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2013年8月

2013年8月31日 (土)

【DAI】Dragon Age Keep

 新PCのセットアップがなんとか終わりました。予想に反してネットワークまわりの設定は超簡単で、旧PCのバックアップ・ファイルもうまいこと復元できた。

 まあ、とはいえWindows 8ですからね・・・。いらないホーム画面からいちいちデスクトップ画面に戻す手間も前と変わらないが、何も言うまい。 

 DA関係のセーヴ・ファイルも無事復旧できたようなので、ちょうど記事が出ていた、ダラー氏のDragon Age Keep、ファイル・トランスファー問題の解決策に関するレターを紹介します。

http://blog.bioware.com/2013/08/28/the-dragon-age-keep/

 ハイ、またお会いしたね。  

 Dragon Ageでは選択が重要な意味を持つ。ファンがDAの世界を形作るに際して、完全なコントロールと自由を与えることはこれまで常に重要なことと考えてきた。諸君が為した決断、打倒した仇敵、築き上げた関係。すべてが重要で、賞賛に値するものだ。多くの諸君が、Dragon Age: OriginsとDragon Age IIの選択がDragon Age Inquisitionにどのように反映されるのだろうと疑問に感じていることだろう。本日、まさにその点についてお知らせすることになる。

Blogkeep

 Dragon Age Keepについて、ワクワクした気持ちとともにお知らせしよう。このKeepでは、プレイヤー諸氏が築いてきたDragon Ageの過去の経緯を思い通りにカスタマイズすることが可能だ。ウォーデンとホークの運命はどうだった? コンパニオンは誰だった? ロマンス相手は? 誰が権力を握り、誰が敗北した? どんな遺産(レガシー)を残してきた?

 Keepでは、セダス世界の様子をプレイヤーの思い通りに好きなだけ多く変えることも、あるいはまったく変えないこともできる。それからその世界の様子のセーヴ・ファイルをDAIの新ゲーム開始前にインポートする。セーヴ・ファイルを無くしたり壊したりしてしまったかい? 問題ない。Keepで世界の様子を再構築して将来に備えてくれ。DAフランチャイズに初めて付き合うことになる諸君には、Keepは、登場人物たち、様々な土地、そしてDAIの物語を導き出した多くの出来事について理解を深める素晴らしい手段を提供するのだ。 

 Keepが実現した経緯について少し触れてみよう。DAIの企画のごく初期の段階で、セーヴ・ファイルのインポートに関する問題にどう対処すべきか考えていた。まっさらのゲーム・エンジンを用いて、新世代コンソール上でプレイされることになる。プラットフォームが過去のものか将来のものかにかかわらず、ファンの決断を持ち込むようにすることが優先順位一番だった。 

 この課題に取り組むためには、クラウド・ベースの解決策が必要だと判明した。プレイヤーは、クラウドによって個々人が創り上げた世界の様子をどんな(過去および将来の)プラットフォームにでも、あるいは他のメディアにでさえ持ち込むことができる。過去からのファンはこのクラウド手法を用いれば、(ネタバレを許容する前提だが)「もしこうだったら結果はどうなったんだろう」というwhat-ifシナリオを確かめることができ、まさかあり得ないと思っていた結末を知ることもできる。実際に過去のゲームを立ち上げて、そのシナリオを追体験することもできる。 

 過去のゲームをプレイしなくても、そのシナリオを自分の創り上げる世界の様子の一部として用い、DAIにインポートして、それがどんな結末を呼ぶのか確かめることもできる。

 過去のセーヴ・ファイルをインポートしたらどうなるのか? 我々は、過去のセーヴ・ファイルをKeepに導入する方法を調査しているところだ。いずれ詳しくお知らせすることができるだろう。

 クラウドへの移行で手にすることができる恩恵には、今までクライアント側の複雑な状況や、プラットフォームのフォルダー数制限で我々が対処できなかった、プロット整合性の修正問題を解決できることもある。Keepは見えないところで、世界の様子が誤謬や矛盾と無縁になるように整合性確保の検査を実行する。

 我々のゲームにおける選択は莫大な数で、中にはほんの些細なことにしか思われないものもある。プレイヤーが過去になした決断の帰結には、将来の物語の中でしか明らかにされないものも一部ある。こうした全ての場合分けとその組み合わせを取り扱うのは複雑な作業だ。本当に複雑だ。すべての可能な前提条件と潜在的な機会を考えれば、ある選択に関する簡単な確認を作り出すだけで非常に込み入ったものになり、かつ、間違いを呼びやすい。

 例として、DAOとDA2からのインポートは600個程度の異なるデータ・ポイントがあり、そのほとんどが「プレイヤーはゲームの最後にこの選択をどう決断したのか」という問いへの答えに複雑な整合性解決を要するのだ。その結果、現在のセーヴ・ファイルの一部にはバグが発生しており、もちろんそれは我々側に原因があったのだが、恒久的に修正しなければならないものでもある。Keepによってその解決策も手に入る。Keepのユーザー諸君は、この整合性問題に悩まされることは二度とない。

 本日から、諸君はKeepのページで来年早々にはキックオフできる予定のベータ版テスター候補として登録することができるようになっている。2014年内に実際にローンチする前に諸君のフィードバックと感想をぜひ聴かせてほしい。ファンがシナリオを実験し、思い通りに歴史を創り上げる十分な時間を与えるため、DAIのリリースの数か月前にはあらゆる人たちがKeepを手にできる予定である。

 新しい情報も間もなくお知らせできるだろう。ありがとう。

 マーク・ダラー
 エクゼクティヴ・プロデューサー
 Dragon Age

 ********

 う。セーヴ・ファイルいらんのかい! 

 なんだ・・・。ファイルをリトリーヴできてもできなくても一緒だったのか。

 最初タイトルだけ見たとき、またしょーもないウェブゲーかスマホゲーかと思ってしまったのですが。いわばMass Effect Genesis(インタラクティヴ・コミック)の立派なヴァージョン?

 んー、まあ時間潰しにはもってこいのアプリケーションになるのでしょうね。 

 もちろんPCと新旧コンソール機向けなのでしょうが、どこかでiPadでも出ると読んだ気がしたのです。今見つからない。気のせいかな。

 

【DAI】Dragon Ageのロマンス(2)

 前回からの続き。

BioWareと妥協する

 BioWareは、プロジェクト全体のスキームの中でロマンスに割くことのできる時間を逆算する。「一般に、フォロワーのキャラクターたちは恐ろしいほど複雑だ」とゲイダー。「ゲームプレイの面でもストーリーテリングの面でも大変な取り組みを必要とする」

 「できるだけ自分たちを追い込むことにしている」とレイドロウが補足する。「以前取り組んだことのないことに取り組もうとする。以前用いたことのない種類のキャラクターを用いようとする。だが、ある時点でそれ以上無茶をするのをやめなくちゃなくなる」

 開発チームはしばしば途中で手綱を引かなければならなくなるが、現実的なロマンスをもっと詳しく見せてほしがるファンの不満にも気が付いている。「恋愛関係をもっと現実的に描くことだってできる」とゲイダー。「微妙な機微(ニュアンス)やそのほかのことをもっとたくさん盛り込むことだってできるのだが、そもそも完璧にオプショナルなものにそこまで手をかけるのかという問題が出てくるのだ。これはロマンスの冒険じゃない。それはそれで面白いかもしれないが、ここではロマンスに興味を抱いたプレイヤーが追い求めるものであって、ゲームの中心テーマじゃないんだ」

 シニア・ライターのルーク・クリスチャンセンも同意見だ。「プレイヤーは我々とどこかで妥協しなくちゃならない」とクリスチャンセン。「恋愛の対象となるキャラクターと冒険をするようにしてしまうと、我々がそれをロマンスと呼ぼうが呼ぶまいが、冒険全体がロマンスの一部になってしまうんだ」

 開発チームが取り組むもうひとつの難しい問題は、一体感を損なわないようにロマンスをプロットと切れ目なく繋ぎこまなければならないことだ。その答えのひとつは、恋が自然に育っていくようにすることである。「我々のロマンスは、どうしてもやむを得ず、ほかの何に比べても友情の延長線上に生まれがちなのだ」とゲイダー。「プレイヤーがロマンス関係を結ばない仲間のキャラクターも、その人となりがわかって、関係を構築できるようにしたいんだ。同じ道を歩いていても、ある時点からロマンスに陥ることもある。その場合は別のコンテンツになるのだ」 

 BioWareはDragon Ageゲームの中核(コア)となる体験と、ロマンスというおまけ要素(エキストラ)とをバランスさせるためのほかの答えも求めている。「ロマンス候補であるキャラクターの心は誰に対しても開かれているようにしたいのだ」とゲイダー。「我々にとってはどうやってシームレスに繋げるかが問題となる。シームレスになっていれば、プレイヤーはそれら二つの別の道筋を必ずしも区別することはできなくなるんだ。BioWareにとってはそれが取り組むべき最大のチャレンジだ。ロマンス・コンテンツが他に類のない(ユニークな)ものにするのと同時に、プレイヤーはロマンス関係を結ばなくても仲間のキャラクターの人となりを知ることができるようにすること。この新しいシームレスなアプローチは、DAフランチャイズに必要であると考えて、DAIの開発チームが取り組んでいるものである。 

DAIのロマンス

 つまるところ、BioWareは語ろうとするストーリーとロマンスの物語をどこかで聞いたようなものにはしないように心掛けているということだ。開発チームは、まだ手がけていない領域がないかと常に自問している。「DAIでも、今まで取り組んだことのないようなスタイルのロマンスをいくつか手掛けている」とゲイダー。

 陳腐なロマンスへの批判と同様、ロマンスが好感度(アプルーヴァル・レイティング)に左右されてしまうという批判も待ち構えている。今回のゲームで好感度は別の役割を担うことになるので、ファンは安心していいだろう。「以前は、たくさんのフォロワー関係コンテンツがプレイヤーの好感度に従って開放されるようになっていた。今はイヴェント・ドリヴンのコンテンツを増やすことに取り組んでいる」とゲイダー。「好感度がどれだけあるかは会話の性質によってわかるようになる」

 つまり、友情を育んだり、ロマンスを築こうとして相手の意見全部に賛同する必要はなくなるということだ。「自分は君の選んだ方法は認めないが、良き友人であることに変わりはない、というような感じだ」とレイドロウ。「だから交流関係の色彩と調子が変わり、より微妙な機微(ニュアンス)に彩られるようになる。過去に取り組んだことのないような世界に入り込むことになるだろう」

 しかしながら、それは変更される全体のごく一部を占めるに過ぎない。BioWareはすべての登場人物がより交流を深め、身の回りで起きていることに注意を払い、プレイヤーがインクイジターとして為した判断にも気が付いているようにしたい。それによりそのときどきの周囲の状況、メイジ、テンプラー、チャントリー、あるいはより重大な脅威などに、現実的味のある反応を返すことができるのだ。

「交流は、単に『やあ、テントの傍に立って君を待ってるよ』なんてものではなく、一緒に冒険を続けるに従って、主人公の行動などに影響を受けて育まれていくのだ」とレイドロウ。「私の理想的シナリオでは、キャラクターとの交流はただそれだけにとどまらないものになる。それら交流はプレイヤーの選んだゲームの進む道筋全体との関係を表現しているものになっていて、それら交流そのものの性質を変えてしまうことになるんだ」 

 BioWareはロマンスについてそれ以上のことを教えてはくれなかったが、ファンのフィードバックを考慮して、ストーリーラインにより密接に織り込まれていくように努めているようだ。ロマンス候補は正式に公表されていないので、今のところ我々はインクイジターが一番惚れ込むお相手が誰になるのか、想像するしかないのだが。

*** 

 超久しぶりにレイドロウのおっさんの何言ってるかわかるようなわからないようなセリフを訳しました。

 結論。キンキー・ラヴ(ひねくれた、倒錯した恋)の路線は変えない、ってことですね。まあ、アダルト向けゲームだし。

【DAI】Dragon Ageのロマンス

 Gameinformer Hubの記事。順番を飛ばしてロマンス編。

http://www.gameinformer.com/b/features/archive/2013/08/28/romance-in-dragon-age.aspx

 ロマンスはBioWareの壮大なストーリーラインのほんの一部だが、ファンの中には(BioWareがそう意図するかどうかに係らず)冒険の旅の枢要な部分を占めると感じている者がいるのも事実だ。

 DA世界の様々なキャラクターの中から唯一無二の相手を選ぶのは至難の業であり、特に告白したい相手が自分と異なるものの見方を有している場合はなおさらだ。BioWareがこれらのロマンスを魅力あふれるものにしている秘訣は何か。それについてDAIで変更するつもりがあるのか。ロマンス候補が誰一人型どおり月並みではないのはどうしてか。恋愛を育む過程でBioWareがキャラクターの意外な一面を示すやり方はどのようなものか、下に見ていきたい。

ぞっこん相手を選ぶ

 恋愛はいきなり始まるわけじゃない。BioWareはロマンス・コンテンツを考える以前から、キャラクター造形を行っている。「誘惑好きな女風に創造してしまえば、それはクリシェイ(陳腐な定型)になってしまう」と、クリエイティヴ・ディレクターのマイク・レイドロウ氏は言う。「現実味のあるキャラクター、一個の人格を持たせるようにすることが先決だ」 ひとたびキャラクターの経歴や動機づけを設定したら、ライターはどれだけの数のロマンス選択肢が必要なのかを見極め、キャラクターの解剖に取り掛かる。

「皆でロマンス・アークがどのようなもので、キャラクターのストーリーでどんなロマンスを語ることができるかについて話し合う」とリード・ライターのデヴィッド・ゲイダーが言う。「コインを入れたらすぐにエッチできるわけじゃないことはわかるよね? 様々な種類のロマンス物語とロマンス元型がある。水で薄めてしまえばみな同じものだろうと言う人がいるだろうが、そうではなく、異なったストーリーを語ることはできるんだ」

 DAOのモリガンとレリアナが対極の関係だとみることもできる。レリアナはその信頼を勝ち得れば好意を持ち始めてくれるという伝統的なロマンス元型。モリガンが相手の場合はその行間を読まなくちゃならない感じで、はねつけられても諦めちゃいけない。
「モリガンがどんな相手か知る間もないうちから、彼女とは即座にエッチできるが、それも彼女の人格の一部だ」とゲイダー。「彼女はそうなることを期待していたわけだし、それ以降は事が終わったかのようにはねつけてくるが、そこから主人公は彼女の堅い鎧の下に隠されたものを読み取ろうとすることもできるんだ」

 プレイヤーに様々なロマンス・アークを提供するには、ライターたちがそれぞれの役割に適したキャラクターを配置する必要がある。「ロマンス・アークがどう展開するか話し合うとき、プレイヤーに選択の余地を与えるのかどうか、どのようなスタイルのロマンスから選ばせるようにするのか、そして実際そうなっているかどうかを確かめる」とゲイダー。
「もしヴァラエティに乏しいなら、もう一度立ち戻って満足いくものにする」とレイドロウが付け加える。「あるいは、他のキャラクターを引っ張り出してきて、『おい、わかるか、お前の出番だぜ』とやる必要があるかどうか考える」

 だが、うまくいかないからといって、そのキャラクターが恋人役から外されるというわけでもない。ときとしてBioWareは、他に類のない(ユニークな)成立しうるロマンス相手とすべく、キャラクターに違った光を当ててみる。「どんなロマンスがありうるか考えるためには、いつも同じように観ていたそのキャラクターを少しだけ違った目で見つめ直すことが必要だ」とレイドロウ。ゲイダーはモリガン創造にあたってまさにその手法を用いた。「モリガンは当初ロマンス候補ではなかった」とゲイダー。だがひとたびそうと決まった後は、ゲイダーは自分の創りだしたキャラクターについて、長く真剣に考えざるを得なかった。「自分がモリガンを見つめる目を変えざるを得なかった。最初は固い鎧を身に纏っている感じに考えていたのだが、その下には違う人格が隠れていると考えてみることにした。ただし彼女はそれこそが自分の抱える弱みであると教わってきたので、自分で抑え付けようとしている。それを思いついた途端に、なかなか面白い展開になるかもしれないと気が付いたんだ」

 
 BioWareはまた人間関係を様々な角度から見るように自ら強いている。よって開発チームは、キャラクターの外から見える部分だけではなく、それが暗示する部分まで目を向けなければならない。「フェミニズムの問題やそれ以外に問題となる要素はないか? あるキャラクターについて意図していない要素を付け加えていたりしないか?」とゲイダー。「そうしたすべての問題を真っ先に検討し、蒸留して余分なものは取り除き、自分たちが語りたい、また語ることが素晴らしいと思えるようなストーリー群に仕上げなければならないんだ」

 次回に続く。

2013年8月30日 (金)

【DAI】Dragon Age Asunder(コメント2)

 Gameinformer の記事が沢山更新されています。自分が多忙でメインPCが死んだこともあって、紹介が進んでいませんが、順不同で面白そうなやつ、もといコントラヴァーシャルなやつからやってみたいと思います(はいはい、「ロマンス」のことですね!)。

 こちらはAsunder、自分にも話させろ第二弾。

 旅の過程について延々と書くのは、もちろんあちらの紀行文学の王道を踏襲しているのでしょう。バッサリ省略するわけにもいかないので、こちらとしては悩ましいところです。冒険ものとは「どこかからどこかに旅をして何かをして帰ってくる」だけのことであると揶揄する声もありますが、典型的にはそうならざるを得ないのでしょう。だからディテールにこだわらざるを得ないわけですし、「ヴァル・ヨロ-を出た一行は、途中色々あったけど数日後アビサル・リフトに到着した」じゃあねえ。「色々あった」ことが大事なわけで。

 一行の目的地であるウェスタン・アプローチ(the Western Approach)は、「西方砂漠地帯」などへぼい訳にしかならないなあと悩んでいたのですが、本文にも名前の由来が不明とあるのでそのままにしておきました。どのセダスの地図を見ても本当にどこに対する「アプローチ」、接近路でもないんです。もしかしたら第二のブライト以前には、このオーレイの西のはずれにも何等かの拠点があったのかもしれませんが、それもどこにも触れられていない。
 その「定義」に頭を抱えている人がいるらしい「クナリ」と同様、このように意味不明瞭な仕掛けは個人的に大好きです。名は体を表さないという趣向は解釈がどんどん広がるので面白い(新ヱヴァのナンバリングもこじつけめいた解釈が色々できる)。

 アビサル・リフト(the Abyssal Rift)は「底なしの地溝」で意味はあっているのですが、「深淵に続く亀裂」とか、インターチェンジャブリーに用いられるグレート・キャズム(the great chasm)の「大渓谷」、「大亀裂」とか、趣味の世界で色々な訳が思いつく。これもそのままとしました。

 深夜リースがリフト付近の上空に光のリボン群を目撃しますが、きっと「この付近のヴェイルが極めて薄い」ことを示しているのでしょう。第二のブライト当時、ここで戦った兵士たちは「中空から黒き死が降り注いできたように感じられた」のではないかという表現は(もちろんブライトの汚染のことですが)、DAIトレイラーのヴェイル破断のくだりと何か共通するような感じもします。

 オーレイの軍勢とすれちがう場面。ここもシェバリエの様子など殊更細かい描写が要らないのではないか、と思うかもしれませんが、風雲急を告げる事態を「馬飾り」で表現しているのでこれは削れません。「装飾用の役にしかたたない馬飾り」でもなんでもいいから身支度を整えて、とりあえず「いざ鎌倉へ」、いざヴァル・ロヨーへなんですよ。よってこれは叛乱軍の蜂起に虚をつかれた女帝サイドの援軍(いわば親藩・譜代)と考えていいのかもしれない。
 「おっとり刀で駆けつける」って「急な事態なのにのんびりやってくる」と間違っている人が多いけど、「大小二刀を腰に差す暇さえ惜しんで手に持ったまま、あわてて駆けつける」っていう意味です。サムライの心構えが全然逆の意味に誤解されちゃっているんですね。

 本当はこの島国のフューダリズムは「なんちゃって封建制」だったのかもしれないけど、あちらの騎士(シェバリエ)のノリを和風でも解釈できちゃうのって嬉しいね。

【DAI】Dragon Age Asunder (8)

 翌日はヴァル・ロヨーを出発してこの方最良の天候だった。馬小屋から出た一行は、澄み切った空に顔を出し始めた太陽が地平線をピンクと金色に染める様子を眺めた。地面はまだ湿り気味で薄く霜が降っている。昨夜の忌々しい出来事さえなければ、リースはそれを美しい一日のはじまりと呼んだかもしれないが、街人の様子からみて酒場の事件が街中に知れ渡っているのは間違いなかった。

 リースは、テレイヴィン(Teraevyn)の帝国領事館で送った時代のことを思い出す。彼が幼い頃師事していたアーヴィン(Arvin)という名の老エルフは、苦虫を噛み潰したような顔つきで知れ渡っており、弟子が汗塗れ血塗れの努力で歓心を引こうとしてもなかなか認めようとしなかった。永遠に続くと思われたその苦行が、師匠が領事館に異動になると知ってようやく終わりを告げると安堵したリースだったが、すぐに自分も随行するよう命じられ、今度は心底驚愕することになった。
 異国の地への旅など初めてのことであり、しかも行先であるテヴィンター帝国(Tevinter Imperium)は、メイジが支配すると伝え聞くエキゾチックな禁断の土地だ。単なる付き人の役目だとしても構わないとリースは大喜びで、出発までの毎晩遅くまで旅のことを考えて眠ることができなかった。自分を帯同する理由を尋ねても師匠は咳払いで誤魔化し、首都のエイリアネイジから噛み塩(chewing salts)を買ってくるようにと決まってお遣いに出すのであった。老メイジの口臭が最悪なのはその噛み塩が原因だが、師匠の不興を買わないためなら、リースはさらに悪いことでも耐え忍ぶことができた。
 テレイヴィンに到着したときのことは今でも覚えている。ヴァル・ロヨーの威厳ですら、テヴィンターの都市の圧倒的な壮大さの前では霞んでしまう。帝国の長い歴史を示す遺物が街のそこここに見つかり、あたかも今の街並みの下に何層にもわたる古い街並みが埋もれているかのような印象を与えるのだ。
 領事館自体の佇まいも際立っていた。大理石の柱、下水道の悪臭を隠すための刺激的なお香の匂い、もはや誰を表わしているのか見当もつかないくらい朽ちた戦士の石像、避暑用の庭園(the Summer Garden)にはドワーフの技術を用いずに魔法だけで作動する噴水まであった。両翼も両の前脚ももげてしまっている古い大理石の龍の像は、その邪悪な様子からみて古の神を表わしているのだろう。
 街中には奴隷もいて、それが何を意味するのか幼いリースには理解できなかったが、彼らを見かけるたびにアーヴィンの顔に浮かぶ憤りの表情には気が付いた。テヴィンター帝国が遠い昔にエルフの土地を略奪した歴史については読んで知っていたが、実際にエルフの奴隷を目にすることも、リースにとってはまたエキゾチックな経験であった。
 
 この地ではオリージャンがまったく歓迎されていないと気付くのに大した時間はかからなかった。両国は過去幾度となく干戈を交えており、帝国チャントリーがヴァル・ロヨーのグランド・カシードラルと袂を分かってからはほぼ絶え間なく交戦状態であった。言葉にオリージャン訛りが混じるたびにリースは住民の敵視を浴び、遠ざけられ、商売で騙され、無視された。
 
 敵意に囲まれた生活を送ることで、リースが最初に感じていた異国情緒の物珍しさも急速に消え去り、色褪せた醜さがそれに取って代わると、彼は孤独に苛まれていった。
 
 そして事件が起きた。師匠の噛み塩を買うお遣いのためバザーを訪れたリースは、年上の三人の少年たちに絡まれ、挑発され、殴打され、ついに魔法で相手のひとりの顔を焼いてしまったのだ。リース自身も相手の魔法の逆襲でひどい傷を負うことになり、付近の衛兵が騒ぎに気付かなければそのまま死んでいただろう。  
 
