであった。

 何のための二度目の機会かと尋ねると、ウィンは肩をすくめて自分もそれが知りたいのだと答えた。それから、以前にはもともと短かった余命の分だけ死を猶予されて、何か大きな目的を成就したときに元通りの寿命を終えるのだと考えていた、と告げた。そして、これまでサークルの崩壊を食い止めるため、そして多くの命を奪う戦争を食い止めるため努力を重ねてきたはずなのに、なぜかまだ生き永らえているのだ、と悲しそうに続けた。

 会話は予期していた内容とは違っていた。リースは考えをまとめるため彼女から少し離れて額を撫で回した。振り返ると、ウィンは何かを期待するように見つめている。リースは草の上に勢いよく腰を下ろし、それがディーモンでないとどうしてわかるのか、と尋ねた。

 リースは、好意的なスピリッツがこちらの世界に興味を示すことはあっても、誰かに憑依することはないと聞いていた。ウィンは、ディーモンとスピリットは硬貨の表裏のようなもので、さして違いはないのだと答えた。ところがそのスピリットが自分のところにやってきた理由はわからない、と瞑想するような様子で認めた。あまりに急な出来事でもあったし、以前からずっとウィンに付きまとっていたスピリットが機会を得ただけなのかもしれない。

 ウィンとそのスピリットの間に会話はなく、単に体中が火照ってくるかのように感じるだけだという。一度消えた命の灯を再び点火したスピリットは、彼女とともにその魂の中にいる。ウィンとスピリットは不可分な関係となったので、リースが感知できなかったのも当然かもしれない。

 フェイドの中では、ウィンはスピリットのパワーそのものを体現できる。エイドリアンの眼には、その様子があたかもスピリットが彼女から湧き出てきたように見えたのだろう。そのときまで発現しなかったのは、自分がディーモンに手の内を知られたくなかったからだ、とウィンは言った。

 ウィンが忙しく荷造りしている間、リースは口をつぐんで考えを巡らしていた。尋ねたいことがまだ山ほどあったが、直面している問題があまりに大きすぎた。ファラモンド救出の是非を議論したとき、彼女が怒り出した理由も今ははっきりわかった。

 アボミネーションの母をご紹介します。
 素敵なお母様ですね! あまり醜く歪んではいないようですけど。
 そうなんです。死んでるわりにはピンピンしてるでしょう?

 リースが溜息をついて、これからどうするのかと尋ねる。しばらく黙って荷造りを終えたウィンは彼をまじまじと見つめながら、サー・エヴァンジェリン抜きでしたかった話を打ち明けるには、今こそ丁度都合が良いと言った。

 ウィンはリースに、ファラモンドの儀式を学ぶように告げた。ディヴァイン猊下はサークルの変革を企てており、ファラモンドの得た知識がその第一歩になる。城塞におけるサー・エヴァンジェリンの反応からも明らかなように彼の命は風前の灯だが、その知識まで彼と一緒に喪うことがあってはならない。

 色々な怒りが一斉に湧きだしてきたリースは飛び跳ねるように立ち上がった。母親が憑依されたり死んでいたりすることについては正直まだ腑に落ちていなかったが、この話は別だ。

「あなたは最初から知っていたんだな!」
「彼の目的をね」
「それなのに・・・、エヴァンジェリンの手にかけさせようとしたのか」

 ウィンはバカを言うなというように手を振り、エイドリアンが割り込んだのでその必要もなかったが、最後にはシェイルが止めていただろうと答えた。ウィンは、ファラモンドが愚かにも度を越してしまったと考えている。憑依されていても自分の企てがうまくいくと理屈づけられるのはトランクィルならではだろう。だがディヴァインの目的も、ウィン自身の目的もはっきりしているという。

 重大な危機にある友人を救い出すという話は全部でたらめだったのか、とリースが詰ると、ウィンは、それもテンプラーの眼を欺くためであると答えた。彼女はファラモンドの元にここ数年の間に何度も訪ねており、成果が出るのを待っていたのだ。そしてその成果は今手の内にある。

 もっと以前に彼に伝えなかったのは、リースがコールの話やエヴァンジェリンの真の任務のことをなかなか伝えなかったのと同じことだ。ウィンは、自分の目的もディヴァインの関与も秘匿しなければならなかったという。
 憤慨したリースが、脇目も振らず馬のほうに歩み寄ろうとすると、ウィンが駆け寄ってその手を引いて、こう言った。

 エイドリアンのようなリバタリアンズはサークルを破壊しなければならないと考えている。ウィンはより良く変えることができると考えている。テンプラーたちには真実を伝えなければならない。

 ディヴァインが騎士団にただそう命じれば事足りるではないか、とリースが質す。ウィンは、ディヴァイン猊下は何世紀にもわたる伝統に縛られており、またチャントリーの内部にも抵抗する勢力があるという。第一、ホワイト・スパイアから都合良く忍び出たメイジがたったひとりで宮廷舞踏会の場に入り込むことなど、テンプラーの関与なくしてできるはずがない。ウインによれば、テンプラー騎士団こそが手に負えない野獣の群れであり、彼らを泉に連れて行くことはできても水を飲むことを強制はできない。しかるべきときがくるまで、メイジたちは自分の身を守らなければならない。

 躊躇した様子を見せていたウィンは、突然親しみを込めてリースの両頬を両の掌で覆い、それからあなたの身も守らなければならない、と告げた。リースが儀式を学べばファラモンド以外唯一の担い手になることができる。その事実は、ディヴァイン猊下はもとより、ロード・シーカーでさえ見逃すことはできない。

 リースは顔をしかめて彼女の手を振りほどいた。ウィンは、スピリッツの媒介者が儀式を学べることも知っていた。だからこそ、リースをこの旅に連れてきた。
 リースを救うためだ、とウィンが言った。

 リースは馬のほうに向きなおり、手綱を取って鞍に跨った。ウィンは黙ってリースを見つめたまま動かなかった。

「大したお方だ。エイドリアンと何も違わない。ふたりとも、自分の目的のためなら他の者たちのことなんて知ったことではないんだ」
「リース、私はただ・・・」
「あなたはただ、スピリットが自分に二度目の命を与えた理由を証明したいだけだ。自分がでたらめに選ばれたのではなく、それには何か理由があると思いたいだけだ。聖戦の徒気取りなんだろう。わかったよ」

 リースが意図したよりもきつい言葉であったが、どのみちふたりとも黙り込んだ。彼女は良かれと思ってやっているのかもしれない。エイドリアンも同じなのかもしれない。コールを連れて逃避行を始めるのも、あながち悪い考えではないのかもしれない、とリースは思った。
 リースはウィンに馬に乗るように促し、ウィンの秘密を口外することはないし、自分は儀式を学ぶことにする、と告げた。
 その理由を尋ねるウィンに、リースは答えた。

「逃げても誰のためにもないからだ。そろそろ踏み止まって立ち向かう時分なのだろう」

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