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2013年10月10日 (木)

【DAI】Dragon Age Asunder (15-2)

 ひどい眺めだ。
 リースの言葉にエヴァンジェリンも同意した。
 一行が西方の丘からヴァル・ロヨーに近付いていくと、これまで噂で聞いていた光景を目の当たりにすることになった。
 日中間断なくすれ違ってきた大勢の群衆たちの誰もが、首都は大混乱だと口々に告げていた。

 東方プロヴィンシズにおける戦の報せが稲妻のように首都を撃つと、恐慌に襲われた貴族たちが脱出を始めた。ほどなく女帝崩御の噂が駆け廻り、首都が炎上するとの風説に根拠を与えるまことしやかな理由がその他にもいくつも続き、帝国の宰相(The Imperial Chancellor)が農民たちを兵役に徴集するお布令(ふれ)を出したとき、暴動がはじまった。

 一行が首都を留守にしていた二週間のうちにそこまでの変化があったことは容易に信じ難かった。道中耳にする話はどんどん大げさで突拍子のないものになっていったが、ここにきてその全部がただの法螺話ではないことがはっきりした。

 城門の外には招集された軍隊が駐屯する天幕の海が広がっている。エヴァンジェリンのみるところ、優に一万を越える兵が野営していて、彼らの焚火から上がる煙が首都の半分から上がるものと入り混じり、空を煤で覆い尽くしていたが、その匂い以上に耐え難いのは、野営地の活動から生まれる様々な悪臭であった。

 丘の上の宮殿は煙で霞んで見えず、背の高いグランド・カシードラルでさえ帝国の首都に林立する建物の影に隠れていた。ただホワイト・スパイアだけが他の建物の間から屹立していて、あたかもそれは平常を示す篝火のように見えた。

 城門が閉ざされている、とエイドリアンが言った。太陽の門(the Sun Gates)は鋼鉄製で、ドレイケン皇帝の隆盛を描く金色の装飾を施した荘厳な造りだ。陽光が万遍なく降り注ぐと、攻め入る敵の軍勢から視界を奪うほど眩しく輝くと言い伝えられている。バカげた迷信ではあるが、オリージャンにとってこの門は一方ならぬ畏怖の対象だ。

 だが、「遅かれ早かれ全てのオリージャンはこの門をくぐることになる」という有名な言い習わしも今は当てはまらないようだ。最後にヴァル・ロヨーの城門が閉鎖されたのはドラゴンの襲来時だが、復興まで何年も要したという当時の惨状ほどまで事態が悪化していないことをエヴァンジェリンは願った。

 軍勢は首都を包囲しているのだろうかとリースが尋ねると、ウィンが首を振って天幕の群れを指差した。紅いバナーは女帝セリーンの忠臣シェヴィン侯爵(the Marquis de Chevin、マーカス・デ・シェヴィン、仏:マルキ・ド・シヴン)のもので、他にもジスレイン(Ghyslain、仏:グイレン)とモラック(Morrac、仏:ムハク)、ダージェント伯爵夫人(Countess d’Argent、カウンテス・ダージェント、仏:カンテス・ダルジャン)など、集結しているのは侯爵がかき集めたらしき北方の諸侯だという。

 よって城門が閉ざされているのは、徴兵から逃散する住民を阻止するためか、疫病が発生したかのどちらかの理由だろうとウィンが言うと、その言葉を打ち消すようにエヴァンジェリンが手を振って、たった二週間の間に疫病が蔓延するとは思えないし、逃げている人々は城門の中に入ってすらいないから理由は別にあり、それは自分たちの眼で確かめるしかないと言った。

 一行はエヴァンジェリンの先導に従い、軍隊の野営地の真ん中まで続く急こう配の道を馬で駆け下りていく。より小さな夜の門(the Night Gate)まで迂回する手もあったが、その場合は河を渡らなければならなかった。
 一行の到着は予告されているので何も問題はないはずだが、同じ理由でエヴァンジェリンは不安を抱いていた。

 野営地の中はゆっくりと進む。皆不安げな表情の兵士たちは、粗末な鎧を身に纏っている者さえ稀で、焚火を囲んで粥をがつがつ食べている。彼らとまるで対照的なのが色とりどりの家紋で飾り立てた完全装備のシェヴァリエたちで、兵士の隊列の前に馬を走らせて命令を叫び、天幕から天幕へとうるさい蜂のように駆け回る。エヴァンジェリンの眼には、誰一人じっとしている者がいない騎士たちのほうが下級兵士たちより余程神経質になっているように見えた。