 少年たちは貴族の出で、とあるマジスターの弟子たちだった。怒ったマジスターが領事館に正式な抗議を申し入れてきた。師匠は、ホワイト・スパイアに送り返す以外に手がなくなってしまった弟子を呼ぶと、才能ある若者の将来はこのくらいで終わることはないから心配するなと告げた。リースが師匠から賛辞らしい賛辞を受けたのは、それが最初で最後だった。口もきけないくらい狼狽していたリースは、テンプラーの警護つきでオーレイまで送り返された。
 
 リースはアーヴィンへ手書きを書き続け、一度はホワイト・スパイアに訪れた彼と短い間だけ会いもした。リースをシニア・エンチャンターに推薦したのは、結局のところアーヴィンだった。その後まもなく師匠が死んだときには、毒殺されたという噂も聞こえてきた。実際のところ領事館勤めの任務は外交などではなく、諜報活動だったのだろうが、リースの眼から見て当時のアーヴィンにそんな素振りはまったくなかった。
 
 だから、エヴァンジェリンが今後は宿を取ることはしないと告げたとき、リースは他の二人同様反対もしなかった。昨夜の騒ぎを繰り返したいとは誰も思っていなかったし、杖を人目に触れないようにする以外に身分を隠す手段もなく、ハートランズから離れるにつれ周囲の状況がどんどん厳しくなっていくのも間違いないからだ。
 
 馬上で過ごす旅の時間はすみやかに流れ去って行った。エイドリアンは、リースの見るところ二日酔いのせいもあって無口で、この世の全ての物事との関わり合いから遠ざかりたいようだった。ウィンは瞑想を続けていて、口を開いたのは交通があまりに少ないことを指摘したときだけだった。実際、他に路上を往来する姿は滅多になく、道は一行が占有しているようなものだった。陽光が輝き、風雨からもようやく逃れることができたので、本来なら絶好の旅行日和と言ってもよい日であった。
 
 残念ながらそうではなかった。リースから話しかけられてもそっけなく会話を拒絶するエヴァンジェリンの様子に、惨めな気分からようやく立ち直っていたエイドリアンも気が付き、リースは後から訳を話すことを約束せざるをえなかった。
 
 野宿のキャンプを設営し終えると、リースはウィンとエイドリアンに話をした。エヴァンジェリンは他の用事に専念しているようだった。リースはふたりにコールについて知り得る限りのことを伝えたが、メイジ殺害事件の犯人であることだけは伏せようとした。実のところその必要もなかったようで、話が進むにつれどんどん不機嫌になっていったエイドリアンがついには、コールが犯人であり、リースはその事実を知っており、それなのに誰にも話さず隠していたことを糾弾し始めた。
 
 気が付いたときには手遅れだったというリースの言い訳に、エイドリアンは事後でも話はできただろうとさらに追及する。リースは、コールの罪を見逃すつもりはなかったが、テンプラーにも姿は見えず、本人に出頭する気がない以上、訴え出れば自分がディーモンの影響下にあると断罪されただろうと抗弁した。これまでの人生で説明不能な想像を超える様々な事象に遭遇してきたというウィンは、自分がディーモンの影響下にないと判断することなどできないくらい、スピリッツに詳しいリースは理解しているはずだと言う。リースは、長時間の対話を重ねた相手がスピリッツの類でないことはわかっているし、その身体には触れることができるのだからディーモンではあり得ないとさらに申し開きするが、ウィンによれば、相手は自分の素性の記憶を喪っているスピリットかもしれないし、スピリットに憑依された少年の可能性もあるという。
 
 後者の場合、コールはアボミネーションになってしまうと指摘するエイドリアンに、ウィンはなぜか突然熱を帯びた口調になって、憑依されたメイジが必ずしもすべてそうなるわけではないとはねつける。なぜそう言い切れるかと迫るエイドリアンに彼女は理由を答えず、リースに今後コールとの接触を避けるように告げると、返事を聴く前にその場から立ち去った。
 
 エイドリアンは、リースが自分に何も告げなかったことを依然納得していない。話を聴けば彼女が何か事を起こすことを危惧したからだというリースに、彼女はもちろんそのつもりだし、次にコールが現れたら喜んで始末してあげると答える。たとえ同情の余地があろうとも、アボミネーションに変化したメイジは誰だろうが容赦はしないのが彼女の態度だ。この旅の目的自体がアボミネーションを救うことであるが、それも彼女自ら選んだものではない。リースに友人が殺害の犯人であることを忘れるなと告げると、彼女もあっという間にその場から消えた。エイドリアンの指摘はもっともだが、今やすべてが手遅れになってしまったと、一人残されたリースは思った。
 
 少し離れたところで剣の手入れをしていたエヴァンジェリンが手を休めてリースの方を見ている。メイジたちのやり取りが彼女にどれだけ聞こえたかはわからないが、それももはや悩んでも仕方がないことなのだろう。
 
 それから数日間の南方への旅は予定より順調に進み、一行はハートランズからプロヴィンシズ(the Provinces、中核地帯から外れた周辺地方)に入った。周囲の風景から緑の丘陵や田園は姿を消し、植生に岩石が取って代わった殺風景な趣となり、時折遭遇する泥濘や冠水した道路では慎重な手綱捌きを要した。往来はますます寂れ、周囲に見かける村落も減り、住民たちの顔つきはよそ者への敵意むき出しであった。
 
 一行の様子も様変わりしていた。リースを無視し始めたエイドリアンは、ウィンとの間でこれ見よがしにおしゃべりをはじめ、リースへの無関心を殊更際立たせる。二日目になると彼女はついにウィンの馬の後部に乗り換え、サークルに関する議論をふっかけはじめたが、ウィンは話がよほど過激にならない限り聞き役に徹していた。
 進路を注視しているエヴァンジェリンは、誰かと出会うたびに一行に合図を送って馬を止めさせ、相手をやり過ごした。相手も全く同様にこちらを警戒していることから、彼女の猜疑心が取り越し苦労でないことはわかった。
 
 モンツィマード(Montsimmard)の街から丁度西方にあたる地点で、盗賊らしき身なりの数名の人影が断崖のてっぺんから街道を見下ろしていた。迂回路もなく、周囲は身を潜める場所に事欠かないことから、エヴァンジェリンは前進を躊躇っていたが、相手は喜んで待つ構えであった。
 
 そのとき、幸運にも帝国の兵隊が現れた。紫のバナーを見つけたのはエイドリアンで、百名を優に超える兵士たちが近づいてくる光景にはリースでさえ思わず快哉を叫びたくなった。軍勢を率いる少数の馬上のシェバリエたちは、皆銀色の派手な鎧と、金色と緑色の羽飾りのついた兜を身に着けており、その騎馬すら馬飾り(barding)を装備していたが、その中には防護用というよりは装飾用にしか思えないものまであった。それでも威容であることに違いはなく、盗賊らしき人影は断崖の上から一斉に姿を消していた。
 
 断崖上の人影など歯牙にもかけず、歩を緩めることもしない軍勢の様子からみて、その出現が僥倖に過ぎなかったこともはっきりした。兵士たちは皆戦に赴くような面持ちであったが、リースにはそれが誰の戦争であるかわからなかった。気が変わった盗賊たちが戻ってくることを警戒したエヴァンジェリンは、帝国の軍勢が通り過ぎるや否や、一行を促して断崖の下を即座に通過させた。
 
 今や爪弾きとなっていたリースは、コールについて話したことを後悔し始めていた。道中執拗なほど振り返ってみてもコールの姿は見つからなかったが、気づかれないように追跡しているのかもしれない。エヴァンジェリンが彼の様子に気付き、ようやく二日ぶりにリースに言葉を投げかけたが、その口調の疑念は隠しようもなかった。
 
「見えない友人が後をつけてきているのね?」
「わからない。見えないんだ」
「おかしいと思わない?」
「もう追跡を諦めたのかも」
 
 エヴァンジェリンは、しばらくリースを見つめて思案しているようだったが、やがて首を振ると離れていった。
 
「僕の気が違っていると決めつけたいのだろう?」
「いいえ、自分が何かすべきかどうか決めたいの。誘惑に負けたメイジの処分は私の責務であるから」
「それで?」
 
 返答がなかったことが良い兆しかどうか、リースは思いあぐねた。自分の脳が何の影響下にもないという前提で楽観的に考えたかったが、コールの動向がひどく気になる。一行がまったく予期せぬ夜中などに、ふいに出現するのではないかと考えると背筋が寒くなった。
 
 ウェスタン・アプローチに近づくにつれ、乾いた土地が広がりはじめる。その地名が何に由来するのかリースには見当もつかなかった。化け物どもの跋扈するステップ地帯や、足を踏み入れた探索者が二度と戻れないくらい深く暗い森林以外、西方に「接近」(アプローチ)するものは何もない。荒れ果てた地(badlands)は誰かが「接近」するようなところではなく、せいぜい「脱出」してくる、正確には「逃亡」してくるところだろう。
 
 書物から得た知識によれば、この一帯は第二のブライトの激戦地だった。何世紀も前に大渓谷から湧き出してきたダークスポーンが、付近の土地を二度と復帰できないほどまで汚染して痛めつけた。その汚染が世界中に拡大することを食い止めるため、ここで血を流した沢山の男女にとっては、あたかも空が割れて黒き死が降り注いできたように感じられたことだろう。
 
 それにも係らずアプローチは奇妙な美しさを湛えていた。黄色に輝く熱い砂に覆われているのではなく、紫色の傷跡がまだらに残る冷たい砂漠である。砂の間から岩の柱が脆い骨のように突き出しており、それ以外は吹きすさぶ風に長い間覆われていたのだろう。禁断のおぞましい土地というよりは、荒涼としてどこか悲哀に満ちた光景で、まるで遠い昔に負った致命的な傷跡をこの世界が悼んでいるかのようだった。
 ウィンが指し示す彼方には、吹き上がる砂塵の影から背の高い鉄の塔が見えた。この荒れ果てた地の道標のひとつだが、次の道標が見つからなければ、砂嵐が納まるまで待つしかない。
 
 メイカーの威光も果つるようなこの地に誰が住みたがるのかとエイドリアンが問うと、ウィンは、大渓谷の縁にはダークスポーンの再来を監視するため建造されたグレイ・ウォーデンのアダマント要塞があり、ウォーデンがそこを放棄して以降も長く居残る者がいたという。このような地にも生命は息づいているのだ。ウィンが救おうとしている友人もそれに含まれると言ったリースのほうを見もせずに、ウィンは今回の任務について話し出す。
 
 ウィンの友人、ファラモンド(Pharamond)は、アダマント要塞付近のヴェイルが極めて薄いことに注目し、そこに逗留して実験を繰り返していた。トランクィルである彼が好奇心の類を抱くことはないので、その実験はチャントリーの求めに応じたものだったはずだが、それがトランクィリティの儀式に関するかどうかまでウィンが知るところではない。友人の手助けを求める目的でひと月前に要塞を訪れたウィンは、逆により切実に助けを求めている友人を見つけることになった。
 
 ウィンが目にしたのは要塞に巣食うディーモンの群れだったが、友人が変化した姿を察知することはできた。実際に遭遇すれば彼を殺さざるを得なかっただろうと語るウィンに、その代わりに我々全員を危険に曝すことになったとリースが皮肉を言う。息子を睨み付けたウィンは、いつか彼のことも同じように救うことになるかもしれないし、リース自身も窮地に陥った他のメイジを同じように救うはずだと考えたいと答えた。
 
 一行は荒れ果てた地に入った。ウィンによれば要塞まではまだ長い道のりがあり、風向きが悪ければ時間はさらにかかる。砂嵐の中の馬上行は永遠に続くかと思われ、道標の塔が朧に見えていなければ同じところで円を描いてしまったに違いない。
 
 途中、さほど遠くない先の尾根が綺麗に削り取られているのを見たエヴァンジェリンが剣を抜いた。リースがいくら目を凝らしても頂上にうごめく人影らしきものが朧に見えるだけで、それもすぐに姿を消した。
 ダークスポーンだとウィンが言う。ただし暗くなるまで仕掛けてはこないだろう。
 
 一行は先を急ぎ、まだ明るいうちに最初の塔に到着した。幾度も補修を重ねているはずの鉄の塔は今にも倒壊しそうで、てっぺんにはぼろぼろになったオリージャンの旗だったらしきものがはためいている。暗くなる前に第二の塔に到着するようにと一行を促すエヴァンジェリンの念頭にはダークスポーンのことがあるに違いなく、それ故誰も逆らわなかった。馬たちも周囲の気配を察知しているかのように時折たじろぎ、いなないた。  
 
 ふいに強風がぱたりとやみ、向い風に備えて馬上で前傾していたリースがつんのめりそうになる。夜には風が静まり返るとのウィンの物言いは控え目で、時折の一陣の風が砂塵を巻き起こしてすぐに止む他、周囲には静寂が訪れる。陽が落ちはじめた灰色の空は象牙色と赤銅色に染まっていた。
 
 砂嵐が止んだおかげで、リースは遠くの地面にぱっくり口を開けたぎざぎざの大亀裂を見ることができた。幅は優に一マイルはあり、その長さは見渡す限りどこまでも続いているかのようだ。
 ウィンによればそれがアビサル・リフト(the Abyssal Rift、深淵に続く亀裂、底なしの地溝)であり、西に向かえばさらに亀裂は広がっていくのだと言う。その深さは誰も知らず、ディープロードまで行き着くという説さえある。目的地の要塞は運よく亀裂のこちら側にある。
 
 ダークスポーンの襲撃を危惧するエヴァンジェリンが先を急かす。第二の塔は容易に発見できたが、夜見えなくなる前に到達しようとして一行が馬の速度をあげるので、リースは誰かが落馬するのではないかと不安になった。あたりが闇に包まれる頃、一行は塔に到着する。
 
 追跡されていないことを確認したエヴァンジェリンは、他の者たちにこの場所で野営すると告げた。寒さに凍えるエイドリアンは、塔の近くにあった焚火の跡を見つけて火を起こそうとするが、そうしたければ戦いの準備がいるとウィンが制止する。不満げなエイドリアンがリースの方を見て目を回してみせるが、彼も笑って肩をすくめるしかない。ここで焚火を用いたのはおそらく武装した集団だったのだろうが、リースたち一行にもダークスポーンの襲撃を押し戻す力がないわけではないだろう。ただし、周りにどれだけの数の奴らが蠢いているのか、リースは考えたくもなかった。
 
***
 
 野営地を抜け出し、寒さに震えながらアビサル・リフトの傍まで歩いて来たリースは、このあたりの空で初めて目にした不思議な光のリボン群が薄ぼんやりとあたりの地面を照らしていなければ、突然現れた亀裂の端に気が付かず、脚を踏み外して底なしの穴に墜落してしまったかもしれないと思った。
 
 何ひとつ物音がしない中、彼はこの亀裂を覗き込んで底には何があるのかと考えた。何も見えないが深さを感じることはできる。そこに飛び降りることを想像するのは、魅力的でもあり、だからこそおぞましくもあったが、以前コールが時折水の中を永久に沈んでいく感覚がすると言っていたことがふいに思い出された。
 
 エヴァンジェリンが完全に腹を立てていると告げる声に振り返るとウィンが立っていた。結局リースがこうやって自分を取り巻く物事はすべて悪い夢のせいだというふりをすることはできないのだ。エヴァンジェリンが野営地を抜け出したリースを追跡すると、今度はウィンとエイドリアンを置き去りにすることになってしまうため、テンプラーの代わりにウィンがリースの捜索を引き受けることにしたのだという。毛布で身体を包んでいても凍えそうなウィンは杖に強く寄りかかっていた。リースが立っているのが亀裂の前であると気がつくと、彼女は眼をみはって、一体何をしているのかと尋ねた。
 
 眠れないので絶景を見ていただけだとの答えにはウィンが納得していないようなので、リースは自分のことを怒っているのかと尋ねる。近くの岩に腰を下ろしたウィンは、コールの話について怒っているわけではなく、リースが身の破滅を招く道を敢えて選んでいることを危惧しているのだと答える。ウィンが介入しなければ今頃リースはトランクィルにされていただろうし、救いが必要なのはコールではなくリースのほうだ。何もせず手をこまねいていろというのかと問うリースに、ウィンはその通りだと反駁するが、またしても息子と口論している自分に気が付いて、目的を見失いがちな者にもう少し同情心を持つべきかもしれないと自戒する。
 
 リースは思わず笑みをこぼした。彼女の怒りの一部はリースが原因かもしれない。彼女には危険を顧みず友人を救う意思があるのかと疑念を示し、無情だと糾弾もしたが、いずれも正しくはない。口では逆のことを言いながらも、彼女は息子の身を案じているのだ。何年も前に出会った親切な老女から完全に変わってしまったわけでもない。
 
 口を開こうとしたリースは口笛のような小さな音を聴き、自分の胸に何かが突き刺さったことに気が付いた。見下ろすと自分の胸から黒く不気味な形の矢が飛び出しているのがわかった。そんなバカな。
 
 ウィンがリースの名を叫び、座っていた岩から立ち上がる。ダークスポーンはどこからともなく不意に現れた。その青白い化け物どもは牙を剥き出しにして耳障りな声をあげ、粗末な剣を振り立てて襲ってきた。衝撃で身体が麻痺したリースは、現実離れした感覚でそれを見つめるしかなかった。化け物の目と口は妙に黒々としており、目にはどんよりとした憎悪が見て取れた。時の流れがカタツムリの歩みのように遅く感じられた。
 ウィンが振りかざした白い杖から発せられた強い光が、リースを麻痺から解放し、ダークスポーンどもをたじろがせた。動こうとしたリースは胸の痛みのため膝から崩れ落ちた。何もかもが緩慢な動きにしかならず、流砂に飲み込まれようとしているようだった。
 
 ウィンが電撃の嵐を巻き起こすと、雷鳴がリースの耳をつんざいた。化け物の一匹が稲妻に直撃され、悲鳴をあげながら内側から焼かれていった。怒りに燃えてウィンのほうに突進した一匹は、すぐさま凍り漬けにされ、粉々に砕け散った。
 
 リースは自分の傷の痛みに構わず、ウィンに飛びつこうとしている化け物に魔法のエナジーを解き放つ。吹き飛ばされた相手はそのまま亀裂の底に消えていき、その恐怖の悲鳴はやがて雷鳴にかき消された。
 後頭部を強く殴打されたリースが飛び退こうとすると、相手に後ろから肩を掴まれ、鋭い爪が肉に食い込む痛みにリースは悲鳴をあげた。ウィンが即座にエナジーのビームで相手を吹きとばす。自由になったリースが地面に倒れたとき、胸に刺さった矢の軸が途中で折れ、新しい激痛とひどい吐き気に見舞われた。
 
 一体敵は何匹いるのだろうと考えるうちにリースの気が遠くなっていく。雷鳴も遠く聞こえるようになり、ウィンの青いローブがちらと見え、次にはブーツが目の前にあった。周囲では稲妻が闇雲に踊り、魔法に撃たれた敵がまた一匹悲鳴を上げる。ダークスポーンの流したどす黒い血の池からつんとする嫌な臭いがする。ウィンを一人きりで戦わせるわけにはいかないと、リースはもう一度魔法を放とうとするが、激痛のためうまくいかない。起きなさい、まだ敵がやってくるというウィンの声を耳元で聴いたのを最後に、やがてすべてが虚無の至福の中に包み込まれていった。

2013年8月26日 (月)

風立ちぬ、エヴァ展、PC臨終。

 日曜日午前中外出の準備がてら濃霧の中の総合火力演習のライヴ映像をメインPCで観て、午後からずっと映画とヱヴァ展を観るため銀座まで出ていて、帰ってきたらそのPCが逝っていました。合掌。酷使したせいか3年持たなかった・・・。

 ここのところ目ぼしいPCゲームも出ないことだからこの際まあいいかとは思いつつも、タブレット(Kindle)やスマホでネット閲覧もやっぱ悲しいので、HPのごく普通のミドルタワーを泣く泣く注文することにしました。旧人類。いくら値引きされてもSurfaceに手を出す勇気はなかった。

 DAなどのセーヴファイルはバックアップされているから心配ないとしても、ネットワーク周りなどの面倒な作業を考えると、毎度毎度買い替えは憂鬱な気持ちになります。考えてみればグラボ搭載用の箱としての意味だけしかないこんなでかいもの、普通の人はいらないのだろうけど。
 
 オフィス用の汎用機を除けば、ゲーミング以外で高いPCを買う人は誰もいない。どこの家庭でもiPadやらタブレットやらを使っているうちに、昔買ったPCは静かにご臨終になっているはずだし、そのことすら誰も気にも留めていないと思う。

 MSのバルマーちゃんもついに引き際を考えざるを得なくなったようですし、iPadなどAppleも大失速中。一世を風靡したDellのデル氏までTOBに恐れおののくことになってしまった。元気な話題が伝わってくるのはハードウェアとほぼ無縁だったOracleのラリーちゃんくらい。
 神話と伝説の時代もそろそろ終わりそうですねえ。

 主人公のモデルとラヴ・ストーリーのモデルになった小説のこと以外はほとんど予備知識なしで「風立ちぬ」を観ましたが、相変わらずモブ(群衆)シーンの見せ方は圧巻です。航空機の話とは思えないくらい当時の汽車、路面電車などがこれでもかというくらい登場するのも、好きな人にはたまらんのでしょう。鉄道だけにはまったく興味のない私はちょっと辟易しましたが。

 それもそのはずで、当時世界中で実在していた航空機の多くは軍用機ですから遠慮して出せない。一式戦(隼)は中島に取られたという話題などもさらっと出てくるだけ、燃えやすい葉巻型ライターと呼ばれた一式陸攻(らしいもの)にしても一瞬だけ出ただけで、本庄技師の劇中の発言も意味わからん人が多かったと思う(この燃えやすさのイメージは、そのまま「ナウシカ」のガンシップに繋がってるのでしょう)。なによりも、映画の外の情報で主人公は九六戦、零戦の設計者がモデルであると知らないと結局何が何だかわからないってつくりなんですよね。たぶん九六戦の試作機を零戦のそれと勘違いしちゃった人も沢山いたのでは。もちろん制式採用されなければネーミングもつかないので、それがリアリティっていうならそうだけど(劇中、堀越技師が同僚に対して「今は手が出ない」と言って一旦断念したのが零戦のコンセプトでしょう)。

 以前「もののけ姫」談義で意気投合したことがある連れの女性も、今回はその手の成分がほとんどないのでかなり戸惑っていた。もちろん色々隠されてはいる。夢の中の航空機から俯瞰する東京の街並みの場面で、沢山の女工さんたちが狭い宿舎の窓から犇(ひし)めき合って見上げているのは、後に大震災で大変な被害を受けることになる工場か被服工廠のイメージかな。それと避暑地をはじめとした上流階級の姿(バイリンガル、トライリンガル当たり前)と、くうや食わずの庶民との接点をほとんど避けて描かないことで逆にそういうご時世だったんだなと思わせるなど。でもそこにもかなりの遠慮があった気がする。

 たぶん、震災とそれに端を発するラヴ・ストーリーだけが残酷な現実で、本当は触れざるを得ない諸々の事柄は「夢の中のこと」にしたかったんだろう。言うならば「生き続ける」ことが現実で、「戦火で死ぬ」ことは夢まぼろし。そうしないと描けなかったんだろうと思います。
 というか遠慮しまくっているのは、作り手が年取ったせいだろうかね。

 個人的に印象深いのは、劇中描かれる震災後の街中の光景が、戦後しばらく時間が経っていたはずの自分の子供時代のものと大して変わらないところ。劇中(まだ学生の)本庄氏に「震災で何もなくなったのに、何も考えず前と同じような街並みを復活しようとしている」と言わせているのですが、結局「戦後も変わらんじゃないのか」という意味なら確かに分かる気がします。この国はきっとそうやっていつまでも変わらないという意味なら、その一点だけなら宮崎駿にアグリーする。

 映画の後で向かったエヴァ展は、最終日前日の日曜日だったため入場待ちの長い行列に並ばされる羽目に。ふたりばらばらに携帯ゲーム機とスマホゲーで時間を潰す。よく考えたらKindleもバッグに入っていたし、昔は暗い映画館内で行列に並ばされると文庫本を必死に読むくらいしか待ち時間を過ごす手段がなかったのに比べれば本当に楽になった。充電器必携だけどね。

 ようやく中に入ると、なによりも入場者の年齢層の高さに驚く。ごった返している会場内にお子ちゃまは本当に二、三人しかいない。いや、中高生すらほとんどいなかったような気がする。映画同様、こちらも予備知識なしで連れに引きずられるようにして行ったので「なんのこたない原画展じゃん」と気づいたときはもう遅い。コンテとか設定資料とかあまり観たことのない連れは面白がっていたが、私は二、三の新東京市の背景設定デッサンが面白かったくらいで、ぼったくりかと思うくらいお値段の高いグッズを買おうかどうか思案している連れを我慢して待っていました。結局ふたりとも大したものは買わなかったけど。

 もちろん若かりし頃には、横山(光輝)先生など著名作家の原画展(あの人はなんと普通の画用紙を用いていた)とか、どうでもいいようなスタジオのどうでもいいようなセル画(キャラの手足などパーツしか描かれていないのがほとんどである)が沢山飾ってあるアニメ展のはしりとか、開催されると知れば意地でもダチと一緒に出向いて行ったものだが、もういいや(笑)。

 振り返れば総火演、「風立ちぬ」、ヱヴァと、随分とミリタリーな一日であったが、若い頃と違ってもう兵装がどうした、性能がどうした、あの細部は後期モデルで改変されているとか、そんなことはどうでもよくなる(もちろん昔は九六戦と零戦を見間違うとか決してあり得ないと考えていたが、それすらまあいいかだ)。ただし「ヒトマル戦車がどこぞの国の戦車と一対一で戦ったらどっちがつおいの?」とかいう元々意味のない質問などに触れると憎悪の念が湧くけど。くだらないヴィデオゲームじゃねえんだから。

 宮崎駿自身もメカのディテールにこだわるので勘違いされやすいが「そんな兵器オタクみたいな発想好きじゃない」みたいなことをどこかで言っていた。だから作中の兵器はデザインも何もかもぼやかしていたんだろう。今ならそれもアグリーできるかな(なんだ、一点だけじゃないじゃねえか)。

2013年8月25日 (日)

【DAI】新コンセプト・アート(8月22日)

 新コンセプト・アート。

Seekthelight

 光追い求めよ、闇もっとも深きところ邪なものら蔓延(はびこ)るが故に。

 Seek the light, for the wicked take root in the darkest corners.

***

 最近のコンセプト・アートのキャプションは、聖書をリファーしてるんじゃないかと思うようなものが多く、(そうじゃないことを確かめるため)調べるのが結構面倒。"Seek the light..."からはじまるこれも、もろにクリスチャニティの教えと読めてしまいますものね。 

 そして、そっちに無いことがわかったら、今度はDAの「チャント・オヴ・ライト」にあるかどうかを確かめる。これもない。

 "the wicked"はDA2イザベラのクエストにありましたね。"No rest fore the wicked" 

 旧約聖書、「イザヤ(アイザイヤ)書」48:22。

 イザヤ書の出回ってる日本語訳は「神に逆らう者に平和はない」。
 イザベラ編には宗教的な意味合いはなく、そのまま使えないので「悪党どもには平安がない」的な意味としていた。
 

 今度は、闇に蠢(うごめ)く存在、闇に蔓延るというのだから邪なものら(集合名詞の複数形ですね)のことでしょう。「者」だとヒューマノイドになっちゃうけど、DAIの場合はそうではないだろうから「もの」で「存在」のつもり。

 たった一行にどんだけ時間かけてんだと。でも、むしろそういうもんですよね。 

 

 

2013年8月24日 (土)

カテゴリーにAsunder追加

 インターヴァルを開けると、前章がどこにいったか探すのが面倒になるので、カテゴリーに"Dragon Age Asunder"を追加しておきました。
(自分の愚痴の記事はそのカテゴリーに入れないことにします(笑)) 

 宿屋の酒場と言えばブロウル(殴り合い、乱闘)がお約束ですね。ジモ民がエヴァンジェリンたちにつけてくる難癖には「うちの飼い犬もメイジに殺された」というトンデモないものまであるのですが省略。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、ってやつ。

 ゲーム内の表現では、テンプラーのマジック・スポイル(魔法潰し)の能力がいまいちピンと来ていなかった(というか正直あまりテンプラーの能力を使ったことのない)私ですが、エヴァンジェリンがメイジに対抗するとき用いているのは自分を取り巻く「オーラ」なんすね。するとこれもやっぱり、完全に「魔法」の一種であるわけですから、フラクタリの呪文同様、チャントリーが「魔法」を使っていることになる。ゲイダーさん言うところの「偽善」なわけです。   

 なお、作中で女帝と大公の間の確執に触れる場面は、前回の7章を除くと、後はほとんどありません。オーレイ市民戦争の詳細は小説"The Masked Empire"に譲るということなのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【DAI】Dragon Age Asunder (7)

 エヴァンジェリンは、同行者の間の張りつめた雰囲気に辟易しはじめた。

 メイジたちの嫌悪は、お目付け役テンプラーの自分よりも、むしろお互いに向けられていたのである。リースとエイドリアンは馬上で時折ひそひそと話し合うが、彼らと老婦人との間に会話は一切なかった。

 ウィンとリースが親子であることはエヴァンジェリンを含めたテンプラーたちにも知らされていなかった。メイジは幼くしてチャントリー孤児院に引き取られ、相応の年齢でタワーに送られるのが習わしなので新生児は想定外だ。リースがどうやって母の素性を知ったか謎だが、いかなる隠し立ても通用しないシーカーズなら承知していたのだろう。

 だがこの親子の関係は睦まじいものではなかった。エヴァンジェリンは、自分が騎士団に入団する前にこの世を去った自分の母のことを思った。年頃の女性が嗜むべき踊りも、音楽も、良人探しのための集いさえ厭い、帝国のシェヴァリエであった父から剣術や格闘技を学ぶほうを好んでいた娘と、娘にオリージャン女性としての普通の幸せを手に入れるよう願っていた母の間には諍いが絶えなかった。母がこの世を去ったとき、娘の心には彼女と生前疎遠だったことへの悔いだけが残った。

 父がこの世を去ったとき、一人娘の彼女が一家の地所を相続するには夫が必要だった。騎士団長イーロンからは家を継ぐため退団するかどうかの意思を質された。群れをなしてやってきた求婚者たちは、他に財産を手に入れるあてのない金目当ての独身貴族ばかりだったが、そうでなくても決断は難しかっただろう。一家の在所は叔父が引き継いだが、やがて彼が賭博でこさえた借金のかたにネヴァラの商人の手に渡ってしまったと知って、エヴァンジェリンは悲しんだ。

 今や彼女に残されたものは、世界を魔法の脅威から守るという自分で選んだ使命のみである。テンプラーはメイジから嫌われても、畏れられてもいた。サークル・オヴ・メジャイ抜きでどうしてメイジたちを律することができようか。ロード・シーカーの言うとおり、秩序は維持されなければならないのだ。 

 ホワイト・スパイアの安寧から遠ざかること四日が過ぎていた。エヴァンジェリンは用心のため街道沿いを避けて進んだが、そこも帝国のハートランズ(the Heartlands、中核地帯)であることに変わりはなく、往来する商人、巡礼、農夫、徴税人、エルフの農奴などの群れが途絶えることはなかった。だが、いつもなら脇道でさえ必ず目にする紫のバナー(紋章旗)をたなびかせた帝国の手の者の姿だけが見えず、一行が巡邏の兵に呼び止められることもなかった。

 ヴァル・ロヨーを出た三日目には遠目に黒煙があがるのが見え、通りすがりのドワーフ商人二人組からヴァル・フェレイ(Val Feret)の暴動について噂をきいた。ハートランズの外では事態はなお悪く、夜盗や、領主が編成した強制徴税兵に対抗するため、民衆は民兵を編成せざるをなくなっているという。一行はさらに、持てるだけの荷物をかき集めて避難する疲れ切った民衆の群れに出会った。彼らに尋ねても、東部で戦っている当事者たちが誰かはわからなかった。

 オーレイでは平時でも報せが緩慢にしか伝わらないのは承知していたが、エヴァンジェリンは、外部の事情がホワイト・スパイアに何ひとつ伝わってこなかったことに困惑するしかなかった。様々なゴシップが渦巻く首都においてさえ、女帝への不満やハラムシラル(Halamshiral)でのエルフの叛乱話については良く聞かされたが、市民戦争のことなど誰一人おくびにも出さなかったのだ。

 エヴァンジェリンは宿に泊まることすら避けることに決め、街道の宿で野営用の資材を手に入れた。野宿を強いられると知ったエイドリアンとリースが不平を漏らすが、ウィンはブライトとの戦いの間は野宿が当たり前だったことを思い出して懐かしそうであった。
 野宿最初の夜は雨で、翌朝の地表には薄氷が張っていた。空の様子からみて、一行がウエスタン・アプローチ(the Western Approach、西部砂漠地帯)から帰還する頃には間違いなく降雪があるだろう。

 エイドリアンが小声で絶え間なく漏らす悪天候への不満で気持ちを逆なでされ続け、この赤毛女の独善的憤慨への我慢も限界に近付きつつあるエヴァンジェリンは、いっそ雨がもっと激しく降らないかと祈った。

 先ほどからたった三分も経たないうちに、エヴァンジェリンはエイドリアンから三度目の同じ質問を投げかけられた。

「どうしてこの道を進むの?」
「ヴァル・フェレイを避けるためよ」
「まさか、さっきの宿無しの酔っ払いの話を信じているわけ?」
「酔っ払いでも、バカと決まったわけじゃないわ」

 ふたりのやり取りに、ウィンが突然割り込んできた。

「かつて私が知っていたドワーフは、素面でいるより酔っぱらっているほうがふつうだった。それでも、彼はびくともせずにダークスポーンを真っ二つに斬り捨てていたわね」
「へえ、すごい」 エイドリアンは眼を回した。
「つまり、素面じゃなくてもできることがある。自分の故郷が安全じゃないと知ることもそのひとつ」

 そこまで事態が悪化しているのに、帝国の軍勢が一向に姿を現さないことにリースが疑問を呈すると、ウィンは、大公ギャスパード・デ・シャロン (Grand Duke Gaspard de Chalons)の女帝への謀反により内乱がはじまっているとの考えを披露した。首都にいる間、エルフの叛乱の噂以外に何の話も伝わっていなかったと反論するエヴァンジェリンに、ウィンは、腹心が集まっている宮廷から女帝セリーン一世(Empress Celene I)を誘(おび)きだして待ち伏せする策略であろうという。

 エルフ叛乱の噂はその餌に過ぎず、またそれに対処するつもりの女帝は身の回りに必要最低限の兵しか伴わないはずだ。大公は女帝の取り巻きのシェヴァリエに内通者を埋伏させているかもしれない。いずれにしろ、素早く一気に強打を与えることで大公側は自陣営の強大さを誇示できるし、帝国内部の混乱が増すほど、女帝側は弱体化して見え、宮廷内部の動揺も増す。

 エヴァンジェリンは、あの夜ディヴァインの暗殺が成功したら、事態はいかほど悪化したのだろうと思いを巡らした。帝国の半分が挙兵するに違いなく、それを思えば結局のところメイジは無辜な存在でもなんでもないのかもしれない。

 エヴァンジェリンから見て、しかめ面のエイドリアンはその内心を読むのが難しかったが、リースは心穏やかでないことが見て取れた。自分が誰かを暗殺しようとするなら、疑いの目が他に向くように画策するはずだ。サークル内部に叛乱勢力があるとして、その連中があからさまにチャントリーに食って掛かるはずがないことに他のテンプラーたちはどうして思い至らないのだろうか。

 殺害事件については別で、暗殺とは独立しているのかもしれない。ロード・シーカー・ランバートは事態を大局で見るように要求しており、策略の中に別の策略を見よという立場だ。曇りない目で事態を見ることは確かに一考に値する。

 エヴァンジェリンから内乱の事情に妙に詳しい理由を尋ねられると、ウィンは現にギャスパードから叛乱に与するよう誘いがあったからだという。彼女の動向を察知した大公は、手の者をやってフェラルデンとオーレイの国境付近ジェイダー(Jader)の街で彼女を拉致させた。彼女は大公たちから叛乱への加担を強要されたが、ウィンによればギャスパードは、自分が昼と呼べば夜も昼になると考える尊大極まりない男であった。
 ウィンは誘いを断って逃げてきたとあっさりいうが、大公ギャスパードは癇癪もちで悪名高く、この老婦人が背負った因縁の根深さはエヴァンジェリンも想像するしかない。

 エイドリアンから叛乱に関する他の情報を問われたウィンは、たとえ知っていても答えないだろうと応じた。理由のひとつは、彼女はフェラルダン(フェラルデン人)であるから、オーレイの騒乱の顛末がどこに行き着こうが知ったことではないこと。またもうひとつは、騒乱が拡大するにつれてメイジの交渉力が増すからだ。リースも気が付いているように、事態が混迷を極めれば両陣営ともメイジ・サークルを味方に引き入れようとするに違いない。それにより多くの無辜の命が喪われると批判するエヴァンジェリンに対し、ウィンは、もうすでに多くが喪われているとやり返す。

 過去数次にわたるブライトとの戦いでも、エグザルテド・マーチの遠征でも、メイジの貢献は大であったが、サークルがその武勲の恩恵を享受したことは一度もない。エヴァンジェリンは、それが故にメイジが愛国心から内乱に参戦することはないと踏んでいたが、傭兵の立場で参戦することも受け入れ難いと感じていた。リースもまた同じ気持ちでウィンのほうを睨んでいるようだった。

 空がさらに暗くなり、遠くから雷鳴が聞こえた。寒さに耐えきれずに毛布にくるまったエイドリアンがようやく静かになったのはよしとしても、エヴァンジェリンはこれ以上天候が崩れるのは望んでいなかった。珍しくウィンがエヴァンジェリンのほうに馬を近づけてきて、ここを過ぎれば行く先に人里などないので、悪天候を避けるため付近で宿を取るように促した。しばし黙考した後、この先にある自分が育った街なら安全だろうというエヴァンジェリンの考えに同意して、ウィンはまた乗馬を後方に下げていったが、その口調には、この任務においてテンプラーは単なる護衛で、物事を決めるのは自分だという意思を言外に含んでいた。

 やがて見えてきた果樹園や農地、また遠く西に見えるブドウ園は、領主の庇護のもと何世代にも渡って働いてきた男女が世話をしているが、中には「貧者の地主」と呼ばれる自由地主もいる。エヴァンジェリンの父もそのひとりで、金に困った女男爵から買い取った自分の領地を誇りに感じていたようだった。若い頃のエヴァンジェリンは果樹園で遊び、夏になれば付近のセレスティン湖(Lake Celestine)まで出向いていってその美しさに見とれたものだった。このまま父の旧領地に訪れていったら新領主が自分を歓迎してくれるだろうかと考えたが、思い出したくない諸々の記憶をそのままにしておくためには、そこに近づかないのが得策であろうと思い直した。

 一行がヴェラン(Velun)の街に到着した日暮れの頃、ちょうど強い雨が降り始めた。街並みはエヴァンジェリンの記憶とさして変わらなかったが、唯一風変りだったのは路傍に置かれた三つの鉄の檻であった。囚われている三人のうちふたりは既に死んでおり、もうひとりも間もなく後を追うようだった。レイピストとシーフふたりだという彼らの罪状が文字ではなくルーンで示されているのは住人の多くが文字を読めないためだと知り、リースは、サークルでは当たり前に享受できる教育が、外の世界では一部の裕福な者の特権であることに気がつく。

 街といっても、ヴェランは中央広場を囲んで建物がまばらに並ぶだけの集落であり、悪天候の今夜は人っ子ひとり外を歩いていない。寒さと雨に耐えて一人きりで立っている衛兵はよそ者と見て当初一行に興味を示さなかったが、エヴァンジェリンがかつての領主の娘であったことがわかると態度を変えた。彼女が尋ねた古くからあった宿屋は火事で焼けてしまったと告げ、代わりに新しい宿屋までの道案内をしてくれた。そのやり取りを聞いて、貴族の出自だったのかとからかうリースに、エヴァンジェリンは小奇麗なドレスを着るより、剣を振り回すほうが好きな子だったと答える。地元の舞踏会ではさぞ見ものだったろうとのリースの言葉に、彼女は思わず笑みをこぼす。

 オーレイの街道沿いでごく普通に見かける類の宿屋からは、客の笑い声と調理された肉の匂いが漂い、エヴァンジェリンに自分がひどく空腹であることを思い出させる。嵐のように降り注ぐ風雨の中で馬を下りた一行は宿に駆け込んだ。

 宿の酒場は一瞬で静まり返り、その様子に一体何事が起きたかと奥からでっぷり太った男があわてて顔を出した。珍客たちの素性がわかると、他の客たちにはテンプラーもメイジも珍しくもないから気にするなと告げる。店主は、金払いのいいチャントリーの上客はいつでも歓迎だと言って、エヴァンジェリンが一晩の宿を申し出ると快諾し、四人が食事をとれるようにテーブルの席を用意した。一行は暖炉の傍で雨水で重くなったクロークなどをようやく脱ぎ捨て、寛ぐ準備をした。他の客たちは自分の酒に注意を戻したが、彼らの何人かがこちらを睨み付けていることにエヴァンジェリンは気が付いていた。

 店主と同じ体型から親子であることが知れる給仕の娘に、リースは早速ワインを注文する。サークルの酒蔵いっぱいにワインの在庫があっただろうにと驚くエヴァンジェリンに、リースは小便臭くて誰も飲まないから在庫になってるんだと毒づく。エヴァンジェリンたちテンプラーはいつもそれを飲んでいたのだが。エヴァンジェリンよりも潤沢な資金を携えているらしいウィンは、かつてオーザマーを訪れたときから病みつきになったという非常に高価なドワーヴン・エールを注文してエイドリアンを驚かせる。エヴァンジェリンの知る限りそれはエールでもなんでもなく、カビかキノコの類から抽出した極めて強烈な酒だ。エイドリアンは老婦人の向こうを張って同じ酒で飲み比べを挑む。ウィンはシチューなどの料理も注文し、酒量の進んだ一行は次第に口が滑らかになっていく。

 リースにワインで付き合うことになったエヴァンジェリンは、シチューには手を伸ばしたものの、酒量はできるだけ抑えるように心掛けた。周囲の客たちはまだ緊張した雰囲気のままで、宿屋の外で耳にした楽しそうな歓声はついぞ上がらなかった。

 ウィンは、フェラルデンの英雄ウォーデンとともにアーチディーモンを打ち破った武勇伝を披露してエイドリアンを愉しませていた。ウィンと英雄ウォーデンとの出会いは、フェラルデンのサークル・メイジがごく少数を除いてディーモンに憑依されてしまったときであったことも話題にした。

 追加の酒を注文するため立ち上がろうとしたエイドリアンの様子は泥酔に近く、よろめいて倒れかけた身体をリースが支えた。彼女が自分に頬を寄せようとするのを嫌がるリースの様子を見て、ウィンはふたりの関係が自分が思っていたようなものではなかったのかと驚く。そんな関係ではないと言下に否定し、余計な口出しをするなと告げるリースに、酒の力も借りたのか、ウィンは四十年近く前のテンプラーの男性との関係をあっさり告白し、一同を吃驚させる。若気の至りもあったと救いを求めるようなウィンからエヴァンジェリンは眼をそらし、エイドリアンは面白がる。当のリースは心穏やかではないが、テンプラーを皆悪魔のように扱うのは寄したほうがいいと生みの母に諭され、エイドリアンはその親子の様子が愉快だと言ってまた大騒ぎする。

 一同のテーブルに顎髭が伸び放題の巨漢の男が近づき、メイジがディヴァイン猊下を暗殺しかけたとの報せのこと、先日この街でも魔女の娘のせいで納屋と自分自身の身体を焼かれた男がいたことを告げると、周囲のテーブルの地元客たちの何人かも椅子から立ち上がりはじめた。不安げに様子を見ていた店主は、娘を連れて厨房に隠れてしまう。目を細めて喧嘩腰のセリフを吐いたエイドリアンの両手から青白いオーラがあがるのを見たエヴァンジェリンは即座に彼女に飛びかかり、その首に腕を回して締めあげ、オーラで魔法を無力化する。それからエイドリアンがさらに何かをしようとする前にその身体を床に投げ飛ばした。

 背後に大男が近づく気配を察したエヴァンジェリンは、男の太い片腕を取ると、身体を回してそのまま相手の背中を突き飛ばす。怒りに任せて突進しようとする男の喉元に今度は抜き身の剣を突きつけた。
 無辜のメイジをリンチから守るのが自分の使命だと告げる彼女に対し、男は周囲の者を煽るように、ディーモンに憑依されて悲惨な事態を惹き起こしてしまったメイジたちの話を数え上げていく。

 過去の戦からオーレイの民を救ったのは他ならぬサークルの者たちだとエヴァンジェリンが返すと、自分を助け起こしたリースの腕を振りほどいたエイドリアンがその尻馬に乗って叫び出そうとする。逆にエヴァンジェリンは自分たちだけが悲惨な目に会っているなどと思うなとメイジを遮る。

 騒ぎをずっと見守っていたウィンが、一行を取り囲む群衆たちに対してこの場を穏便に済ませるよう懇願すると、男たちは何かを口ごもりながら店からぞろぞろと出ていき、騒ぎはようやく納まった。唯一エイドリアンだけが、自分に好き勝手やらせなかったエヴァンジェリンに食って掛かるが、ウィンとリースはテンプラーがその場を納めた手際に感謝しているようだった。

 騒動が終わった頃合いを見計らって奥から出てきた店主に、エヴァンジェリンは酒代と迷惑料込みの金貨を渡す。それから先ほど予約していた客室を断り、馬小屋の干し草置き場を宿代わりに使う許可を得た。店主はさらなるイザコザの可能性と受け取る金貨を天秤にかけているようだった。

***

 酔って眠りこけたふりをしていたリースは、住民のお礼参りを警戒していたエヴァンジェリンがうたた寝をはじめた頃を見計らって、干し草置き場から忍び足で外に出た。深夜の街中に人通りはなく、ひとりきりの衛兵にも見とがめられないようにして、彼は周囲を探し始めた。

 二軒の商店に挟まれた暗い路地に人影を見たリースは、追いかけた先でずぶ濡れのままうずくまっているコールの姿を見つけた。
 リースが、自分たちを追跡する者の気配を感じはじめたのはつい前日からであった。エヴァンジェリンは気が付いていないようだったので、答えはひとつしか考えられなかった。リースは、自分がひとりでうろつく姿を彼女や街の住民に見とがめられる危険を冒してでも、それを確かめずにはいられなかった。