 周囲の雰囲気は戦の予感に満ちていた。この軍勢はヴァル・ロヨー市街に進軍するつもりだろうか。それよりも何よりもテンプラー騎士団は旗幟を明らかにするつもりだろうか、とエヴァンジェリンが黙考する。かつてのようにチャントリーの要請に従うのなら、彼女もテンプラーの一員として行軍することになるかもしれない。

 軍隊に属さない者たちも大勢いた。駆けまわっている子供たち、軍隊に随行する女性たち、料理人、エルフの遣い走り、得体の知れない「護符」を売りつけようとしている商人、盗賊らしき怪しげな風体の者たちまでいた。

 城門の前には二十人もの衛兵たちがいて、開門を待つ数百人もの旅人たちを疑わしそうに見張っていた。まるで貧民街が一時的に移ってきたかのようで、意気消沈した人々が座り込み、意志の力だけで開門がかなうと信じているかのように衛兵たちを見つめている。
 エヴァンジェリンと一行の姿は場違いなほど目立っていて、利用できる機会と見て取ったらしき旅人の何人かが立ちあがる。衛兵の一人が彼女のほうに槍先を突き出し、ヴァル・ロヨーの城門は宰相閣下の命により閉鎖されていると叫んだ。

 ホワイト・スパイアに赴く用があると彼女が告げると、衛兵の後ろから待てという声がして、手練れらしき胡麻塩頭の男が現れた。指揮官然とした彼の誰何にエヴァンジェリンが応じると、男は顔をしかめて唾を吐き、自分の当番の終わりがけに彼女たちが現れたおかげで、酒場で寛ぐのがお預けになったと愚痴をこぼす。それから彼は、ロード・シーカーがここに来るまで一行が市街に入ることは許されず、彼自らロード・シーカーの元に報告に向う間、ここから動いてはならないと告げた。それがロード・シーカーの厳密な指示であるという。

 指揮官が詰所に戻り、非常用の門の向こうに姿を消すと、リースが先ほどの指示は何を意味すると思うかと尋ねるので、エヴァンジェリンはロード・シーカーが腹を立てているのだろうと答えた。

 何かが始まることを期待した旅人たちが城門に近づこうとして一行の周りに密集してくる。ファラモンドが悲鳴を上げて、ローブの襟首を引っ張っりながら自分がどれだけ人ごみが嫌いだったか忘れていたと叫ぶ。エイドリアンも不快そうな様子で、ここから離れるべきだという。エヴァンジェリンがここ以外のどこに向かうつもりかと尋ねると、エイドリアンは、もう一度その質問をしたら、皆テンプラーたちの手で牢獄にぶちこまれてしまうだろう、と答えた。

 うるさく騒いでいたふたりのテヴィンター商人が衛兵たちから激しく殴打されると、ようやく群衆が後ずさりをはじめる。商人たちの用心棒らしきごろつきが剣を抜いたが、衛兵のひとりが槍であっさり突き殺してしまった。群衆の興味もそれで萎えたようで、今度は急いで城門から遠ざかろうとする者たちが互いを踏みつけそうになっていた。

 馬上のエヴァンジェリンたちの身は安全だったが、周りの騒ぎで馬たちが落ち着かなげになり、頭上を覆う雲から雷鳴が聞こえるとさらに神経質になった。ひと雨くれば煤も悪臭も洗い流してくれそうだったが、今にも降り出しそうな空からは雨粒ひとつ落ちてこなかった。

 一行が到着したときにはすでに夕刻だったが、それから一時間は優に過ぎた。待つのは辛く、エヴァンジェリンは緊張を味わっていた。サー・アーノードは、一行がアダマント要塞から生還したことが気に喰わず、食糧・物資を置いて立ち去るよう命じたときには激怒していた。彼がロード・シーカーに何を報告したかは不明だが、好意的なものであるはずがない。とはいえロード・シーカーが彼女を叱責する理由に事欠くわけでもない。彼女の信じるテンプラーの真の任務を論じても、壁に向かって話しているようなものだろう。彼女自身がなした決断がもたらす帰結に向き合うときが迫っている。