 コールはリースに警告を与えるため追ってきたと告げ、ロード・シーカーとエヴァンジェリンの間で交わされた秘密の会話について話した。コールは道中リースたちの姿を見喪うことも恐れていたが、今やホワイト・スパイアから余りにも遠く離れてしまったので、自力ではそこに戻れなくなったことにも慄いていた。リースは自分でも気が付かないうちにこの若者のことを気の毒がっていた。攻撃されることを覚悟していたコールは、リースにそんなつもりがないことがわかると、彼にしがみ付いた。リースも強く抱き締め返すしかなかった。殺害事件の犯人とはいえ、今まで誰も彼に魔法を抑制する方法やそうすべき理由について教えてこなかったのだ。彼が恐れおののき途方に暮れていることは、リースもその心の一部で理解していた。

 だがコールをこの先伴うことはできない。ここまでの道中おそらくそうやって凌いできたように、彼が人知れず食糧を掠め取ることのできる相手など、誰ひとり出会うはずのない土地にこれから向かうのだ。ホワイト・スパイアに帰るように告げられたコールは、自分はリースを守るためそばにいなければならない、もう誰にも彼を傷つけさせることはしないと誓って、暗闇の中に姿を消してしまう。

 果たしてコールはエヴァンジェリンを傷つけようとするつもりだろうか、そうすることで自分にさらなる災厄をもたらすのだろうかと不安がる一方で、リースは若者が自分の前に再び姿を現してくれたことに安堵した。だがこの先コールの殺害を止めることができないなら、流された血はリース自身の手に塗りたくられているのと違いはない。若者が化け物ではないとしても、危険な存在であることに変わりはないのだ。リースは、コールがこのままタワーに帰ってくれることを祈っていた。

 馬小屋の前にはエヴァンジェリンが腕組みをして立っていた。用を足しに出たというリースの嘘を一蹴し、リースが今ほどチャーミングでなければ、それは間抜けな犬がチャーミングだくらいの意味しかないそうだが、命が幾つあっても足りないだろうと揶揄する。外に出た理由を白状しなければ脱走を試みたとみなすと迫る彼女に対し、リースはコールの警告を念頭に、彼女の任務はメイジたちの警護ではなく、ロード・シーカーの命によりテンプラーの権益を是が非でも保全することにあるのだろうと反論する。エヴァンジェリンは、全体善のためならば無論そうするつもりだし、そんなことはウィンも承知しているはずだと答える。各人に何の恨みもないが、たとえメイジ三人を一遍に相手にする勝ち目のない戦いの必要があっても、彼女はテンプラーとしての義務を遂行するつもりなのだ。

 抜け出した理由を再度問われたリースは、たとえもう一つ言い逃れの嘘をついていると決めつけられたとしてもこれ以上事態が悪化することはないと考え、エヴァンジェリンにコールのことを正直に告げる。エヴァンジェリンは、タワーではゴースト・オヴ・スパイアと噂されていたその存在が実際にはディーモンで、リースはその影響下にあるのではないのかと疑うが、一方ではタワーでの諸々の騒ぎと辻褄があうので真実の可能性もあるとも考える。これからも彼への監視は怠らないが、今はウィンたちを警護するのが最優先だと告げ、寝床に戻るよう促す。その場で斬り捨てられるかもしれないと思っていたのに、テンプラーにしては物分りがいいと言うリースに、酔っ払いから褒められてもうれしくないと返してエヴァンジェリンは馬小屋の中に戻る。

 外に残されたリースは、あの鎧の下にあるのはどれだけ美麗な女性だろうと勘ぐるが、同時に相手がテンプラーであることを思い出して背筋が寒くなった。

 リースは、自分が願ったとおりコールがタワーに戻っただろうかと考えた。あの若者が追跡を続けることにしても、彼に止める術はないのだが。

 メイカー、我ら皆を救いたまえ。

2013年8月22日 (木)

【DAI】メイジ・テンプラー・ライヴァルリー(2)

 前記事の続きです。

***

戦いは続く

 DAIの開幕で、チャントリー、テンプラーズ、そしてメイジたちは騒乱の招いた事態をまず見極めることになる。メイジはチャントリーからの独立を宣言し、サークルから解放される。テンプラーズは監視下にないメイジたちの行動に恐怖を感じ、彼らを狩り立てようとする。だが同じように事態への不安を抱いているチャントリーは、なんとか平和裏に解決したがっている。テンプラーズはチャントリーの煮え切らない態度に憤り、ついに袂を分かつことになる。「もちろん街中でテンプラーズがメイジたちを狩り立てる様子が描かれる。DAIはそれが全てではないが、それが取り掛かりになる。世界は崩壊しつつあるんだ」とゲイダー。

 DAIでは、緊張関係は以前にも増して高まり、安全な者は誰もいない。DAの小説Asunderの読者なら、あそこにはメイジ・テンプラー抗争の三年後の状況、すでに世界に混沌が訪れていることが描かれているのはご存じだろう。「秩序を維持するための装置をみなぶち壊したんだ。オーレイ政府にしても、Asunderの最後には内乱状態に見舞われている。世界最強の帝国ですら事態に対処する力はなく、そうした事柄全部がDAIの描く世界の当初の状態に関係している。つまり我々は手持ちのアヒルを全部並べて見せているわけだ」とゲイダーが言う。

 だが今回は過激な思想についての話ではない。両陣営の最悪の姿はもう十分見てしまったので、今度は異なる部分に眼を向けることになるのだ。「DA2の大きな意義は、過激派が登場するとどれだけ悲惨な状況が生まれるかをプレイヤーに見せることだった」とゲイダー。「DAIでは自分たちが真っ当(right)だと考えている人々をお見せしたいと思っている。『自分は過激派で、その主張はまわりの連中には理解されない』というような立場ではなく、善の立場に立って『自分の立場こそ倫理的に正しい(morally correct)』と主張するような者たちだ。そうすることで、同じ主張をしているように見えるキャラクターたちが実は異なる観点からそう述べていることが理解できるように、視野を拡げることができる」

 多くの者が覚えているように、チャントリー・シーカーのカッサンドラは、メイジとの抗争を避けるためにホークの消息などに関してヴァリックを尋問していた。「今度はその理由についても詳しくわかるようになる」とゲイダーが仄めかす。「彼女は単に調査していただけではなく、隠された意図を有していたのだ。DAIでそのことが明らかになるだろう」

 カッサンドラとヴァリックはパーティー・メンバーとして公表されたが、我々はカッサンドラについてDA2の任務以上のことは詳しく知らない。それもDAIでは明らかになる。「ある程度までは、カッサンドラがDA2のどのキャラクターに比べても変貌を遂げることになるだろうね」とレイドロウ。
 カッサンドラは今まで変わらずチャントリーを支持してきたが、ヴァリックの尋問後、両陣営の主張の立脚点をつぶさに見て意見を変えるかもしれない。「色々な意味で彼女は、DAの世界を呑み込んでいく混沌の大騒音の中に埋もれていくことなく、事態を理解して成長を遂げていく経験の機会を代表するキャラクターなんだ」

 他にも再登場するキャラクターがいるのだろうか? 赤毛の信心深いバード、レリアナだ。「彼女についてはディヴァインのエージェントとしての役割を膨らませてきた」とレイドロウ。「DA2の最後にも登場しているから、今回も顔を出すと考えるのは当然じゃないかな。だがそれ以上触れるのは、今はやめておこう」 信仰と霊性(スピリチュアリティ)を代表してきたレリアナは、相手の信心深さを試したり、プレイヤーに対してメイカーについての考えを述べさせようとしていた。「言えることは、ファンの中にはメイカーに対して非常に強烈な意見を有している者がいるということだ」とゲイダー。「だから丁度いいんじゃないかい」

 世界に平和を取り戻す力は、インクイジターとしてのプレイヤーに委ねられている。「我々はいつも、『自分がジェダイになるのではなく、ジェダイ騎士団を創設するとしたらどうするかな?』という問いかけをしてきたんだ」とレイドロウ。インクイジターが足を踏み入れ、思いのままに形作ることができる場所が提供される。「まず手始めに、何をするだろう? その世界にまず何があれば素晴らしいと思うだろう?」とゲイダーが問いかける。BioWareがDAIでプレイヤーに問いかけたいことがそれだ。

 
 DAIは、プレイヤーを仲間の戦士たちとともにより濃い闇の中に送り込む。世界は新しい脅威に見舞われる。空に開いた亀裂からディーモンどもが降り注いでくる。問いに答えを出すのはますます困難となっていく。BioWareはプレイヤーがインクイジターの役割について色々考えることを促す。「決断がより困難なものになれば、一旦立ち止まって、『望ましい(right)結果はなんだろう? この問題を自分はどう解決したいだろう? それにはどのような事態を招く必要があるのだろう?』と考えることになるだろう」とゲイダー。「一部のプレイヤーは非常に単純に考えるかもしれないが、それを真剣に考え抜こうとすることこそがDragon Ageの醍醐味なんだ」

***

 とりあえずレイドロウのおっさんを珍しく褒めとこう。無類のオーディオ・マニアだからでしょうけど、この人は音響関係の比喩が多い。ハイ・ディフィニション(high-definition、画像の高解像度ではなく、音響の高鮮明度のほう)とか、フィデリティ(wi-fi、Wide Fidelityのそれで、再現忠実性的な意味)とか何の断りもなく使う(聞いているほうも余計意味がわからなくなる)人なのですが、今回もまたいくつか出てるなあ。
 ただし、今回のカッサンドラに使った比喩は個人的には好きだなあ。「混沌の大騒音の中でも埋もれず、事態を理解して・・・」。

 英国の戦争映画などでスコティッシュ(あるいはアイリッシュ、あるいはカナディアンなどの)部隊のバグパイプ奏者をご覧になったことがあるだろうか。英軍で用いたのはハイランダー連隊が発祥だそうだが、映画の中では激しい銃撃戦のただなか、周囲に砲撃が着弾するのもものともせず、常時先頭に立って部隊中枢の位置を示し、規律を維持し、士気を鼓舞するため演奏しながら行進する様子が描かれる。

http://www.youtube.com/watch?v=uHLMI3Oga1A

 Youtubeで"The Longest Day"(1962)の映像を見つけたので貼っておこう。かの有名なペガサス・ブリッジの攻防戦でパラトルーパーズ(実際使ったのはグライダーか)の救援に向かうのは、これも有名なロバット卿のスコティッシュ・コマンド部隊。確か原部隊にはぐれてたまたまくっついてきた一等兵という設定のショーン・コネリーがツッコミ役ってのが懐かしい。バグパイプはスコティッシュのものなので、最後は「うるさくてこれ以上聴いてらんねえ」って耳栓する相棒に「やっぱバグパイプはアイリッシュじゃなくちゃダメだね」って言ってますね(笑)。(余談)ちなみにパラトルーパーズの指揮官ハワード少佐を演じている役者のリチャード・トッドは、若い時に実際にこの戦いに参戦しているのでした。

 それから、ポピュラー・バンドで同じ役割を果たしているのはベーシストですね。よくそれがドラマーだと勘違いされているが、そっちは(ギタリストたちと同様に)むしろ混沌と大騒音を創り出す役割なので向いてないですね。

 「秩序」と聞くとそんなことを良く思い出す。平時の秩序なんてどうでもいいんですね。DnDパラディンの元型は、「暗黒と混沌が支配する中で、人々の拠り所となるたった一筋の眩しい光明」ですが、ゲイダーさんたちが「過激派」(extremists)と呼ぶ一員であるDA2の騎士団長メレディスはそのDnDパラディンの裏返しの役どころでした(もちろん「過激派」が真っ先にリファーしているのはアンダース)。

 それからカッサンドラに関しては、BioWareお家芸の「女子豹変す」テーマがまた再現されるようで非常に嬉しい。
 どうしたものか、BioWareゲームで「豹変する」のは女性キャラばかりなり(「豹変」には「君子豹変」というように良い方に変わる一方通行の意味しかありませんのでお間違いないように)。
 あのモリガンさえも、ゲイダーさんは何やらキャラが変わるみたいなことを言っていたので、この趣向はBioWareチームの持病?というかDNAにしみついているのかな(MEだとなんとSBになっちゃったリアラがそうで、それからパターンによってはジャック、ミランダがそうかな。タリは最後までコンシステントですね)。

 一方、野郎キャラは何も変わらないか、むしろグズって、グダって、ヨレヨレ、自暴自棄になるケースが多い気がする(アンダースを筆頭に、DAであればゼヴも、オーグレンも、ステン、アリスターにも可能性がある)。
 ハリポタもヱヴァQもカンペキその世界だから万国共通なのかというと、ハリウッド映画は大抵違う。ちゅうかハリウッド映画だけ違う。

 マーケティング素材に女性インクジターを使えと騒いでいたBSNスレッドはゲイダーさんにシャットダウンされたらしいが、上っ面だけじゃなく、ちゃんと中身見ろボケ、と思った。中身は女性上位じゃん。

 カッサンドラがLIの可能性は・・・、んーこれだけじゃ増えたか減ったかわからんなあ。インクイジターの影響を受けてものの見方が変わるとかいうなら、LIかなあ。

【DAI】メイジ・テンプラー・ライヴァルリー

 Gameinformer hubの記事です。

http://www.gameinformer.com/b/features/archive/2013/08/19/building-a-dragon-age-rivalry-mages-versus-templars.aspx

***

 ライヴァルリー(敵対関係)をテーマにした物語は数多く、DAも例外ではない。テンプラーとメイジの間の葛藤はDA2で描かれた(ホークがどちらかの肩を持つことになる)全面対決によってより深刻な段階に突入した。DAIのプレイヤーは、その対決が生みだした悲惨な状況(Aftermath)のただ中に放り出されることになるが、両陣営は未だ矛先を収めようとはしていない。

物語の触媒を探す

 現実世界に魔法があったらどうだろうか? 超自然的な現象を取り扱うファンタジー設定の物語は数えきれないほどあるが、異常な力を有した者がそこら辺をうろついている不気味さを描いたものはほとんどない。物語の設定を考えるに際し、DAチームはその不気味さを無視することができなかった。

 開発メンバーはDnDのスペルのひとつ「チャーム・パーソン」(スペルの効果が続く間、まわりの人間を魅了して自分の思い通りに操作する)を直ぐに想起して、そこからにぎやかな議論が花開いた。「出会ったメイジのことを、自分が本当に気に入ったのかどうかなんて言えるかい? もしかしたらメイジのスペルの影響でそう思わされているだけかもしれないじゃないか」とリード・ライターのゲイダーが言う。

 チームで議論を進めるうちに、魔力を持つ人々が存在する世界の住人が当然感じるだろうパラノイア的不安に物語の焦点をあてると、とても面白い話になりそうなことがわかった。「常に心のどこかで『もしこの相手が魔力を持っていたらどうする?』と警戒しておかなければならないとしたら、それによって湧き上がる疑惑の念は一体どんなものになるだろう?。サークル・オヴ・メジャイとその管理体制が必要になるだろう、と結論づけたんだ」とゲイダー。

 BioWareが持ち込むことにした管理体制によって、DA世界は緊張関係に事欠かない場所になった。セダス大陸で支配的な宗教であるチャントリーがサークル・オヴ・メジャイの管理に関与することで、教会一派の政治力がさらに増すだけではなく、チャントリーは魔法による危険を喧伝し、またそれへの対処を手掛けることになる。サークル・オヴ・メジャイはメイジに対して自らの力を抑制するように指導する。チャントリーの掟では、魔力を有する者は誰であっても最寄りのサークルに収監され、常時監視下に置かれることが義務づけられる。メイジとサークルの目付け役であるテンプラー騎士団がその監視の一部を司り、サークルへの収監を拒否するアポステイト(はぐれメイジ)を狩り立てる。

 ゲイダーによれば、DAOはこのジレンマを設定する場であった。彼の記憶によれば、DA2では「『この維持管理関係が破たんするのはどんな場合だろう?』という点に焦点をあてることにした」。周知のとおり、平穏と秩序は徐々に蝕まれていき・・・、メイジたちも社会から見捨てられた存在であることにいい加減飽き飽きしてしまったようだ。

旗幟鮮明にする

 我々自身の歴史を紐解けばわかるとおり、ある支配的集団が何かを脅威と見なせば、人々はそれに付和雷同する。DAの魅力は、どちらも成立しそうな二つの観点を与えることにあり、そのおかげで、それぞれの説を支持するファンがフォーラムなどを舞台にして、熱心に自説の優位性を論じ、また相手を論破しようとし続けている。どちらが正しいかについては、BioWareの開発チームの中でさえ意見は一致しない。

 チャントリーとテンプラー側の抱く不安はもっともだ。邪悪な、または未熟な者が手にする魔力は社会にとって害悪である。一方で、この疑わしきは罰するという考え方はメイジたちに失望しか与えない。「まるで自分がいつ爆発するかわからない時限爆弾みたいだと感じたら、どんな気分だい?」とゲイダー。「自分がやってもいない、これからやるどうかもわからないことなんかで糾弾されるべきじゃないと思わないか?」

 この二つの対極的な発想によって、プレイヤーの魔法に対する見方はずっと複雑なものになる。「一旦飛び込んでしまったら、際限なく続く議論が待っているだろうね」とゲイダー。「DAでは、難しい決断を与えることを旨としているので、一目で倫理的に正しいとわかるやり方が示されることはない。だが、どちらの立場でも自説の優位性を弁護でき、それが反社会的な意見でもないと思えれば、我々はそれを追及するにやぶさかではないんだ」

 BiowareはDA2に両極端な二大勢力を登場させた。クリエイティヴ・ディレクターのマイク・レイドロウ曰く「双方の過激派がアクセルをさらに踏み込んだ、あるいは彼らの叫び声のヴォリュームをさらに上げたようなものだ」。プレイヤーに傍観は許されず、最後には一方に与しなければならない。「ますますハッキリと示されていく事態の深刻さを目の前にして、プレイヤーには、そのアヴァターであるホークを用いて、自分でどちらの肩を持つか選んでもらう必要があると思ったんだ」

「DA2は何をおいてもまず、主人公ホークが自分ではどうすることもできない周囲の事態に巻き込まれていく物語であり、我々はプレイヤーに、この抗争がどのように始まったかを見てほしかった」とゲイダー。「プレイヤーが実際に旗幟鮮明にすることよりも、この抗争を経験するほうが中心になっていると思う。だって、(一方の肩を持ったくらいで)簡単にケリがつくような事態ではもうないんだから」

***

 後半は次回へ。

2013年8月21日 (水)

【DAI】DA2コンセプト・アートから遣い回し?

 Asunderについては週一回更新くらいになりそうです。週末にしかまとまってできないみたいだし、夏ですから週末も色々遊ぶネタやら用事やら入ってしまう。忘れてませんからご心配なく。

 前記事で私も懐疑的だったように、DA2の開発設定用のアートワークに登場した、デーリッシュ、クナリ、ウォーデンのコンパニオンがDAIに使いまわされると予想する者がいることについて、BSNで私と同じ疑問を呈しているOPにゲイダーさんが答えていたようです。 

Party7
 これのこと。一番左はメイジ・ホーク・男子ですから、DA2の開発用アート(実際にはアニメーション)なはずです。

 BSNはもうゲイダーさんなど開発者のコメントをサーチする以外全く読まないし、タイトルだけ見ても女性インクイジターをマーケティングに使えという似非フェミニズムの嵐が吹きすさんでいるので、できるだけ近寄りたくないのだ。

 ゲイダーさんがブログなどでInclusivity(インクルーシヴィティ:ヘテロ、ホモなどの性的嗜好を含む様々な特性で一部の者を差別しないこと)に好意的なことを書いているからではないだろうが、最近のBioWareには色々なものが群がってきてしまう。例えばBlizzardなどでは決してありえないのに。とても良くないことだと思う。

 創業したBioWareを去年辞めざるを得なくなったドクター・ムジカがMass Effect 3でファンに迎合してしまったことは、大変な遺恨を残したと言わざるをえない。

http://social.bioware.com/forum/1/topic/371/index/17182470&lf=8

 DA2の開発設定用アートに用いたコンパニオンをDAIに遣い回しするつもりかという質問にゲイダーさん。

「いや、『DA2のメイキング』アートは、アート・チームが新しいアートスタイルを構想するときに用いたものだ。そのヴィデオのキャラクターたちは特に何も意味しないんだ。アート・チームが単に格好いいかなと思って入れたものだ(PCを含む)。 

 その後でDA2の本当のストーリーを作り上げていったので、ニーズは変わっていった。DAIを手掛けるときに、たまたまキャラクターの何人かがしっくりきたというだけだ。アート・チームの言い分はこんな感じだ。「ヘイ、この古いアートスタイル構想用のヴィデオに出て来るキャラクターを我々はほんとうに気に入っているので、これをベースに使ってもいいか?」 我々はそうすることにした。その時点から今まで生き残っているものは何も見つからないと思うんだが、二人くらいのキャラクターの外見上のルーツは見つかるかもしれないね」

 やっぱ、鎧のウォーデン・ウォーリアーはコンパニオン候補から落選かな?

【DAI】コンパニオン

 夜遊びしてたった一晩Gameinformerのサイトを観なかったら、Tumblrがスゴイことになっているのを発見した(笑)。
 マーフィーの法則。ゲイダーさんではないが、「見張っているポットは永久に沸かない」ってやつですか。
 スマホでこっそり見ても、なんか一気に画像・映像を放出? 早く帰ってPCの大画面で見ないと!

(追加・修正)

 Gameinformerではなかった。Gamescomで公開された新トレイラー、"The World Unveiled"が元ネタでした。

http://www.youtube.com/watch?v=sgzTlyw9w_E

 下のトレイラーは同じものですが、Gamescomで上映された様子がわかる。プレゼンターであるEAのCOOピーター・ムーア(オリージャンの悪の公爵ではありません)も最後に登場する(スピーチはバッサリとカットされてるけど)。

http://www.youtube.com/watch?v=QnIkHkOdeZU 

 レイドロウ氏が面白いことをいっている。主人公にはエイジェンツ(Agents)が与えられ、任務(ミッション)を肩代わりしてくれるそうだ。Sim CityやCivilizationの出来の悪い版でなければいいのだが。

 それから、EA・USAのサイトにもトレイラーは当然掲載されているのだが、珍しくEA・JPにもある。
 ただ本国に言われるままやってるならいいのだが、何か目論見があるのだとするとすっごいイヤな予感がする。余計なこと考えているんじゃないだろうな。日本で英語版が事実上プレイできないとか、アホみたいなことは避けてほしい。バカバカしいと思うかもしれないが、こいつらそのくらいやりかねない。

  ***

 「女性主人公(インクイジター)がどこにも登場しない!」、「BioWareは性差別主義者(セクシスト)だ!」と叫んでいる連中が膨大な数の怨嗟の書き込みをしているのを見ていると、地球人類の平均知能指数が確実に低下しているのではないかと勘ぐってしまう。そうではなく(平均知能指数は変わらないが)バカがいっぱい発言するようになったということでしょうが。

 マーク・ダラー(エグゼクティヴ・プロデューサー)のツイッターが泣ける。
「他のゲームのほとんどに登場しているのにも係らず、今回女性主人公は出ないことにされちゃったらしいね」

“I now realize that a female protagonist DOESN’T go without saying given most other games out there.”

 下の、落ち着いたあるファンの発言ももっともだと頷ける。
「エルフ、ドワーフ、ヒューマンの頭部モデルがそれぞれ男女示されているのに、騒いでる人たちは一体何を見ていたんだろう?」

“Why are people questioning if there is a female Inquisitor?
Like have you forgotten the pictures of elves, humans and dwarfs of both genders?”

 ああ、ヴィデオゲームが一部好事家だけの嗜みだった頃が懐かしい、なんて書くと、エリーティスト(選良主義者)呼ばわりされるんだろうな。

****

 Gameinformer本誌には、DAI「コンパニオンは9人」と明記されていたようで、(DLCキャラ込み、排他キャラ除きで)DAOの数に戻ったらしい。DAIにデイワンDLCキャラがいるかどうかは不明で、いれば10以上になる。

(追加・修正)
 これもGameinformerではなく、EAのDAIオフィシャルサイトが元ネタ。

 http://www.dragonage.com/

 ページの下のほうがようやく更新されてます。

 ここまでヴァリック、カッサンドラ、ヴィヴィアンが確定です。これまで通りなら構成はヒューマン・ドメインなのですが。

 ・DAO ヒューマン4、ドワ1、エルフ1、クナリ1、ゴーレム1、犬1、計9(男4、女4、オス犬1)
 ・DAOA ヒューマン2、ドワ2、エルフ1、スピリット1、計6(男3、女2、スピリット1)
 ・DA2 ヒューマン4、ドワ1、エルフ2、計7(男4、女3)
 ・DAI ヒューマン2+、ドワ1+、エルフ?、他?、計9(男1+、女2+)

(注)DAO、DAOAのジョイニング前のコンパニオン、DAOの排他コンパニオン、またDA2の排他コンパニオン妹弟を除く。いずれも本編物語のほとんどにコンパニオンとしては登場しないから。
 

 エルフ、クナリもいるに違いなく、ヴァラエティ的にもDAOに回帰するんでしょうね。

 以下、Tumblrなどで真しやかに語られている、コンパニオン候補リスト。
 あまり事前に(正しいかどうかまったくわからない)余計な情報を知りたくない人もいるでしょうから、「続きを読む」の下に。

続きを読む "【DAI】コンパニオン" »

2013年8月19日 (月)

【DAI】Morrigan Past and Present (2)

 前回の続きです。すでに一部先日訳した部分があるので(ちゃんと推敲したとはいえ)、真水部分は少ない。記事数の水増しともいう(笑)。

*** 

Dragon Age Inquisitionにおける役割

 DAIにおけるモリガンの運命が仄めかされたので、彼女の果たす役割を想像しながら、ファンはやきもきしていてもたってもいられないだろう。ただし彼女が担わない役割も確認されている。「モリガンがパーティ・メンバーにならないことは、ファンに予め断っておくほうがいいだろう」とクリエイティブ・ディレクターのマイク・レイドロウが言う。「がっかりしている人々も多いだろうが、前もって言っておくほうが大事だと思うのだ」 主人公のフォロワーとしての役割は与えられないが、その役割は重要である。「顔見せ的なカメオ出演ではない。極めて意義深い役割がある」とゲイダーが仄めかす。 

 彼女がDAIに再登場することに対するゲイダーとレイドロウの興奮は隠しようもない。ふたりはずっと前から、彼女の復帰を考えていたのだ。「DAIのストーリーの骨格は、DAOを開発中から浮かんでいたんだ。だから構想は実に長い間練っていた」とレイドロウ。「DAIの物語は(モリガンに)おあつらえ向きだ、そういう風に考えるのがいいのだと思う」
 彼女にはDA2に登場してほしいと考えていたファンもいたが、実際は作中で二、三の話題で触れられる程度であった。モリガンのその後の様子を見るまで待ち焦がれるのは苦行にも等しく、ファンにとって再会は、2010年にリリースされたDLCの"Witch Hunt"以来のことになる。「DA2に彼女についての物語が登場しなかったから忘れていたと思われるかもしれないが、物語はずっとそこにあって、その出番を待っていただけなんだよ」とゲイダーはいう。

 グレイ・ウォーデンとのロマンスなど、シリーズ過去ゲームにおけるプレイヤーとモリガンの交流結果は今回のプレイに取り込まれるのかという質問にゲイダーはこう答えた。「そのとおりだ。モリガンが置かれているだろう様々な状況はすべて考慮される。意思決定に関して言うと、我々はやめどころを決めるのが苦手なので、実際かなりの数の変化がありうるのだ。ただし一部のファンは、それら過去の結果に対する反応(リアクティヴィティ)がゲームに究極的な影響を与えることを期待しているようだが、そうなっているかどうかはプレイヤー個々人の考え方によるだろう。言えることは、我々は過去のプレイ結果を考慮しており、それらは状況に応じて様々な度合で今回のプレイに何等かの影響を及ぼすことになるだろうということだ」 

 それは、DAIが彼女の物語のルーズエンドを解決するということか? Origins以来、闇の儀式はファンの心から離れないが、モリガンというキャラクターはその単一のスキームだけで済ませるには惜しいくらいの深みを有している。「モリガンはこのプロットの中で、人間らしい役割(a human role)を与えられることになるので、彼女がプロット上の都合だけで登場しているキャラクター(a plot device)と考えている一部の人々は驚くのではないだろうか」とゲイダー氏。「彼女がこの(DAIの)大きなプロットに関与しているというのは、それはある程度まで正しいが、彼女には人間らしい立場(a human place)を与えることになる。そのほうが後から見れば納得がいく内容になるのだ」

 DAIは、2009年から続いてきた物語をさらに先に進めていく。モリガンのように異彩を放つ、行動の予測が付き難いキャラクターの果たす役割は、ふつうに良く見かけるようなものであるはずがない。結局のところ、モリガンはこの世界に変化を求めていて、今回はその望みが叶う機会なのかもしれないのだから。

***

 なんや、以前訳した部分、だいぶ雰囲気ちがうやんけ、という場合、このブログでは「新」が常に「正」です。ご了承下さい。

 DAOに登場したモリガンの「その後」って、一体どれだけのパターンがあるのでしょうね。DAOをプレイしていた頃はスラスラ出てきたんだろうけど、今やちょっと考えるのも億劫なんですけど。

 DAO本編のメジャーなものでもざっくり十通りくらい? "Witch Hunt"まで含めて、マイナーなものまで入れたら百くらいのオーダーになりそうっすね。

 男性主人公の場合、最後にモリガンから「指輪」をもらえたかどうか、ってのもDAIの反応が変化する要因になるのかしら。あれにはかなりキツイ縛りがあったと記憶している(自分は最後の男性キャラでようやくもらったはずだけど、詳細忘れた(笑))。

 

 

【DAI】Morrigan Past and Present

 さきにちょっとだけ訳したこのGameinformer Hubの記事ですが、レイドロウのおっさんは意外にもほとんど出てこなくて、ゲイダーさんの話も意外に面白かったので紹介しておきます。

http://www.gameinformer.com/b/features/archive/2013/08/12/dragon-age-inquisition-s-morrigan-past-and-present.aspx

 モリガン誕生秘話なんて話題、こっちから言わせると「もう何回同じこと載せんねん」という感じだろうと思ったら、意外に新ネタだったりする。

*****

 モリガンはDAユニヴァースに彩りを添えるキャラクターたちの中でも最もミステリアスな存在だ。この魅惑的なメイジの本心を誰もが読み取れずに困惑するが、彼女は実際語る以上に多くの物事を知っている。
 E3トレイラーに彼女が登場したとき湧き起った会場の歓声の大きさに鑑みれば、ファンは彼女の再登場を歓迎しているに違いない。
 あの闇の儀式で身籠った後のモリガンはどこで何をしていたのかという謎を含め、彼女に関しては多くの疑問が呈されてきたが、DAIは彼女が栄えある帰還を果たす機会となるだろう。

 読者がモリガンについての情報をせっつく気持ちは承知しているので、我々(Gameinformer)は、このDAの世界で最も話題のつきないキャラクターのひとりである彼女が誕生したときの裏話と、DAIにおける彼女の役割について、BioWareのメンバーと腰を落ち着けて話をすることにした。

モリガン誕生の裏話

 リード・ライターであるデヴィッド・ゲイダーが当初構想したモリガン像は、DAOに実際登場したような挑戦的で口やかましい姿とはだいぶ異なるものであった。奇妙なことに、ゲイダーの最初のモリガン像は、その仇敵であり育ての親でもあるフレメスにずっと似たものであった。「(プレイヤーが)フレメスと最初に会ったとき、あてどのない繰り言みたいな話をしていたことを覚えているかい? モリガンもそんな感じに書いていたんだ。何事に対しても正面から答えてはくれないといった風にね」

 ゲイダーは、彼女が口を開くたびに一体何を言わんとしているのだろうとプレイヤーが思い悩むようにしたいと狙っていたが、開発チームと話し合ってみると、その風変りなモリガンのアイデアはうまくいかないことがすぐにわかった。ゲイダーは一から書き直しを強いられたが、舌鋒鋭いキャラクターのアイデアも気に入っていたので、妥協点を見出すことができた。「フレメスに似た感じにすることはやめ、母親のことを忌み嫌っているティーネイジの少女のように書き直した。彼女が直言居士なのは、のらりくらりとはぐらかすフレメスのことを嫌っているせいなんだ」

 ハードルを一つ越えた開発チームにとって、二つ目のハードルが待っていた。彼女にふさわしいカンペキな「声」を見つけること。キャラクター創造に関してBiowareがもっとも重要視するポイントのひとつが声だ。「モリガンの声優は最後まで見つからなかった」とゲイダー。別の声優に決めようとした時期もあったが、上に述べた初期コンセプトがそうであったように、開発チームの思い描くモリガンにそぐわなかった。
 それから、”Farscape”(訳注)のエアリン・ソン(Aeryn Sun)を演じた女優のクラウディア・ブラックがふいに現れた。「モリガン役で呼んだわけではなかった」とゲイダー氏。BioWareの別のプロジェクトに自分を使ってほしくて、彼女のほうから録音を送りつけてきたのだ。「我々はそいつを聴いてみて、『こりゃカンペキだな』って思ったよ。もちろん”Farscape”も観ていたから、彼女なら素晴らしいと思った」とゲイダーが回顧する。 

(訳注)豪州のサイファイドラマ(1999-2003)、日本放映はなさげ。クラウディア・ブラックの役どころなど、Youtubeで一部覗き見可能(英語だけど)。

 しばらく時間は空いたものの、ブラックはDAIのトレイラーでもBioWareの期待どおりの仕事をしてくれた。「またしてもどんぴしゃな出来栄えだったし、彼女の渋い深みのある声(Whiskey voice)(訳注)は本当によくはまっている」とゲイダー。「時たま、いきなり一発目で場外ホーマーをぶっぱなしてくれる声優に出くわすことがあるんだが、そういうときのキャラクターは、自分の書いた以上に良くなってくれるんだよ」 

(訳注)"Whiskey voice"は、話し言葉(colloquialism)なのでこれといった定義はないが、「酒・タバコやけ」のザラザラ・ガラガラ声(raspyとかgravellyにあたる)ってわけでもないみたい。あちらでもそういう意味にとる人が多いみたいだけど。酒を一滴も飲まないのにハスキーな声の人はいますからね。ってもハスキー(husky、しゃがれ・かすれ声)とも違うみたいだ。
 そういえば、昔のホワイトスネイクのアルバム・ライナーノーツに、他のメンバーが楽器や音響資機材のリストを載せていたのに、ヴォーカルのデヴィッド・カヴァーディルのところに書いてあったのはタバコとコーヒー。さすがに録音のときアルコールはないか(笑)。Whiskey voiceは男性だとあんな声かな(また余談だった)。

モリガンのこれまで

 彼女の謎めいた雰囲気と、とりわけ仲間のアリスターとのバンターなどで見せる毒舌にファンはすぐに魅了された。彼女に深みが生まれた理由の一部はそのバックストーリーとDAワールドにおける立場であった。セダス大陸において魔法は畏怖の対象であり、野放しが危険とみなされ、すべてのメイジはサークル・オヴ・メジャイに収監される。当然のようにモリガンはそれを避け、はぐれメイジ(アポステイト)として文明社会から隔絶された暮らしを送っている。彼女の育ちはDAの他のキャラクターたちとはまったく異なっており、他の者たちとの交流や関係をほとんど持とうとしないのも、それが理由のひとつでもある。

 最も顕著なものにフレメスとの緊張関係があるが、モリガンはこの魔女が実の母であるかどうかは疑っている。育ての親が伝説的なシェイプシフターの魔女であり、恐怖を与えるだけで人を殺めることができると噂されているのだから、その相手のやり口を見抜くのは難しいことではなく、その力を不快に感じても仕方がない。
 モリガンとフレメスが信頼できるキャラクターであるかどうかは長く続いてきた議論のタネだが、ふたりとも誰にも知らせない動機を何か隠し持っていそうだからだ。

 モリガンの謎めいた人となりは物語によく合っていて、ゲイダーの狙いどおりでもあった。「DAOではモリガンに自分自身のことを沢山語らせたが、エンディングまで経験したプレイヤーは「あれは一体、どこまで本当だったんだ?」と困惑することだろう。「(その謎めいた魅力を)認めておきながら、彼女がそれを自分の都合で利用したりしないと考えるほうがどうかしてる。彼女は自分の強みを良く承知しているのだ」

 DAOのアーチ・ディーモンとのファイナル・バトルの直前に、モリガンはプレイヤーに重大な選択の機会を与える。ある種の闇の儀式を執り行うことによって、彼女は子供を身ごもり、グレイ・ウォーデンはアーチ・ディーモンとの相撃ちによって犠牲になることから逃れることができる。アーチ・ディーモンのエッセンスは、打倒される瞬間にその子供(訳注:実際にはまだ胎芽)に移る。モリガンによれば、それによって古の神の魂が子供に宿る。主人公が男性なら、モリガンの求めに応じて自分自身の子を孕ませることもできるが、たとえそれを断ったとしても、他のグレイ・ウォーデンも皆断るかどうかはわからない。ファイナル・バトルの後でモリガンは立ち去り、子供の運命はそれ以降わからない。

 モリガンが自らの使命を果たすために立ち去ることについては、ゲイダーに強い思い入れがある。「私の観点から見るに、強い女性キャラクターは大抵自分自身の目論見(アジェンダ)を持っている。DAOを書いているときに自分にとって一番大事だったことは、物語の最後で、たとえモリガンが主人公のことをどれだけ愛していたとしても、彼女には成就しなければならないあまりに重要な使命があり、それが主人公との関係に優先するということだ。
 プレイヤーの多くは、これまで彼女とロマンスを育んで、しかも相思相愛を認め合ったわけだし、結局は自分が運命を思い通りに操ることのできる仲間のひとりに過ぎないのだから、最後は彼女が自分の思い通りになるだろうと考えていたのだと思う。だがモリガンには彼女自身の進むべき運命があったのだ」

 ***

 まあ、ゲームのキャラクターですら自分の思い通りにならなくて怒ってるやつなんて、最初から無視すればいいと思うのだけど。そんなゲームが好きなら、世の中になんぼでもあるやん。 

 とはいえ、ゲイダーさんが以前書いていたように、ゲーマーのほとんどは「太鼓持ち」コンパニオンとか、主人公の「なんでもおっしゃるとおりです!」というような小役人的ごますりフォロワーが大好きなんだって。
 (あっちの?)ゲーマーってなんかレヴェル低いんだね。ま、こっちも変わんねえか。

 余談ばかり調べて書いていたら時間なくなったので、もうちょっとだけある後半は次回。

2013年8月17日 (土)

【DAI】Gameinformer モリガン・アップデート

 知らないうちに、GameinformerのHubに特集記事が追加されまくっている・・・。

 http://www.gameinformer.com/p/dai.aspx

 うーん、このうちそそるのは、モリガンさんの記事。さらっと読むとゲイダーさんとレイドロウのおっさんが、登場して色々言ってますねえ・・・。

 こっちAsunderで手一杯なんだけど(笑)。

 ま、ぼちぼちやりましょうね、どうせまだリリースまで一年以上あるし。

 先は長いよ。

 ***

 とはいえ、ゲイダーさんが何か語っている最後のほうのパラグラフだけやっときますか。レイドロウのおっさんはきっとまた吹きまくってるだろうから後回しね。 

「グレイ・ウォーデンとのロマンスなど、シリーズ過去ゲームにおけるプレイヤーとモリガンの交流結果は今回のプレイに取り込まれるのかという質問に、ゲイダー氏はこう答えた。「そのとおりだ。モリガンが置かれているだろう様々な状況はすべて考慮される。意思決定について言うと、我々はどこでやめればいいかわからくなってしまうから、実際かなりの数の変化がありうるのだ。それがゲームに究極的な影響を与えることを一部のファンが期待しているようだが、そうかどうかはプレイヤー個々人の考え方による。だが我々は過去のプレイ結果を考慮しており、それらは状況に応じて様々な度合で今回のプレイに何等かの影響を及ぼすだろう」 

 それは、DAIが彼女の物語のルーズエンドを解決するということか? Origins以来、闇の儀式はファンの心から離れないが、モリガンというキャラクターはその単一のスキームだけで済ませるには惜しいくらいの深みを有している。「モリガンはこのプロットの中で、人間らしい役割(a human place)を与えられることになるので、彼女がプロット上の都合だけで登場しているキャラクター(a plot device)と考えている一部の人々は驚くのではないだろうか」とゲイダー氏。「彼女はこの(DAIの)大きなプロットに関与しているというのは、それはある程度まで正しいが、彼女には人間らしい役割を与えることになる。そのほうが後から見れば納得がいく内容になるのだ」

*** 

 いつにもましてゲイダーさんの発言が迂回しまくっているので、意味がちょっと心配。原文も載せておきます。 

 "a human place"は、「人間らしい役割、立場」でいいはずですよね。対置されてるのが"a plot device"「話を転がすだけの仕掛け」ですから。

 プロット・デヴァイスは、映画・演劇などでプロットを前に転がすための仕掛けで、いかなる種類のものも含む。
 以前紹介したヒッチコック監督のマクガフィン(MacGuffin)が有名ですね。それ自体プロット上なんの意味もない書類カバンをスパイたちが奪い合い殺し合いをする。結局だれも中身の書類は見ないし、宝石でも、スパイの名簿でも、暗号解読器でもなんでも置換可能である。映画「サイコ」(1960)に登場する現金の入ったカバンもそうでしたね(実はあれには何の意味もない)。映画「スターウォーズ」(1977)ではオガーナ姫が何かを託したR2D2がそうでした(ただしR2D2と3POは、狂言回しの役目も負っている)。

 特にヴィデオゲームはプレイヤーが途中で勝手にやめることができるので、RPGに限らずプロット・デヴァイスはもうてんこ盛りです。DAのマクガフィンも山ほどあります。DA2ギャムレンズ・グレーテスト・トレジャーとか、MotAに登場するクナリの宝石、ハーツ・オヴ・メニーもそうですね。しかもこれらふたつの「宝石」は、プロット上ではさらにツイスト、ひっかけの役割もあるし。DA2イザベラの探すアーティファクトもひっかけネタ。DAのライター衆はこの手のツイストが大好きなようです。

 それから有名なプロット・デヴァイスにはデウス・エキス・マキナがあるだそうだ。ギリシャ演劇などで、機械仕掛けに乗って登場した神がすべての込み入った謎を最後に強引に解くってやつですね。

 私個人は、あのトレイラーのモリガンさんのセリフが気になるんです。「私たちのもろい同盟・・・」って言っているでしょう? 話しかけているのはインクイジター(になる主人公、すなわちプレイヤー)に決まっていると思いますが、彼女はいったい何の立場で話しているんだろうと気になった。

 しかも「立ち上がって闇を食い止めるか、世界の破滅をただ見守るか」ってのも、そりゃ食い止めるだろう、以前は中立的(厭世的か)だったのに随分と「善」に寄ったな、と思っていたから。

When asked if any references would come up from your past interactions with Morrigan, like about your Grey Warden if you romanced her, Gaider says, “Yes. The various states that Morrigan can be in – of which there can be quite a few, because we don’t know when to stop when it comes to making decisions – they’re all recognized. Whether or not they have the ultimate effect like the kind of reactivity someone imagines, that depends on the person. But we do recognize them and it does play a role of varying degrees depending on the surroundings.”

Does this mean Inquisition will tie up the loose ends in her story? The dark ritual has been in fans’ minds since Origins, but Morrigan has more depth than a single scheme. “[Morrigan] has a human role in this plot, which I think may surprise some people because they might only think of her as a plot device,” Gaider says. “She has this big plot she’s involved in, and while that’s true to an extent, I’m taking her to a human place. That will make sense after the fact.”

 

 

【DAI】新コンセプト・アート(8月15日)

 BioWare ツイッターがぱらぱら小出しにするもんだから、ここの表題もかぶってしまうのですが、オフィシャリーに何枚目なのかわからないので、公表日付(現地)を入れることにします。

 前回とうって変わって、今回のキャプションは楽ちんですね(笑)。 と笑っていたらそうでもなかった。

Light_and_shadow_2

 光及ばぬところ、闇が栄える。

 In the absence of light, shadows thrive.

***

 楽ちんだなと思ったら、それはブービー・トラップ。 

 まずshadows が「影」だと変ですね。「光」なきところに「影」(かげ)はない。「陰」(かげ)はあるけど。「光陰」と並べるとこれは「太陽と月」、「昼と夜」、「月日の流れ」のことだからちょっと変だね。

 ここは「暗部」、「暗闇」、「闇」でしょう。広げると「不吉」、「凶兆」とか。

 下がより有名なヴァージョン。

"In the absence of light, darkness prevails." 