 歯車がきしる音にエヴァンジェリンが飛び跳ねた。不機嫌な様子だった旅人たちが即座に跳ね起きると、大騒ぎしながら城門の方に駆け寄ってきた。荷物を抱えている者も多く、彼らがとうとう門の中に入ることができると考えているのは間違いなかった。
 丁度同じ頃に先ほどの指揮官が非常用の門から姿を現し、市街に入ろうとするものは容赦なく斬り倒すよう、衛兵たちに大声で命じた。

 不吉な音とともに巨大な門が開き始めた。まばゆい光に眩惑されたエヴァンジェリンが視界を取り戻すと、テンプラーの一連隊が轡を並べて現れてくるのが見えた。三十人の騎士がそれぞれ松明を手にしている。先頭に立つのは印象深い黒鎧を身に纏ったロード・シーカー・ランバートで、何週間か前に彼がここに到着したとき目にしたのと同じ堂々たる軍馬に跨っていた。

 旅人たちの群れは即座に足を止め、恐れをなして後ずさりはじめた。衛兵といざこざを起こす者も誰一人なく門から遠ざかっていき、間もなくその場に残ったのはエヴァンジェリンたちだけになった。あたりには静寂が訪れる。

 ロード・シーカーの顔つきは怒りのため強張っていた。固く閉じられた顎、灰色の瞳の光、強く握りしめている皮の手綱は千切れんばかりで、どれも良い兆しとは思えない。
 彼女はできるだけ穏やかな調子で彼に帰還の挨拶をした。

 到着できたこと自体喜ぶべきなのだろう、と告げる彼の一言一言が乾いていた。エヴァンジェリンに道中の様子を尋ね、それから彼は乗馬をウィンとファラモンドの乗る馬の傍まで近寄せてきた。ウィンは朗らかな顔を向けるが、エルフは恐怖のため震えている。
 救出対象だったのはこのエルフかと尋ねた彼は、研究内容について説明しようとするウィンを遮り、氷のような視線を向けると、それに関する知識はすでに入手したと告げた。

 誰かが交信石でその情報を広めたおかげで、ホワイト・スパイア中が憶測話でもちきりになっている。そう言うと彼は待機中のテンプラーたちに近くに寄るように合図し、一行を護衛してグランド・カシードラルまで速やかに連れて行くように命じた。

 行先がホワイト・スパイアではないことに困惑した様子でウィンが尋ねると、至聖なるお方が速やかな謁見を要請していると、彼は一言一言に侮蔑を込めて伝えた。そして、どうやら猊下自身も交信石を保有しているようだが、ウィンはその事実を最初から知っていたのだろうと詰る。

 一行はテンプラーたちに取り囲まれた。騎士たちは武器を構えることはせず、表情は兜に隠れて見えなかったが、テンプラーたちと言い争う者は誰もいなかった。彼らは一団となってゆっくりと城門に馬を進めていった。

 ロード・シーカーはサー・エヴァンジェリンだけを呼びとめ、彼に同行するように命じた。馬を止めた彼女は狼狽ぶりが顔に出ないように心掛けた。リースが振り返って彼女と視線を合わせ、無言で同情を伝えた。彼の後ろにはコールができるだけ身を隠そうとしている。ロード・シーカーが彼の姿を目撃できるかどうかにかかわらず、彼はリースのローブに潜り込んで姿を消したいと思っている様子だった。

 一行の姿が見えなくなると、ロード・シーカーはエヴァンジェリンについてくるように告げ、一行の後を追うように馬を進めた。ふたりが門をくぐり終えると、歯車がまた鳴りはじめる。巨大な門が轟音と共に閉じ、それで全てがお仕舞になったような感じがして、悪寒が彼女の骨に染み渡った。

 ふたりの馬は太陽通り(the Avenue of Sun)を静かに進んだ。普段の日中はあらゆる類の商人が軒を並べてごった返し、街に到着したばかりの旅人に案内人たちが大声で呼びかけている場所だ。夜間は幾分静かとは言え、如何わしい類の案内人が徘徊しているはずだが、今宵は人影ひとつない。大変な費用をかけて導入され、日々トランクィルたちによって整備されている街頭沿いの照明石が投げかけるサファイア色のとばりが不気味な雰囲気を醸し出している。 
 煙が街のそこここから上がっているが、貧民街のあたりがより惨い状況であるように思われた。沢山の衛兵たちが街路を巡邏しており、厳しい外出禁止令が敷かれていることがわかる。 