 こちらは「光」と「闇」そのものずばり。

 デル・トロ監督の映画"Hellboy"(2004)に引用されていたのが最近で、その元は仏教の教えだとか。

 ところが、日本でいう仏教の教えにこれはなさげです。もともと(日本の)仏教でいう闇は光の不在のことで、無明(むみょう、迷い、煩悩の源)のこと。光は智慧、というか教えそのものですね。つまり闇は「邪悪」ではなく「無知」(智慧の及ばないこと)。 

 DAIではもちろん、邪悪のことでしょうね。

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 この文章は、チャント・オヴ・ライトの「哀悼の頌歌」の一節でした。

 Canticle of Threnodies 8:21

 残念ながら、この前後にあたる部分は示されていません。

【DAI】Dragon Age Asunder (6)

 リースが旅立とうとしている。 

 コールは、数多くのテンプラーが往来するこのタワーの上層部に、かつてないほど長く留まっていた。テンプラーとすれ違うたびに、コールは壁に顔を押し付けて息を潜めていたい衝動に駆られた。いつかテンプラーの中に、リースのように自分を見つける者が出ないとも限らないという考えを拭い去れないせいだ。

 見つかれば自分はそのテンプラーを殺すのだろうか。身を守るためとはいえリースにダガーを向け、この世界で唯一の友人を裏切ったことで、彼は以前にもまして孤独に苛まれた。 

 コールはリースの姿を早くから見つけていたが、彼と話をしたくて仕方がないにもかかわらず、思い煩いながら遠くから見ているだけだった。自分から話すのは得意ではなかったし、彼が聞く耳持つかどうかもわからなかった。

 コールは、リースと赤毛でそばかす顔のメイジが荷物を背負っているのを見かけ、周囲の者の噂話からふたりがどこか秘密の場所に旅立つのだと知った。先日霊廟に姿を現した背の高い黒髪のテンプラー女性も同行するらしい。あの地下で彼女はコールのほんの目と鼻の先まで近づいてきたのだ。彼女が自分に気づかずに立ち去ったとき、コールは心底安堵したことを覚えている。

 騎士隊長と呼ばれていることしかわからないが、周囲の尊敬を集めている彼女は重要人物に違いなく、傍にいればリースの旅のことが何かわかるかもしれないと考えたコールは彼女を追うことにした。それはテンプラーたちの間をさらにうろつくことを意味するが他に方法がない。

 騎士隊長は忙しげに動き回った。彼女が中庭で部下のひとりに自分の不在の間の指図らしきことを伝える間ほとんど上の空だったコールも、旅が一週間ほどかかるらしいという部分は気に留めた。それから騎士隊長は、別のテンプラーの女性と大聖堂での「事件」について話し合った。騒動の大音声はコールのいた下層まで伝わってきたが、その時すでにリースが牢から解放されたと知っていたコールが興味を抱くことはなかった。 

 コールはリースが解放されるまでの間、彼が囚われていた牢の前で長いこと待ち、その牢の錠前を外すべきか、相手がどこにも行き場のない状態で話をするべきか、ずっと思い悩んでいた。だが自分が会いに行けば、リースはコールが自分を殺しにきたと思うに違いなかったし、友人からそういう目で見られるくらいなら、いっそ死んだ方がましだと考えた。

 騎士隊長の跡をつけながらタワーの様々な場所を巡ったコールは、メイジの居住階層よりも上層の階に行きついた。今まで自分ではほとんど来たことがない場所のため不安で震えがきたが、そこで出会うテンプラーたちも皆緊張した雰囲気であった。

 この上層に居室を与えられるくらいテンプラーの中でも重要な人物が、リースと一緒に旅立つ理由をコールは怪しんだ。自分のせいでリースの身に危険が及んでいるのか、普通の者なら彼女に直接尋ねて答えを聞き出すのだろうが、コールがそうできたのは記憶もおぼろげなずっと昔のことだ。今ではリースのたまの来訪以外は静寂の中に暮らすしかなかったし、リースが去るたびにその静寂がさらに深まるような気がしたものだ。 

 騎士隊長の後に続いてコールも室内に滑り込んだ。寝台と衣装箪笥が半分を占める小さな寝室で、他にこれといった家具もない。窓際に小さな石の人形が並べられており、コールがそれをひとつ手に取ると、両眼の部分に不吉な赤い色の宝石をあしらった、しゃがんだ狼らしきまだら灰色の奇妙な像だった。

 像を窓際に戻したときの小さな音に騎士隊長が振り返り、コールは自分の馬鹿さ加減を呪う羽目になった。今自分に注意を集めれば、彼女は彼の存在に気づいてしまうだろう。その後すぐに彼女の記憶から消えるとしても、今ここで姿を見られるのはまずい。

 胸当ての脇紐を外す途中で手を止めた彼女が訝しげに部屋を見回す間、コールの顔の横を汗が流れ落ちる。この場を逃げ出したい衝動に駆られるが、それは彼女が彼の姿を間違いなく目撃することを意味する。 

 彼女が眉をしかめつつ鎧を脱ぐ作業に戻ったのを見て、コールは深い息をした。それから彼女が鎧を脱ぐ様子を黙って見つめていた。裸は見たことがある。メイジ同志が暗闇で抱き合っているときもそうだし、大きな金属の槽に熱いお湯を入れて皆が浸かっているのを見たときは、ピットに立派なプールがいくつもあるのに無駄なことをしていると思ったものだ。
 かつてはコールも、メイジが同じように湯に浸かって寝る前に着替える日課をわくわくしながら見物していたのだが、そのうち興味を喪ってしまった。自分がまるで、決して入ることのできない暖かくて心地よさげな部屋の窓に顔を押し付けてじっと見ている子供のような気がしたからだ。

 騎士隊長は鎧の部位を次々外していき、最後に金属のブーツを蹴るように脱ぎ捨てると、汗まみれのチュニック姿となった。テンプラーはいつ誰と不意に戦うために一日中重い鎧を身に着けているのか、鎧も着ていないメイジと戦うつもりではないか、などといったコールの疑問は誰からも答えて貰えない。 

 彼女は解放されたような溜め息とともにチュニックも脱ぎ去り、寝台横のナイトテーブルに置かれた水の入ったボウルの表面にうっすら張った氷を割ると、浸した布で体を拭き始めた。彼女の逞しい身体のそこここに残された、数知れないくらい多くの傷跡がコールの眼にとまった。

 体を拭き終えた彼女は、箪笥から新しいチュニックを取り出して身につけると、皮の装丁に太陽の紋章のついたぼろぼろの本を手に取った。その表紙を撫でる彼女は優しさと悲しさを湛えた柔和な顔つきになり、装丁を軋ませながらそれを開くと、黄色く変色した紙の匂いを吸い込んだ。書庫に数えきれないほどたくさんの書籍があるのに、彼女がその古臭い本に固執する意味がコールには不明であった。

 扉に力強いノックの音がして、中のふたりが飛び跳ねた。騎士隊長は本を閉じるとあわてて箪笥に仕舞ったが、彼女が誰何する声は口の中にしこりでもあるかのように奇妙だった。

 返事もなく部屋に入ってきたのは、胸当てに奇妙な紋章のある暗い色の鎧を着て、権威を誇示するかのようにあたりを睥睨するような目つきの男であった。その顔が際立って無慈悲な様子を湛えていることもそうだが、コールを心から戦慄させたのはむしろ、この男が他のテンプラーたちと異なる力を持っていることが自然とわかったからだ。 

 ロード・シーカー・ランバートと呼ばれた男がこの部屋の様子はどこかおかしいと告げると、騎士隊長は剣を手に警戒し、男が自分の存在を感じていることを恐れたコールは部屋の端に隠れて身じろぎもしなかった。部屋で何をしていたか問われた騎士隊長が着替え以外に何もしていないと答えると、男はこのタワー自体が自分にあらぬ緊張を強いるのかもしれないと不愉快そうに言った。

 騎士隊長から用件を尋ねられたロード・シーカーは三つの小瓶の入った紫色の布包みを相手に手渡した。受け取った彼女にとってそれが愉快な種類の代物でないことはその表情から見て取れた。 

 返礼しつつ、それだけのために自分の居室までご足労に及ぶ必要はなかったのではと尋ねる騎士隊長に、ロード・シーカーはふたりの間だけに留めておくべき内密の話を切り出す。彼がグランド・カシードラルに送った遣いによれば、ウィンがディヴァインから尋常ではない特権を与えられたのは事実であった。だが彼はウィンが任務の全てを明らかにしていないとの疑いを持っている。そして万が一にでもトランクィリティの儀式に欠陥があり、トランクィルを元の姿に戻せる方法が見つかったのであれば、騎士隊長の任務はそのニュースが他の誰の耳にも届かないように措置することであると告げる。

 それぞれ力を持ったメイジ三人の行動を阻止することが自分ひとりで可能かと騎士隊長が尋ねると、ロード・シーカーは彼女の肩を掴み、その眼を容赦なく鋭い視線で直視して、トランクィリティは残酷な儀式である一方で、弱者の命を奪わずにディーモンの魔の手から守る手段であること、トランクィリティから逃れる手段の存在をメイジたちが信じ込めば混沌がもたらされること、平和と秩序を守るためにサー・エヴァンジェリンは与えられた職務を遂行しなければならないことを告げ、騎士団長イーロンの判断の中でも、エヴァンジェリンをその職に引き立てたことが最も賢いものだったことは間違いない、と付け加えた。 

 コールがその名前をエヴァンジェリンであると知った女性は、必要がある限りその任務を遂行する旨答え、ロード・シーカーはこの話が杞憂に終わることを祈っていると告げて退室する。緊張から解放されたエヴァンジェリンは寝台に寄りかかり、その両脚は疲れ果てて動かないように見えた。彼女は紫の包みを横に放り投げると深い溜息をついた。 

 部屋の隅で震えていたコールは、自分に戦慄をもたらす男が去ったことは歓迎したが、今度はリースの身に危険が及んでいるのではないかとの不安に襲われた。リースを探してすぐに伝えたかったが、自分が間違っているかもしれないし、リースが自分を信じるかどうかもわからない。コールはどうすればいいのかと思い悩んだ。

*** 

 新鮮な空気を吸い込んだリースは、自分が覚えているよりも格段においしいことに感動した。

 一行はヴァル・ロヨー街路のごった返した人混みと都会の様々な生活臭から抜け出してきた。城門を警護していた衛兵たちは、ホワイト・スパイアを擁するこの首都でも珍しい、メイジ三人と完全武装のテンプラーひとりからなる奇妙な集団が通り過ぎるのをずっと横目で見張っていた。彼らがこの集団と諍いを構える風はまるでなく、とっとと立ち去ってもらいたい様子だった。

 リースはタワーの外の感覚だけではなく、街から出る感覚も忘れていた。任務のためテンプラーの警護付きで外出することは時たまあるが、今回はそれとは違って解放された気分を味わうことができる。彼は紅葉を見て喜び、すれ違う貨車の御者が自分から目を背けるのも面白がり、路傍の子供たちがオリージャンの習わしに従って道行く人に小遣いをせびるも愉快に感じた。あいにく放ってやれるコインの持ち合わせはなかったが。 

 エイドリアンはそこまでの熱意は示さず、リースの馬の後ろで彼にしっかりしがみつき、うすら寒さと脇腹の痛みに文句を言うときだけ口を開いた。自分では決して認めないが、最初にこの生き物を見た時の顔つきから見て、彼女が馬を怖がっているのは明らかだった。

 エヴァンジェリンも無口だった。村人が賑やかな音楽と踊りに興じている村を通り過ぎるときにも眼をやりもせず、立ち寄れないかというリースの申し出は、遊びで旅をしてるのではないと不機嫌そうにはねつけた。冷たい風に真紅のクロークをなびかせつつ、彼女は進む先を一心に見つめていた。

 ウィンは、エヴァンジェリンが時折急かすのも気にせず自分の馬をゆっくりと進めるので、他の者たちからだいぶ遅れて続いていた。青いローブの上から厚手のショールを巻いて、荷物の中身を調べては満足し、また日が出ているうちは書物を読んでいた。エヴァンジェリンが彼女の任務について尋ねても曖昧な答え方に終始して、ついに相手を諦めさせた。 

 リースの上機嫌を萎(しぼ)ませるのはウィンの存在であった。タワーから連れ出してくれたことには感謝しているものの、同時にそれは彼が立腹する理由でもあった。その考えが強まるにつれてリースの陽気さも消えていき、最後には他の者たち同様に無口になった。 

 街道沿いの最初の宿に差し掛かると、エヴァンジェリンが一行にそこで休息を取ることを告げた。資材を調達するため宿の中に入るテンプラーに珍しくエイドリアンが同行を希望したのは、単に馬から降りたかったからに違いない。外に残されたリースとウィンは沈黙を守る。風が近くの木を揺らし、宿屋の階上の窓が繰り返し開け閉めする音だけが聞こえた。

 リースが自分を見つめているのを知って、ウィンは読んでいた本を閉じて溜息をつく。雪が降りそうだなどと他愛もない天候の話題で取り繕うとしたが、リースの顔つきをみて尋ねたいことは何かと促す。リースが知りたいのはウィンが自分を連れ出した本当の理由である。スピリットの扱いについてはウィンのほうが自分以上にお手の物であり、それが理由であるはずがなかった。また、フェイドに侵入する儀式に参加するメイジは誰であっても問題ない。彼女がリースを指名したのは、実の息子である以外に理由がなかった。ウィンはそれを肯定する。 

 乱暴な言葉を返しそうになったリースがウィンから目を反らしたところに、こちらを見て目を丸くしている年端もいかない地元の少女が見えた。携えた杖からふたりがメイジだと知って興味津々の様子だ。チャントリーの教えがその子にメイジに対する恐怖を植え付けるには、まだしばらく時間が必要らしい。

 リースは、ウィンがたかだか十年前、フェラルデンのブライトとの戦いが終わったときにふいに初めて現れて自分が母親であることを告げ、以降一度も彼の元を訪れなかったことをなじった。ウィンは自分が手をかけることのできなかった息子がどう育ったのか見たかったのだと答える。

 今回ウィンがホワイト・スパイアを訪れた理由はリースとは一切関係なく、ディヴァインとの会見のあと、最寄りのサークル・タワーを目指しただけであった。だがそこで彼女は、ロード・シーカーが捜査している殺害事件の容疑者としてリースがダンジョンに囚われたことを知る。彼女は、十年前には自分の手助けを一切必要としていなかった息子が、今はそれを必要としていると感じたのだった。 

 リースが身の潔白を言い募っても、ウィンは、テンプラーの眼にはまったくその反対に見えていると告げる。またウィンは、リースがリバタリアンズの主張に染まっていることも気に入らない。全てのメイジが訓練されたマバリ犬のようにテンプラーに媚び諂(へつら)いたいわけではない、テンプラーたちがメイジをまるで子供のように扱うのが問題だというリースの言葉に、ウィンは、多くのメイジが子供のように振る舞うからこそ問題なのだと反論する。 

 リースはまたしても彼女への憤りを感じはじめたが、今度はそれを抑えるつもりもない。偉大なアーチメイジ様はメイジに責任ある行動を求めるが、タワーの生活のことなど、あるいはそういう生活を今も送っているメイジのことなど忘れてしまったのではないか。またその議論を蒸し返すのかと辟易するウィン。吹き荒ぶ冷たい風の中、ふたりは馬上でしばらく黙り込んでいたが、リースが母親と初めて会ったときから築きはじめた二人の間を隔てる不信の壁が、今はさらに高く乗り越えられないものになっていると感じた。 

 先ほどの少女が恐怖に怯えて叫び出し、何かに追われるかのように遠くへ駆け出して行った。馬上のふたりはそれを意に介さず、沈黙を続けたままであった。

 ようやくリースが口を開く。 

「ならば、なぜ僕を助け出そうとしたのです?」
「それを尋ねる意味があるの?」 
「僕にはある」
「もしこんな風に思われるとわかっていたのなら、牢に置き去りにすべきだったのでしょうね。あそこのほうがあなたに相応しいのでしょうから」 

 返す言葉が見つからなかったリースは、ウィンが変わってしまったとつぶやく。

「そう言えるほど私を知らないでしょうに」
「十年前に会った女性は覚えていますよ。自分はフェラルデンの家の出だと聞かされていたけど、幼かったので何も覚えていなかった。ずっと母親がどんな人なのか考えながら暮らしていたら、突然彼女がどこからともなく現れたのです。暖かく優しい女性で、しかも英雄だった。母は僕の誇りになった」 

 その女性が、ホワイト・スパイアの大聖堂中のメイジに希望ではなく忍耐を持てなど言う女性と同じはずがない。カレッジ・オヴ・エンチャンターズに反抗を諦めるよう迫る女性と同じはずがない。そのリースの非難に、ウィンは、失望させたのなら残念だと答える。 

 これ以上他に、彼女に何を求めることができるというのか? ファースト・エンチャンター・エドモンドはかつてリースに、タワーの中で外界と遮断されて一生暮らすことになるメイジの中には、やがて外界が存在することすら忘れてしまう者がいることを教えてくれたが、今の自分がそうなのか。彼の記憶にあるウィンは、優しさと思いやりに満ち溢れ、超然さや高慢さと無縁だった。今目の前にいる女性と同じはずがない。

 だが、それですらリースは感謝すべきなのかもしれない。彼の避けられない運命が延期されているだけだとしても、何もないよりましだ。少なくともタワーの外にいるわけだから。今のところは。 

2013年8月16日 (金)

【DAI】Dragon Age Asunder (自分にも喋らせてくれ)

 やっぱ、翻訳者ってのが向いていないと自分でわかります。

 場面ごとに、いちいちコメントしたくなるもの。

 ごく一部の例外を除いて、世のプロの翻訳者のほとんどはそんな機会が与えられない。せいぜい「あとがき」に書くくらいで、それも著名な人に限られますね。学者連中は「『なんとかを』読む」とか、古典・専門書の解説本を出したりするが、心ある学者ならまず原典にあたれと言うでしょう。例えば先日話題に出したヴィトゲンシュタイン翻訳の野矢教授も「『なんとか』を読む」を読んでもふつうは「なんとか」を読んだ(理解した)ことにはならない。翻訳でいいから原典を読め」と言っている。ご自分のその手の本は例外だそうだが。 

 最近ではインターネット・ブログなどのおかげで、翻訳者も意思表明の場所ができたのでしょうけどね。待遇でも社会的地位でも、日本語への(つまりほとんどは日本人の)翻訳者は世界中を見渡しても一番恵まれているといいます。「職人」アドマイア文化のせいでしょうし、だからこそ、あまり多くを語らない人が多いのでしょう。 

 途中でも色々言いたいことは思い浮かぶのですが、Asunderの紹介本文とごちゃ混ぜにすると、何が何だかわからなくなるので、別立ててこういう記事を挟むつもりです。 

 とりあえず、ウィンが登場するところまでは一まとめにやらないといけないと思い、前回まで突っ走った。たまたまお盆休みでまとまった時間があったせいですから、これからはスローダウンするはずなんで、スピードはあまり期待しないでください。

 この手法が一番いいと思ったのですが予想以上に手間がかかります。これ以上削ると、例えばエイドリアンの人となりがあまり通じなくなったりするし、これ以上増やすと、もう普通の翻訳と変わらなくなる(ネットで大陸国人にパクられて売られたりすると、誰も買わなくてもこっちがダンジョンの牢に繋がれる恐れがある)。 

 地の文をだいぶすっ飛ばしているので、ロード・シーカーのようにセリフが紋切型でかつ少ないキャラクターだとなかなか雰囲気が伝わらないのが難点です。

 万遍なく削るのではなく、濃淡をつけなければいけないのはしんどい。はじめて登場する場面のキャラクターはどうしても詳しくやらないといけない。

 それからBioWareゲームの小説ですからちょっとしか登場しない端役も疎かにしないことにしている。例えばこれまでの場面でしたら、立哨や警護のテンプラーの登場を省略したりしてはいけない。これは私自身が肝に銘じている掟。つうかNPCを疎かにしておきながら自分はRPGファンですってのは笑えますよね。名乗る資格がない。

 とはいえ、フラクタリ・チャンバーの警護についていたテンプラーなどは、本文では描写もエヴァンジェリンとのやり取りもかなり長いんですが、登場だけさせてあとは泣く泣く省略。そういう辛い場面は今後も出て来るでしょう。逆にリバタリアンズのイヤなあんちゃんとかは(かなりセリフを削ったのだが)元からバッサリ削ってよかったか。 

 あとお気に入りキャラだとえこひいきが入る。エイドリアンがそうですが(リースのほうへただ歩み寄っちゃだめで、彼女は「ずかずかと」突進してくるように近づいてこないといけない)、エドモンドのこともなかなか削れない(笑)。フラクタリ・チャンバーへの「長い階段を二段ごとにひと休みしながら登る」は私には削れない。「どんどんちっちゃい箱に移し替えていっても最後にメイジが皆消えてなくなるわけじゃない」なんて、あなた削れますか?

 最後に、今頃気が付いたこと。エルフのキャラクターは「エルフの男女」とわかるようになっているのですが、ヒューマンについては何も触れられないんです。自分も一回目のときに「ヒューマンの女性」とやらかしていますが、あれは原文にはないのでほぼ誤訳ですが、記念に?残しておきましょう。まあ一回目は正直不安だったんだよ。その「恐怖」の記念。 

 リースも、エイドリアンも、ウィンも、エドモンドも、もちろんシーカーとテンプラーであるからランバートもエヴァンジェリンも、断っていないのでみなヒューマンです。(エルフのテンプラーがいちゃいけないという掟自体はないでしょうが、テンプラーのリクルート基準ってやつにありそうですね。今まで誰か出たっけ?)

 つまり、ドメインな種族などについては、ことさら触れないというこの世の中のしきたりを踏襲しているんですね。米国南部ではかつて警官を「白人男性」などと言う必要がなかったようにですね。日本人がふつう電車の中で出会った人に「あなた日本人ですか」とは聞かないように。

 さっさと読み終わった一回目に比べて、紹介記事を書くため読み直すと色々わかってきて、この苦行、いや作業、じゃない紹介記事も愉しいなあと思います。

 紹介記事を書く間、電車の中でも何度か読み返すことになるだろうなと思い、ペーパーバックに頼らなくてすむように、Kindle版も手に入れました。なぞるとハイライトができる機能は使っているし、タッチすると意味が出て来る電子辞書が便利なときもあれば、ちょっと格変化なんかしたり句動詞(不正確に言えば「熟語」って奴に近い)だったりすると役にたたないこともわかったり。

 ここのところ読者がめっきり減ったのもお盆のせいで、Asunderのせいではないと祈りつつ、この小説のキャラ紹介、背景説明の部分はこれまででようやく終わったんで、ぼちぼちと進めていくことにします。

(追加)ああ、それから、読み直して気に入らないところは後から無断でどんどん修正していきます。今はとても完成されているとは思えないし、いつが「完成」なのかもわからないですけど。明らかな誤訳は避けているつもりですが、微妙なのはあるでしょうしね。

【DAI】Dragon Age Asunder (5)

 リースは、そこがどこか見当もつかない暗闇の中で目を醒ました。

 頭が割れるような苦痛、それから恐慌が襲ってきたが、サー・エヴァンジェリンの警告を思い出すと、自分が毛布もなしでダンジョンの独房に転がされていることがわかった。吐き気を催すほどの悪寒に何時間ほどか耐え、ようやくエヴァンジェリンが現れた頃には譫妄状態に陥りかけていた。彼女によれば、リースが収監されてからたった一日しか経過していないという。

 エヴァンジェリンはタワーの下層部で出会ったときの様々な質問をここでも繰り返したが、リースは沈黙を守った。今となってはそれに答えても意味がないし、テンプラーが万が一にも彼の話を信じるとは思えなく、せいぜい保身のための言い逃れとしか受け取られないであろう。

 エヴァンジェリンは、彼がリバタリアンズの集会に参加していたと白状させたいのだろう。他に行方をくらましているメイジがいるわけでもないはずなのに。あるいはテンプラーたちの陰謀に加担していると思っているのだろうか。他に身も凍るような恐ろしい考え方もある。何か適当な嘘を捻り出せればいいのだが。

 エヴァンジェリンは致し方なさそうに立ち去った。リースは闇の中に寝そべり、飢えと渇きに耐えながら、ただひたすら成り行きを待つしかない。今のリースはコールにとって格好の獲物ではないか。彼に殺されてもテンプラーは陰謀仲間に始末されただけと思うのではないだろうか。手枷さえなければスピリットを召喚して牢の鍵を開けることができるかもしれないが、その先には脱走を阻む古代の死の罠がそこここに仕掛けられている。

 リースは、コールの姿などはじめから見かけなければよかったと思いたかった。一方で、いまわの際に彼が救い出しに来てくれるのではないかとも期待したが、その考えが浮かぶたびに、彼はしばらく啜り泣き、それからその考えを打ち消した。

 コールが同行を拒否したときに黙って立ち去り後は放っておけばよかったのか。だがコールが殺害を続けたらタワーのメイジたちが皆災難を被ることになる。自分の後にはエイドリアンが、それから他の疑わしき者たちがやり玉にあげられるだろう。それとも、どうせ殺されるなら真実を話すべきか?
 あるいは殺される代わりに何の感情も持たないトランクィルにされてしまい、知っていることを何もかも話すことになるのか。

 証拠も裁判もなく、疑わしきだけで罰せられることに対する反抗心がリースの心の中に湧き上がり、身体が少しほてってくるのが心地よい。やるならやってみろ。コールも来るなら来い。あらゆる魔法で戦い、目にものを見せてやる。

 独房の扉が開いたとき、すでに覚悟はできていた。ひとりのテンプラーが着替え用の衣服一揃いを持って現れ、リースに着替えるように促した。彼を浴場に連れていくのだという。そのテンプラーによればリースが独房にいたのは四日間であった。

 テンプラーたちの談笑する声が聞こえる通路から詰め所に入ると、そこにいた三人の非番の騎士たちはリースを一瞥するだけで、何の興味も示さずにワインを飲み続けた。リースを連行してきたテンプラーが、テーブルの上にある飲み水の器とシチューの椀を指し示す。リースは自分でも気が付かないうちに、まるで仇相手でもあるかのように猛然と料理に取り掛かっていた。すっかり冷め切っていた料理は人生最良の食事に思われ、飲み水はまるで不老不死の妙薬のような味がした。数日振りの食事に胃が抵抗したらしく、リースが激しくむせ返ると、その様子を見てテンプラーたちがゲラゲラ笑った。

 次に通された浴場の前室には小窓があり、久しぶりの陽光がリースの眼を痛めつけた。やがて現れた若いエルフの女性が額の印からトランクィルであると知ったリースの頭には、この入浴が自分のトランクィルの儀式の準備かもしれないとの考えが浮かびあがった。心の準備のためリースは、その女性に儀式は痛みを伴うのかどうか尋ねたが、規則上儀式について話すことを禁止されているというのが彼女の返答であった。

 だがそれもリースの取り越し苦労で、彼女の役割は浴場まわりの世話だけであった。自分は放免されたのかとリースが尋ねても、彼女が知るはずもなかった。
 見知らぬ女性の前で全裸になることを一瞬躊躇したリースは、トランクィルにとって恥じらいもまた意味をなさないことに思い至り、ローブを脱いで女性に渡した。

 前室からの去り際に、トランクィルの女性は立ち止まってリースのほうを振り返るとこう告げた。仮に儀式が痛みを伴っていたのだとしても、今の彼女には何の意味もないことであり、かつて恐怖を感じていたとしても、今は奉仕のことしか思わない。どんな痛みがあったとしても、受け入れられる範囲の得失であったに違いない。
 湯加減はほとんど熱湯並みだったが、リースは心に冷たいものが走るのを感じた。

***

 それから一時間ほど経った頃、リースは、ホワイト・スパイアの大講堂の中にいた。かつてここにあった皇帝の玉座はとうの昔に取り除かれているが、豪華な天井とステンドグラスの窓が過去の栄華を物語っている。今やここはテンプラー騎士団の権力の証となっており、メイジたちがここで集会を開くことさえ稀であれば、大勢のテンプラーたちの監視抜きにそうすることもできなかった。

 メイジたちは長い大講堂の真ん中あたりに集まっており、何人かずつに分かれて興奮した口調で話し合っている。入口に立っているリースが見たところ、数百人のサークル・メイジ全員が若いアプレンティスまで含めて呼び出されているらしい。

 赤い巻き毛の女性がわき目も振らず近づいてくる。エイドリアンは、リースがダンジョンから解放されたことに驚いており、リースは自分の人柄が良いせろうだと軽口をたたく。
 だがここにメイジ全員が集められている理由はふたりとも知らない。ロード・シーカーからお告げがあるのかもしれないし、あるいはエイドリアンの言うとおり、テンプラーがメイジ全員を屠殺するつもりならこのほうが便利だろう。

 エイドリアンはリースの手を引いて集会の中に連れていく途中、彼が不在中の出来事について話す。テンプラーはリースの消息について何も話そうとしなかったので、エイドリアンたちメイジの一団はそのことに抗議するため、剣を抜いたテンプラーの集団と実際に睨み合ったのだそうだ。ファースト・エンチャンター・エドモンドも他のシニア・エンチャンターたちとともにエイドリアンたちを支持し、ロード・シーカーとの会見を要求したという。
 自分の身の安全を守るために他の者たちがこぞって身体を張ったことを知らされ、リースは冗談で返すこともできないほど言葉を喪った。自分が逆の立場ならそうできただろうか。

 エイドリアンによれば、その睨み合いの場にサー・エヴァンジェリンが現れて、テンプラーたちには剣を収めるように告げ、メイジたちにはリースが深夜無断で自室から抜け出してピットに入り、なんらかの戦いを繰り広げたことを伝えた。

 それを聞いてリースは、エイドリアンはじめとしたここのメイジたちは、彼が事の真相を語ることを期待しているのだと知った。誰かを探しに下層まで降りて行ったことが事実かと尋ねるエイドリアンにリースがそうだと認めると、彼女は今更何も聞きたくないと憤りとともに告げた。エイドリアンこそコールの一件を最初に伝えるべき相手だったのはリースも認めるが、それを知った彼女の後の振舞いのことを想像すると、とても事実を告げることはできなかったのだ。
 リースは謝罪と感謝の気持ちを伝えるため、群衆の中にファースト・エンチャンター・エドモンドの姿を探したが、見つけることができなかった。

 エイドリアンは、ジュノー以外のリバタリアン・フラタニティのメンバーたちが集まっている一角にリースを連れてきた。。
 半笑いでリースを出迎えたエルフ独特の眼をした男性は、フラタニティの前のリーダーだったギャリス(Garys)だ。今はエイドリアンがリーダーを引き継いでいるが、謀略によって地位を奪ったのではなく、どのみち彼女はリーダー以外の役割に満足しないし、そうでなくても結局好き勝手やるからだった。それ以降ギャリスはエイドリアンとリースに何の重きも置かないような態度を取り、ふたりも彼に同じように接していた。彼の存在こそ、リースがホワイト・スパイアのリバタリアンズとエイドリアン抜きでは付き合おうとしない理由だった。

 ギャリスは、リースが解放されたことを歓迎する素振りを見せるが、彼とテンプラーとの間に取引きがあったに違いないという疑いを隠そうともしなかった。自分は何も知らないのでそうしようがないとリーズが言っても、なんでもでっち上げることができるはずだ、というのがエルフの答えだ。リースはリバタリアンズに不利になるようなことは何もしていないと弁明した。

 リースへの疑いを一蹴したエイドリアンは、今はフラタニティが団結しなければならないと言うが、その前にリースが本当にリバタリアンズと行動を共にする気があるかどうか確かめなければならない、とギャリスは言う。リバタリアンズはリースの知らない何かを画策しているに違いなく、それにはリースの力を必要としているのかもしれないし、踏み絵を踏ませようとしているのかもしれない。彼らがジュノーとともにディヴァイン暗殺計画に手を染めていたかどうかはわからないが、そんな秘密を守れるはずもないエイドリアンが関与していることなどあり得ないだろう。

 両脇に並べられた座席に着くためメイジたち全員が移動する足音が大講堂に轟き渡り、会話を続けることが困難となったので、運よくリースはフラタニティの詮索から解放された。エイドリアンはふたつ並んだ空席を見つけるとリースに自分の隣に座るように合図した。

 しんと静まり返った中を、盛装用の黒いローブを纏ったファースト・エンチャンター・エドモンドが登壇し、決まりきった儀礼用の挨拶をはじめるが、すぐに言葉に詰まって目を閉じる。そして自分のような者の話よりも、この場で話をするに相応しいお方がいると告げる。

 入口から入ってきたのは高齢の女性だが、寄る年波に押しつぶされそうなファースト・エンチャンターと違って矍鑠(かくしゃく)としていた。青い絹のローブの上から豪奢な白いクロークを纏い、灰色の頭髪は既婚女性がやるように丸くまとめ上げられていたが、かつて美麗な容姿であったことは容易に見て取れる。顔には長年権力に慣れ親しんだ者特有の労苦が刻まれており、貫禄があると呼ぶほうが今の彼女にはふさわしいかもしれない。

 集まったメイジ全員が顔馴染みであるため紹介は一切不要であった。彼女こそ、アーチメイジにして、九年前のブライトとの戦いにおけるフェラルデンの英雄、ウィン(Wynne)その人である。だが英雄が受けるに相応しい歓待はここにはなく、さざ波のような拍手の他は、不意の衝撃がもたらした沈黙が支配していた。カレッジ・オヴ・エンチャンターズが閉鎖される以前に執り行われた、チャントリーからのサークル独立提案の投票を否決に導いた張本人であるため、彼女を裏切り者とみなす者がここにも大勢いるのである。エイドリアンにそう言われるまでもなく、リースにとっては、エドモンドの代わりに話をする者としてウィンこそ最後まで思いもかけなかった人物であった。

 ウィンは張りつめた雰囲気を無視すると、降壇するファースト・エンチャンターに丁寧に会釈し、それから涼しげな目つきで場内を見渡した。聴衆を品定めしているのかもしれないし、彼女に反感を抱く者が非難の声を上げるなら受けて立とうと言う意味かもしれないが、誰一人声を上げるものはいなかった。彼女の眼が自分の上でとどまっているように感じたリースは、できるだけ眼を合わせないように苦心した。

 ウィンがふいに白い杖を振りかざすと、その先から天井まで稲妻が走り、それを追って雷鳴が轟いたので、大講堂には動揺が走った。ウィンはまず魔法の破壊的な力を示したのだ。
 次に彼女はぼんやりとした人型のスピリットを召喚し、当惑しているその存在をしばし慈しんだ後で消し去った。それからスピリッツはこのように優しいものばかりではなく、メイジを混沌の世界に陥れるものも確かに存在していることに触れ、年端もいかないアプレンティスの男子に目をやると、無垢の者が最悪の恐怖にもなりかねないと悲しそうな顔で指摘した。

 そして、メイジ皆にとってわかりきったことを今更わざわざ持ち出すのは、他の者たちが自分たちに恐怖を抱き、掣肘を加えようとする理由そのものを、当の自分たちがいとも簡単に忘れ去ってしまいがちだからだと告げる。
 聴きながらリースは、エイドリアンをはじめとした回りの者たちの憤懣を感じるとともに、自分自身のそれをなんとか抑えつけようとしていた。 

 ウィンは、メイジが進むべき道をいくつか列挙する。チャントリーのくびきから解放されて自治を手に入れるのか。その際、テヴィンター・マジスターたちがかつて犯したような、世界を崩壊寸前にまで陥れる類の失策を二度と繰り返さないと誓えるのか。それとも圧制者にその過ちを認めさせるため断固戦うのか。たとえ圧制者を皆殺しにしたところで、何も変わりはしないのではないか。 

 ウィンは、一年前のカレッジ・オヴ・エンチャンターズの会合で自分が決断を下したときから事情が変わっていることは認めつつも、相手に何等かの屈服を求めるなら、自らも同じだけ譲らなければならないと訴えかけ、ここにいるメイジたち皆に耐え忍ぶことを要請する。

 異議を唱える大声が大講堂に響き渡り、それが自分自身のものであったと知ったリースは驚愕する。すでに座席から立ち上がっていた彼は皆の注目を集めており、ウィンもまた好奇に満ちた目で見つめながら、何か補足することがあるのかと彼に丁重に尋ねる。先にロード・シーカーに対して、今度はウィンに対して不用意に癇癪を起こしてしまったことを後悔しつつも、ここで引き下がれば敗北を意味すると考えて彼は続ける。隣のエイドリアンは、驚いたような、だがどこか愉快そうな顔つきで彼のことを見つめている。 

 リースは、サークルに閉じ込められもせずに外界を自由に往来することができ、トランクィリティの儀式に怯える必要もない人物の意見など、誰も聞く耳を持てないと主張する。賛同の声と拍手が特にエイドリアンから、その他リバタリアンズのメンバーからあがるが、反対する声も同時にあがる。

 ウィンは、自分の今の身分が棚からぼた餅式に勝手に落ちてきたものではなく、永年にわたるチャントリーへの奉仕と、ダークスポーンとの戦いを通じてチャントリーから信頼を勝ち取った結果であると答えるが、リースは、一生を通じてチャントリーの言うがままに暮らしているここのメイジの多くが、どうしてその信頼を得られないというのか、少数の過ちのためにどうして全員が連帯して処罰されなければいけないのか、とさらに追及する。  

 場内の賛同の拍手歓声も高まり、現れたファースト・エンチャンターが不安げな目つきでウィンに近づく。だがウィンは彼には首を振って、ここのメイジはチャントリーに対して何をしてきたのかと反論を続ける。タワー自体が崩壊しようとしているのに、待遇改善の議論を吹っ掛けているだけではないのか。ボートが急流に押し流されないためには、メイジもチャントリーも分け隔てなく、乗り合わせている者全員が必死に漕ぐ義務があるのではないのか。 

 リースは、自分に向けられたファースト・エンチャンターの顔を見てさらなる追及を思いとどまった。大聖堂両脇の壁側に座っていたメイジは皆立ち上がって怒りや不満の声を上げた。他の席の者たちにはウィンを支持して必死に拍手し続ける者も、彼女を専制者呼ばわりする者もおり、場内は混乱の大騒音が支配していた。

 そろそろ退散すべき時だと知ったウィンは、ファースト・エンチャンターが耳元で囁いた何事かにうなづくと渋々退場をはじめたが、互いに口論を続けるメイジたちの中にそれに気が付いたものはほとんどいなかった。 

 リースの横にはエイドリアンが立ち、回りのメイジたちの口論を、どこか戸惑った表情で驚きとともに見つめていた。

 「やるじゃん。あたしじゃあそこまで上手くできなかったかも」
 「まあね。どうやら僕の口には、僕と別の意思があるようだ」
 「その口好きよ。あなた、それを自分のためだけに使うべきじゃないわ」

 周囲ではリバタリアンズの者と、チャントリーの教えに唯唯諾諾と従うため「チャントリーの代弁者」と揶揄されているローヤリスツの者がいがみ合っていて、その諍いがやがて暴力沙汰になり、さらに多くのメイジが集まって騒ぎが大きくなる様子を、リースは辟易して眺めていた。 

 エイドリアンがお愉しみもそろそろ終わりだと言って指し示すように、入り口からはテンプラーたちが雪崩れ込んできた。彼らは手近にいるメイジを片っ端から拘束しては外に引きずりだしていった。多くのメイジたちは座席の近くから逃げ出し、一部は捕まった仲間を解放するためテンプラーにつっかかっていく。 リースは誰かがこの場で魔法に訴えるのではないかと恐れたが、それは杞憂であった。リースは他のシニア・エンチャンターたちと一緒に周囲の喧噪を見守っているだけだったが、やがて徐々に秩序が回復し始めると、エイドリアンに促されて大聖堂から立ち去ることにした。 

 人混みをかき分けながら大聖堂の出口まで向かうと、リースは高齢のトランクィルから呼び止められ、騎士団長室までただちに出頭するようにとのロード・シーカーからの伝言を受け取った。 エイドリアンと訝し気な目をかわしたリースは、この騒動が原因であれば実に手際がいいことを怪しんだ。もっとも、先刻までは囚われていた牢から出られるとは思いもしなかったことを考えれば、また牢に逆戻りだろうが、それより悪い事態があろうが、大したことはない気がした。
 エイドリアンはリースに同行するといって聞かなかった。彼女曰く、彼の「お葬式」に。

*** 

 今やロード・シーカーの居室である騎士団長室に向かうのは、死の行進のような感じがした。伝言を携えてきたトランクィルに付き従ってやってきた上層は先ほどまでの下層の喧騒と無縁なほど静謐である。リースはエイドリアンに対して、何があっても自分を救うため手出しするなと警告するが、彼女がそうしないわけがないこともわかりきっていた。

 リースは、一週間のうちに二度もここに出頭するのは記録的事態だと自虐的な気分だった。首都一帯が眼下に見渡せる窓は今度は開いており、晩秋の冷たい外気がリースを震えさせた。
 部屋の前には、中にいるロード・シーカーの存在に心から怯えていることが見て取れるテンプラーが二名で警護しており、出頭を命じられていないエイドリアンの入室を阻もうとするが、抵抗する彼女に傷を負わせれば自分たちが処罰されるかもしれないと恐れ、ふたりとも入室させる。

 以前のように机の向うにはロード・シーカーが座り、横にはエヴァンジェリンが立っているが、机の前の椅子に座っているのはウィンであった。彼女は即座にたちあがると、リースに静かに挨拶した。彼女がここにいるのは当然で、驚く必要もないと思ったリースも挨拶を返した。 

 「やあ、母さん」 

 エイドリアンの両のまつ毛が、彼女の前髪に突き刺さるのではないかと思うくらいまで高く持ち上がった。

 ロード・シーカーは、リースが引き起こした大聖堂での騒動について触れるが、ここに出頭を命じたのはそれが理由ではなく、集会の後でリースと面会することを予めウィンが依頼していたからだという。そうでなければどうして牢から出ることを許可されるのかと問われて、リースはようやく合点がいく。
 ロード・シーカーは、エイドリアンの同席は許可していないと告げるが、もとより彼女に退出する意思があるはずもなく、ウィンの口添えもあって許される。 ロード・シーカーは苛立たしそうな表情で、ウィンに要求を告げるよう促す。

 ウィンはリースに手助けを求めていた。ウィンは、ディーモンの影響でアボミネーション(異形の姿)になってしまった友人を救おうとしているが、そのためにはフェイドに侵入して憑依しているディーモンを打ち破らなければならない。その儀式は難しく、またウィンひとりで行うことができないため、リースの助力が必要なのだ。

 リースをタワーの外に連れ出すことなど事前に一言も聞いていなかったことに対してロード・シーカーが怒りを爆発させるが、ウィンは動じない。ディヴァイン暗殺への関与が疑われるメイジの外出を許可するつもりは断じてないというロード・シーカーに対し、ウィンはチャントリーの封蝋がついた羊皮紙の巻物を取り出して読むように促す。その書簡には、ディヴァインそのお方の名のもとに、チャントリーがウィンの任務に関してあらゆる必要な協力を約すると記されていた。

 ウィンは、スピリットとの媒介の才能があるリースが今回の任務に必要だと告げるが、ロード・シーカーは彼女を無視して書簡を精査し続け、最後にその書簡の入手経緯をウィンに問い質す。ウィンは、古い友人の口添えによって手に入れた、ディヴァインそのお方の手によるものだと答える。随分と古い友人が多そうだなと皮肉混じりに告げたロード・シーカーは、一人のメイジを救うため別の一人のメイジを危険に曝すのは勘定に合わない、本当の理由を言うようにとウィンを追及する。

 ウィンがその友人がトランクィルであったと答えると、リースと、ロード・シーカーふたりともが不信の叫びをあげる。トランクィリティの儀式はメイジとフェイドの関係を永久に絶つので、トランクィルはディーモンに憑依されない。チャントリーの教えでは、それが紛(まご)うかた無き真実である。

 ウィンは、そうであっても友人が憑依されたのは間違いないと言う。その友人はリースと同じようにディーモンの研究を続けていたので、途方もなく強力なディーモンに影響されたのなら、その正体を突き止めなければならないし、トランクィリティの儀式に欠陥があるならそれも調べなければならない。 

 しばし黙考したロード・シーカー・ランバートは、リースの外出許可は出さないと宣言するが、ウィンは、その権限はランバートにはないし、ディヴァインそのお方からの直接的な指図をお求めなら自分の古い友人を紹介すると皮肉を言う。しばしふたりの睨み合いが続くが、最終的にロード・シーカーが折れる。ただし彼は、リースが任務終了後ただちにタワーに帰還することを確保するため、サー・エヴァンジェリンに同行を求める。

 エヴァンジェリン自身も不意を突かれて茫然とした表情を浮かべる中、ウィンは護衛の必要はないと訴えるが、ロード・シーカーは今度はそれは自分の権限の範疇であると譲らない。危険なメイジ扱いされたことに不平を漏らすリースに対し、まだ知っていることを全て話していないだろうと決めつけるロード・シーカーは、彼への疑いを隠そうともしない。 

 ようやくロード・シーカーは、息子を正義の手から遠ざけようとするならディヴァインの介入に係らず始末をつけるとの脅迫つきで、リースがウィンに同行することを認める。それを受けてウィンは、リース本人の本意を確認する。拒否すればダンジョンに逆戻りだが、リースにとってウィンの本当の動機も不明だ。ただその友人とやらがディーモンの研究をしていたというのなら、コールの受けた呪いについても解明の糸口が見つかるかもしれないし、リースが殺害事件と無関係であることが証明できるもしれない。可能性はとても小さいが、今はそれしか頼りがない。 

 ウィンとの同行に渋々同意したとたんに、リースの後悔がはじまったが、同時にフェイドへの侵入の儀式には少なくとももうひとりメイジが必要であることを指摘する。それを聞いてエイドリアンが即座に名乗りを上げる。彼女は当然一緒に行きたがっているが、リースには、自分以上の危険に彼女を曝すつもりは元よりない。だが一方で危険に立ち向かうとき一緒にいて欲しいのは、彼女を置いて他には考えられないのも事実だ。さらにタワーから彼女を引き離しておければ、彼の次に彼女がダンジョンの牢に入れられる恐れもなくなるわけだ。 

 リースはエイドリアンも同行するように求め、ウォンは微笑みとともに、翌朝の出発まで、ふたりに旅の支度をするように告げた。ふたりが騎士団長室から退室すると、エイドリアンがリースに、彼とウィンとの間柄について何も知らされていなかったことについて、後でじっくり聞かせてもらうと迫ってきた。

 リースは、この旅によって単に自分の処刑が延期されるだけだとしても、少なくともこのテンプラーだらけのタワーから抜け出せ、新鮮な外の空気を吸えるに越したことはないと考えることにした。サークル・オヴ・メジャイの騒動についても、しばらく忘れることができる。そしてコールのことも。だがそれを考えるとリースの心も曇ってしまう。 

 一体全体、どこで何をしているんだ、コール?