 命令が不明瞭だったようだ、と、ようやくロード・シーカーが口を開いた。
 エヴァンジェリンが否定すると、彼は、支援のため派遣したテンプラーたちは送り返され、メイジたちはここに戻り、彼女が防ぐように期待されていた混沌そのものの不安に直面しなければならなくなったのはなぜかと、難詰する。 

 彼女は荒れ果てた地からトランクィルを連れ出しただけではなく、それに関する情報を広めることまで許してしまった。誰よりも先にメイジたちが知ってしまったので、ロード・シーカーには伝播を阻止することもできず、独自に交信石を保有しているディヴァインにまで知れ渡ってしまった。 

 ロード・シーカーが弁明を待つかのように話をやめたので、エヴァンジェリンは、至聖のお方がウィンの任務に個人的関心を抱いておられるため、猊下ご自身のご英断を仰ぐことが適切であると判断した、と答えた。 

 判断した、という言葉を吐き捨てるように繰り返し、ロード・シーカーは首を振った。ふたりは沈黙したまま馬を進める。ロード・シーカーは彼女の処分について黙考しているのかもしれないし、とうの昔に心を決めてしまっているのかもしれない。 

「私が貴公に指示を与えたのだ、騎士隊長。貴公には何の意味もなかったようだな?」
「私はチャントリーへの忠誠を誓っております」

 そう断言した彼女は、それでなんとか言い逃れできないかと願っていたが、同時に心の中に怒りがこみあげてもきていた。

「我々はディヴァイン猊下に対する責務と同様に、秩序を維持するだけではなく、メイジを保護する責務も負っております。お言葉を返す失礼をお許しください、閣下」
「礼はとうに失せられているようだが。騒乱を阻止する手立てを講じる機会を私から根こそぎ奪い取った女しかここには見当たらん。それが貴公の意図したことか?」
「最良と考えられる判断をしたまでです。詳らかに申し開く機会を与えていただければ、ご理解いただけると信じております」
「説明を聴く時間などあると思うか? グランド・カシードラルに向かうこの時点で、すでに道は定められている」

 ロード・シーカーは顎を固く閉じ、彼女のほうを見ないように努めていた。

「ホワイト・スパイアに帰投後、サー・アーノードの元に出頭するがよい。そこで貴公は騎士隊長の任を解かれる」
「承りました、閣下」

 彼女は、憤怒を押し殺した。確かに彼に選択の余地は残されておらず、事態の収拾は彼の力の及ぶところではなくなってしまったが、彼女は自分の行いが最良であるとの確信をますます強めていた。正しい行いをなすためなら、地位を喪うことなど恐れるつもりもなかった。 

 しばしの間通りが市場街に差し掛かると、そこで彼女は首都が見舞われた騒擾を目の当りにした。すべての建物が焼け落ち、いまだ煙が燻り続けているものもあった。通りの敷石を覆う沢山の塵芥はここで戦いが行われたことを物語っている。薄暗い夕闇の光の中でも、路面の血の跡は見紛うべくもなかった。 

 ロード・シーカー・ランバートがそれ以上会話を続ける意図がないことは明白だったが、彼女はタワーの殺害事件の真犯人についても伝えなければならなかった。リースがタワーを離れている間、殺害事件が発生していなかったことを指摘するロード・シーカーに、エヴァンジェリンは真犯人を別に発見したことを伝えたが、それについては多少説明を要すると付け加えた。

 彼女は、ロード・シーカーが向ける疑いの眼差しから目を逸らさないように努めた。コールのことを伝えるのはこんな場合でなくても難しいが、試みないわけにはいかなかった。ロード・シーカーは、ホワイト・スパイアに帰投してから報告を聴くと応じた。今は猊下との謁見が先だ。

 ロード・シーカーはこれから迎える事態への苛立ちを隠せずにいたが、エヴァンジェリンにとってはそれが希望のしるしであった。あの宮廷で起きた暗殺未遂事件の際に見かけた猊下は、公正かつ公平なお方のように思われた。今エヴァンジェリンにできることは、メイカーがその聖なる僕に真実を見極めるための智恵をお授けになるよう、静かに祈りを捧げることしかない。

 小さな希望に過ぎないが、彼女はそれに精一杯しがみついていた。

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