2013年8月14日 (水)

【DAI】Dragon Age Asunder (4)

 リースがコールを最初に見かけてから一年が経つ。

 ちょうどカークウォールの叛乱勃発の報がホワイト・スパイアに届いた頃なのでよく覚えていた。不安に戦くメイジたちがテンプラーたちの手によって大講堂に集められたとき、ひとりだけ逃げ回りもせずに事態を見つめていた若者が今思えば彼だ。そのときも奇妙ないでたちだったが、転入してきた新しいアプレンティスか誰かだと気にも留めなかった。

 次に見かけたのは大講堂での講義の最中で、後部の座席で途方に暮れた顔つきをしていた。エイドリアンにそれが誰か尋ねると、いったい誰の話をしているのかとの返答だったので、それ以上話題にすることをやめた。自分はスピリットかディーモンに憑依されているのかもしれないと疑いさえした。 

 リースは注意深く周囲の者たちに聴き取りを行い、ゴースト・オヴ・スパイアの噂を聞きつけた。彼の研究はゴーストの類を否定するものであったからその噂はバカげていたし、スピリットが死者を装っているか混乱しているだけであろうと考えた。チャントリーの教えによれば、死者の魂はどこかフェイドの彼方でメイカーのお傍に召されるのだ。

 だが噂はリースの危惧をさらに大きくした。次に見かけたときこそ注意深く観察しようと待ち構えたが、見張り続けるポットはいつまでも沸かない、との訓えのとおり、その先若者の姿を目にすることはしばらくなかった。

 リースは、ゴーストの噂を口にする誰もが指し示すピットまで降りて探すことにした。正体がスピリットなら手なづけて、自分がなぜ察知できないのかを調べるつもりだし、それは自分が悪賢いディーモンに影響されていない証明にもなる。書庫の中や、規則上立ち入りを禁じられているタワーの一角まで探し尽くしたが実りはなかった。この一件が全て自分の想像の産物に過ぎないのではないかと疑い始めた頃、リースはコ―ルに、あるいは逆かもしれないが、ばったり出くわすことになる。 

 角を曲がったところに立っていた若者の姿を見かけたリースが声をかけると、今まで誰かに呼び掛けられたことのないコールは心底驚いたようで、その後落ち着かせるまでが一苦労であった。リースが自分を探しているのは知っていたが、リースに自分の姿が見えていたことは知らなかったのだ。

 はじめての会話はある意味で啓発的であった。コールは、テンプラーによってここの牢に連れてこられたことは覚えているが、その時期や、脱出した手段などは覚えていない。ほとんどの者から不可視となった理由も、一部の者だけに姿が見える理由もわからない。リースの質問責めを不快に感じたコールは、彼がその知識とともに自分をテンプラーに引き渡す可能性を恐れ、必死に拒絶した。リースは渋々同意しなければなかったが、どのみち彼が姿を隠すつもりなら、誰がこの話を信じるというのだろう。

 再会の約束を迫っても若者が沈黙していた理由は次の出会いでわかった。コールはそう強く求めれば自分の姿を相手に曝すことができるのだが、コールに関する相手の記憶は短期間で完全に喪われてしまう。リースも同様に自分についての記憶を喪うだろうと疑っていたのだ。
 だがリースの記憶は喪われず、当初はこの奇妙な謎を解明したい一心からコールと何度も出会いを重ねた。コールが不可視な理由がわかれば、普通の姿に戻せるかもしれず、その知識は何かに役立つかもしれない。人助けのための研究はリースにとって大事なことであった。 

 口には出さなかったが、コールも絶望的な孤独からの救いを求めていた。そのうちふたりの関係は友情に変化していった。若者は語り口こそゆっくりしているが、その精神は鋭く好奇心に満ち溢れていた。リースにとって彼こそは、恐怖と懲罰を原則とするサークルが機能していないことの完璧な証拠でもあった。コールが理解に満ち溢れたメイジたちの歓待を受けていたならどうだったか。コールの才能がおぞましいと見なされるのではなく、独特で素晴らしいものと受け取られていたらどうだったろうか。 

 リースはできる限りコールと会い続けた。ふたりでカードで遊びながら様々なことを話して時間を過ごした。コールはピットの中で見つけた秘密まで話した。だが話題がコール自身の謎に及ぶと、若者は闇の中に姿を消してしまうのだった。

 巡回中のテンプラーが不意に現れたことが一度だけあり、書庫でチェスゲームに興じていた二人の度肝を抜いた。だが一人きりでチェス盤に向かうリースを変人扱いするだけで、テンプラーは何も不審を感じることなく立ち去ってしまった。それまでリースは、コールの存在はたた単に認知されにくいのではなく、彼の存在を示す直接的な証拠を示された者には姿が見えるのではないかと考えていたが、この一件でそれが間違いであることが分かった。 

 やがてカレッジ・オヴ・エンチャンターズの会合が禁止されると、タワーのメイジに対する監視の目も厳しくなり、リースが人知れず出歩くことが難しくなっていった。コールとの会合の頻度が少なくなり、ふたりの関係はどんどん疎遠になっていったので、コールは近いうちにリースが自分についての記憶を完全に喪ってしまうだろうと疑うようになった。 

 リースは謎の解明のための調査を急いだが、書庫の蔵書から得るものはほとんどなかった。エイドリアンに事情を打ち明けたところで、リース自身が存在を証明できないものについてどんな助言を得られるというのだろうか。コールを救うことができずにいることでリースが抱く罪の意識も大きくなっていった。 

 いつもはコールのほうが先にリースを見つけていたのだが、リースがピットに最後に訪れたときは、テンプラーの霊廟でコールを見つけるまで数時間を要した。コールは蒼ざめ、体を患っているように見えた。挨拶もなんの前触れもなく、突然コールが僕は死んでいると思うかと問いかけてきた。

「死んでなどいない、私と同じように現実の存在だよ」
「君こそ現実ではないのではないか? 僕をいたぶるディーモンではないのか?」
「私がそんなことをしたか? 君をいたぶったか?」
「そうだ。いやそうじゃない」 

 リースはコールをファースト・エンチャンターのもとへ連れていくつもりだと告げるが、虐げられることを恐れるコールは拒絶する。コールはこのタワーに留まる必要すらないのだが、外に脱出したとしても人々が大勢いる場所を恐れるコールにはどこにも行く先がないのだ。そうでなくとも、多くの愉しみに満ちた外の世界をただの傍観者として見守る人生を送れ、などと言うことができるだろうか。 

 リースは仕方なくコールをそのままにしてそこから立ち去った。それが一カ月前の話だ。今日騎士団長の部屋に呼び出されるまで、リースがこの哀れな若者と殺害犯人を結びつけて考えることはなかった。コールはあくまで犠牲者であるという以外の発想が生まれることなどなかったのだ。 

 今リースの前にはコールが最後に会ったときと同様の不機嫌な表情で座り込んでいる。この若者の力を理解していると思い込んでいたリースは間違っていた、というよりもなお悪い大ばか者だったのだ。だがリースの心の一部は、いまだに何か説明があるはずだとの発想にしがみついている。 

 コールは自分がメイジ殺害犯人であることを否定せず、その理由は必要に迫られていたせいだと伝えた。なんとか説明のつく理由を見つけようとするリースの質問に対し、コール自身はブラッド・マジックを含めた魔法を用いることもできなければ、エンチャンター・ジュノーと話したこともないと答えた。だがコールはジュノーが他のメイジと密会している場面は目撃していた。デヴァイン暗殺を目論む集団であったかどうかとは別に、そもそもコールの姿を見ることができない彼らが、コールに何らかの魔法を掛けて操ることはあり得ない。 

 コールの姿を見ることができるのは、リースを除けば彼が殺害したメイジたちだけであった。犠牲者たちはコールが彼らの元に出向いて行くまではコールの姿を目にすることはできないが、出向いていけば彼らが自分の姿を見ることができるようになることをコ―ルは予め知っていた。

 コ―ルは、自分が水を張ったプールの中に浮かんでいるようなものだと言った。目を閉じれば自分の息以外何も聴こえず、回りのすべてが闇に包まれる。だがときどき二度と外に出ることのできない水中に沈んでいるように感じるときがあり、食い止めなければ現実とそうでないものの区別がつかないところまで沈んでいって、自分が永久に消え去ってしまうのではないかという感覚に襲われる。踏み留まるためには自分の姿を見ることができる誰かを殺さなければならない。それは、コールが殺す相手にとってこの現実の世の中で最も重要な人物になることを意味するからだ。重要な人物になるということは現実の存在になることか と問うたリースに、コールはリースが同じような感覚に見舞われることはないのかと尋ねる。 

 リースにとってより重要なことは、コールは自分も犠牲者に選ぶだろうかということだった。リースはこの若者を救いたいと望むのと同時に、その考えが誤魔化しであることも知っている。コールはもう救いようがない。 

 リースはコールの肩を掴んでその体を宙に持ち上げると、一緒にテンプラーのもとに出頭するように促した。メイジを次々と殺して回る犯人がタワーを自由に徘徊できるブラッド・メイジだとテンプラーが結論づけた場合、タワーのメイジたちの身に降りかかる災難がどれだけ悲惨なものになるか想像に難くない。その惨事を避けることができる証拠はコールの存在のみなのだ。
 だが、コールの正体が明らかとなったとたんに彼を救う望みも絶たれるだろう。そもそも病に冒されていて、自分の存在を維持するために殺害を繰り返すコールは罰を受けるに相応しいのだろうか。

 リースの両手を振りほどいたコールは、リースを怒らせるつもりはなかったと泣きじゃくりながら謝罪し、ふたりで話し合うこともやめたくなかったと訴えるが、リースに同行してタワーの上層に向かうことは最後まで拒み続けると、隙を見て扉に向かって駆け出した。 

 コールを追って暗闇の中に飛び出したリースは、ピットまでの階段を一番下まで勢いよく駆け下りる。逃げ続ける若者の姿を遠目にとらえたリースは、手にした杖から白いエナジーの塊を撃ち出して、コールの頭上の壁に命中させる。壁の一部が崩落し、コールの恐怖に満ちた悲鳴が聞こえてきた。追うリースは巻き上がる塵煙のために咳き込み、口元を隠しながら走り続けた。

 コールは通路の天井から降り注ぐ瓦礫を恐れてうずくまっているように見えるが、身体は無事なようだ。相手を殺すつもりのないリースが安堵して近づいていくと、当初怖気づいたと見えたコールは、刃の部分がギザギザになったダガーを握りしめ、殺気立った眼をしてリースを待ち構えていた。 

 二人はしばらく睨み合った。リースは自分が救おうとしていた若者が、実は羊の皮を被った狼であることを知り、それについてコールが何の嘘もついていなかったとしてもやはり裏切られた気分だった。

 最後の警告とともにリースは杖のオーブにエナジーを蓄え始める。リースが攻撃を撃ち出す瞬間、コールは反対側に身をかわす。外れた攻撃の衝撃で頭上からさらに多くの岩が降り注ぎ、塵煙がさらに濃く舞い上がると、たまらずリースは咳き込みながら後ずさりした。

 リースが気を取り直して見てみると、コールの姿はそこにはなかった。天井に空いた大きな隙間まで砂塵の筋が続いている。リースは通路の崩落の危険まで気が回らなかったことを反省したが、ここで追跡をやめるつもりはなかった。誰かをテンプラーに突き出すことを毛嫌いしていた彼だが、もうその考え方も捨てた。メイジが殺害事件に関与していないことを示すにはコールを生贄として突き出すしかないのだ。ただし、テンプラーたちが出会って数分で彼のことを忘れてしまわないように、メイカーに祈らなければならないのは言うまでもない。

 リースは塵煙の中に飛び込み、コールの追撃を再開した。今度こそしくじらないと気を引き締めながら。 

*** 

 エヴァンジェリンは疲労困憊していた。予定通り自室で就寝していればエンチャンター・リースが姿を消していることに気がつきもしなかっただろうが、最終点検のため訪れた共同広間で立哨が何らかの光を追いかけてほんの短い間持ち場から離れたとの報告を受け、何が起こったのかたちどころに理解した。

 テンプラーの任務に長い間従事していれば、魔法は稲妻を撃ち出すだけに使うものではないことくらいわかりそうなものだが、テンプラーの訓練では想像力が身に付かないのは明らかだ。リースがスピリットを操る能力を有していることに思い至れば、答えは容易に想像がつく。 

 今、彼女はファースト・エンチャンター・エドモンドに付き従って、フラクタリ・チャンバーへの長い階段を登っている。二段進むごとによろめき、立ち止まってかすんだ目をこすっているご老体には気の毒な苦行だが、他に致し方もない。

 ふたりはチャンバーの前室にあたる石造りの部屋に到着した。フラクタリ・チャンバーの扉はドワーフの手による複雑な建造物で、強力な魔法の集中攻撃にも耐え、たとえこのタワー全体が崩壊したとしても無傷で残るほど頑丈である。もちろんその際、内容物はすべて破壊されているはずなので、エヴァンジェリンはいっそこのチャンバーを地下に埋めておけばいいのではないかと訝しく思う。メイジの手が届かないように高い場所に置くという子供だましの発想の産物かもしれない。 

 チャントリー創設以来の慣わしとして、チャンバーの扉はテンプラーとメイジ双方が揃わなければ開かない造りになっている。チャンバーの警護は、カークウォールの叛乱を受けて前任の騎士団長イーロンが要員を配置するまではそのポスト自体が必要とされていなかったくらいで、タワー中で最も退屈な任務であるのは間違いないが、騎士隊長の深夜突然の来訪に、先ほどまで居眠りしていたに違いない当番の騎士は色めき立った。 

 これは本当に必要なことなのかと最後まで懐疑的なエドモンドを、エヴァンジェリンが脅迫を交えて説得する。ふたりがテンプラーとメイジそれぞれのために用意されたガラスのプレートを素手で押さえてパワーを流し込むと、チャンバーの複雑な扉のメカニズムがゆっくりと作動をはじめた。扉の表面を隠していた多くの円盤状の仕掛けが別々な方向に移動していき、一番奥に取っ手が現れた。エヴァンジェリンがそれを引くと、この古代からある巨大な扉全体がまるで昨日油を差されたかのように音も立てずに円滑に開き、ドワーフの技術の優秀さを証明した、 

 天井まで続く六本のピラーのうち五本が正五角形の頂点それぞれに、最も大きな一本がその中心に配置されているチャンバーの内部は確かに壮観である。それぞれのピラーの側面には繊細なガラス製の小瓶が列状に並び、それらが金属の階段で囲まれている。小瓶それぞれにはサークルに所属するメイジひとりひとりのほんの数滴づつの血液が入っていて、込められた魔法の力で輝いている。そのためピラーそれぞれが暗い光に輝く宝石で覆われているようにも見え、チャンバー全体ではぞっとするような深紅色の蒼白さを示している。禁断の代物を示す色だ。 

 エヴァンジェリンがここを嫌いな理由は、それぞれの小瓶が微かに震動していることを、音ではなく体で感じるからだ。その感覚はここに長く留まるほと強くなり、最後には気が狂いそうになるだろう。彼女にはフラクタリの秘術とブラッド・マジックの間に大きな違いは感じられないが、フラクタリはテンプラーにとって有益だから使用を許可されているのだ。全体善のためには少々の偽善もやむを得ないということに違いない。

 彼女の隣に立つファースト・エンチャンター・エドモンドは、苦々しげな表情でピラーを見上げていたが、エヴァンジェリンが自分の方を見ていることに気が付くと、まるで質問に答えるように「リースはいいやつだ」と言った。

「ジュノーもそうだったと言われるおつもりでしょうか」
「そうではないと言っても、どのみち信じてはもらえんのだろうな」
「確かに」 

 エヴァンジェリンは、中央のピラーに近づき階段を注意深く登り始める。途中でいくつかのフラクタリが輝きを喪っていることに気が付き、死んだメイジの分はここを管理するトランクィルたちに整理させるよう要請しなければと銘記したものの、現在の責任者であるロード・シーカーがそんな日常作業に興味を示すはずがないことを思い出した。

 リースのフラクタリはピラーの真ん中あたりに見つかった。小瓶に記されたルーン文字と記録台帳を照合して間違いのないことを確かめたエヴァンジェリンは、人間離れした几帳面さで知られるトランクィルが間違いを犯すことは本当にないのだろうかとふと思った。テンプラーはトランクィルたちをこれ以上ないほど信用しているが彼らとて元はメイジである。彼らが刃向う可能性をチャントリーは公式に否定しているが、かつてはメイジの叛乱だってあり得ないと言っていたのだ。

 エドモンドはエヴァンジェリンを見上げてこう言い放つ。

「それで今度はメイジたちを居室に閉じ込めておくつもりかね。かつてタワーの自治はずっと長い間メイジの手に委ねられていたはずなのに。メイジを入れる箱をどんどん小さなものに移し替えて行ったって、最後にそのまま消えてなくなるわけじゃないんだぞ」
「では、カークウォールのように叛旗を翻すとでも?」

 リースのフラクタリを手にしたエヴァンジェリンは怒りを押し殺しながら階段を降りて来る。彼女は、カークウォールのメイジたちのほうがここよりずっと熾烈な状態に置かれていたことは認めるものの、両者が置かれた状況に鑑みれば同列には扱えないだろうと指摘する。
 エドモンドは、ディヴァインへの攻撃は疑いもなく愚かであったと認めるが、たったひとりの犯罪のためにメイジ全員が憂き目に合うのは避けたいとの考えだ。
 

 エヴァンジェリンは階段を降り切ると、エンチャンター・リースは犯罪に関与しているわけではなく、誰かの罪を押し付けられているだけかもしれないと言う。

「テンプラーは、メイジたちを守るためにここにいるのです。あなた方が好むと好まざるとにかかわらず」
「例えそのために我々が命を落としたとしても?」 

 エヴァンジェリンが即座に反論しようとするのを遮り、言い過ぎたことについて謝罪すると、エドモンドはエヴァンジェリンが求めていたものを手に入れたかどうか尋ねた。

 警備のテンプラーにチャンバーの扉を閉めさせ、エドモンドには自室へひとりで戻ることを許可すると、エヴァンジェリンはリースの追跡を開始した。フラクタリに自分のパワーを与え、意識を集中させると、血の持ち主はタワーの中に留まっていることがわかった。

 フラクタリは血の持ち主のいる方角を示すことはできないが、近づくにつれ輝きを増していくので、エヴァンジェリンは小瓶を注意深く見つめながら階段を降り始めた。彼女がメイジの居室がある階層を通り過ぎてもなお下層に導かれていることは、あの立哨がほんのわずかの間しか持ち場を離れなかったという報告に嘘がなければ、リースが隠し通路を利用したことを示しているのに違いない。 

 人気のない中庭やチャペルを通り過ぎ、エヴァンジェリンはピットに向かって降りていく。まず最初にダンジョンに向かおうとしたのは、そこでリースを探すためではなく、誰にも告げずに捜索するのを避けたかったからで、危険かもしれないメイジに一人で立ち向かうのが無茶なことをほんの少し前に思い知らされたからだ。フラクタリもダンジョンを指し示してはいない。 

 この憂鬱なダンジョンは、チャントリーがここを用いるよりさらに以前、コーディリアス・ドレイケン皇帝の要塞時代の遺物である。皇帝はチャントリーの創設者でもあり、多くのカルトが蔓延し、魔法が野放し同然であった当時には、このダンジョンにも空きがなく、拷問部屋は休みなく用いられていたのかもしれない。これらの施設の埃が払われることが今後あるのだろうか。

 ダンジョンの詰所には、ふたりのテンプラーがいて、エヴァンジェリンが探しているというメイジの姿は見かけないと告げるが、ひとりのテンプラーが下層で物音がしたと言ったことは彼女の興味を引いた。彼女はダンジョンを出て、さらに下層を目指す。 

 不慣れな階層で通路を探しているとき、遠くで爆発するような音が聞こえた。彼女は駆け足で階段を降りながら剣を抜き去った。今度は鋭い電撃のような音がした。スペルを用いている者がいる。メイカーの名に懸けて、一体下で何がはじまっているのだ。戦いか? 

 何度も行き止まりや違う道に迷い込みながら、彼女は自分が最初からタワー全体に警告を発しておかなかったことと、タワーのこの部分はテンプラーがとうの昔に埋めておくべきだったのにそうしなかったことのそれぞれに対して小声で毒づいた。

 彼女はテンプラーの霊廟でエンチャンター・リースを見つけた。もうもうとした塵煙の中で、リース自身も薄汚れて塵塗れで、顔には血が付いているように見える。その杖は攻撃の準備をしている。 

 エヴァンジェリンがただちに攻撃をやめるように叫ぶ声に驚いてリースは彼女のほう振り返る。彼女は戦いも半分覚悟したが、リースは声の主が誰かわかると、即座に杖のエナジーを消し去って苦笑を返してきた。一体なんの用事でこんなところまで来たのかと問われたエヴァンジェリンは、騒音の正体を確かめるためと、行方不明のメイジを探すためだと答える。

 リースを注意深く見守るエヴァンジェリンは、彼が目を凝らしている廟内の遠い隅にも目をやるが、そこには焦げた跡と煙以外に何も見当たらない。だが間違いなく彼は何かを攻撃していたはずだ。リースが戦っていた相手はいくつもの隠し通路のどれかを用いてすでに退散したのかもしれない。

 顔を拭った手に血が付いていることに少し驚いた様子のリースは、自分をどうするつもりかエヴァンジェリンに尋ねた。
 エヴァンジェリンは彼に独房入りだと告げ、彼が反論する前に剣の柄で後頭部を強打して気絶させた。リースの杖からの光源がなくなると、あたりを照らすのはフラクタリの深紅の光だけとなった。 

 彼女はリースを跨ぐように立って周囲を警戒するが、何も見えず、何も聴こえなかった。一体このメイジはここで何をしていたのだろう?

 何かが眼の端に見えたような気がしたあたりを調べてみても何も見つからない。廟内には過去の英雄の彫像がいたるところに立っており、またゴーストに関する噂の影響もあってエヴァンジェリンはぞっとしない感じがした。

 気絶しているリースのところに戻ると、エヴァンジェリンは剣を収め、彼をなんとか担ぎ上げて歩き出した。だがこの場を立ち去るときにも、彼女は身の毛がよだつような感じがした。 

 誰かに見られているような気分がして仕方がなかったのだ。

2013年8月13日 (火)

【DAI】Dragon Age Asunder (3)

 リース(Ryes)は騎士団長室の前室で招き入れられるのを待っていた。窓から首都ヴァル・ロヨーの全景が一目で見渡せるホワイト・スパイアの高層部にメイジが足を踏み入れることを許されるのは、叱責されるのでもない限り極めて稀だ。テンプラーは誰も口にしないが、またしても殺害事件が発生したことは明らかだ。

 一緒に出頭を命じられたエイドリアン(Adrian)は、部屋の別の角を絶えずうろつきながら、まるで意志の力で開けようとしているかのように団長室の扉をにらみつけている。ふたりはサークル・オヴ・メジャイの暮らしをずっと共にしてきた間柄だが、彼女が持前の喧嘩っ早さを自重するところを、リースは今まで一度も見たことがない。 

 エイドリアンは外の者が考えるメイジらしさを著しく欠いている。背はちっちゃく、赤毛はくるくるした巻き毛で、こどもっぽいそばかすだらけの顔をしているが、そろそろ四十に近づく歳のリースよりほんの少し若いだけだ。それから彼女の悪態は行商女も顔負けするほどだ。

 リース自身にしてもメイジらしさからほど遠い。それを聴くたび笑ってしまうが、エイドリアンによれば男前すぎるのだそうだ。白髪が混じりはじめている顎ひげは確かに際立っているが、だからといって出会う女性が皆ぞっこん惚れ込むわけではないのだが。いずれにしろ、彼は闇に潜むことは大嫌いだし、「学者然」ともしていない。目がしょぼつくまで書庫に閉じこもって書籍と睨めっこすることの何が楽しいのかわからない。 

 ハロウィングの儀式を通過してこの方、サークル・オヴ・メジャイに長い間真摯に仕えたシニア・エンチャンターであるふたりに対し、このようにまるでアプレンティス(見習い)メイジのように扱う仕打ちにリースは憤りを感じる。

 エイドリアンはテンプラーたちがメイジたちに何ら情報を与えようとしていないことが許せない。リースもまた、カレッジ・オヴ・エンチャンターズの会合がチャントリーから禁止されてからこの方、状況がどんどん悪化していると感じていた。サークル外への旅行も許可の発効が延期され、集会も認められず、まれにホワイト・スパイアの大講堂にメイジが集められてファースト・エンチャンターが話をする機会があっても、そこで意味のある話がなされることもなくなった。もはや彼はメイジのリーダーではなく、単なるお飾りになってしまったようだ。 

 叛乱についても常に話題にのぼるが、一年前に蜂起したカークウォールのメイジたちの末路が伝わっている以上、 それもいつも話だけに終わるのだ。もし仮にエイドリアンが事態を打開する方策を見つけることができれば、リースも認めるように話が違ってくることは間違いない。 

 唐突に団長室の扉が開くと、二人の予想に反して現れたのは騎士隊長エヴァンジェリンであった。その隣に高齢のため以上に焦燥しきった顔つきのファースト・エンチャンター・エドモンド(Edmonde)が現れ、リースに心から申し訳なさそうな眼を向けると、黙したままよろよろと前室を出て行った。
 エドモンドを見送ったエヴァンジェリンは、一瞬緊張を解くかのように眼を閉じ溜息をもらすと、喧嘩を売ろうとしてつっかかるエイドリアンの抗議を一蹴して、リースだけを団長室に招き入れた。

 リースは室内のすべてのものが最後に訪れたときから何一つ変わっていないことを見て取ったが、部屋の主であった騎士団長自身の姿はそこにはなく、オーク材の机の向う側に座っているのは白髪交じりの見知らぬ男であった。鎧はテンプラーのものに似ていて異なり、その紋章もチャントリーの太陽(sunburst)に似てはいるが、中心に目玉のようなものが描かれている。男が最も印象的なのはその鋭く冷たい目つきだ。この男が躊躇なく人を殺めることができる戦士の類であることを感じ取り、リースは初めて自分の身の上を心配し始めた。

 リースが机の前の小さな椅子に腰を下ろして待つ間、男は一言も発せずに書類に目を通していた。リースから騎士団長が同席するか否か問われてはじめて男は机の上から目を離し、騎士団長イーロン(Eron)はすでに職を解かれたこと、自分はロード・シーカー・ランバート(Lord Seeker Lambert)であり、しばらくの間ホワイト・スパイアの指揮を執ることになったことを告げる。 

 リースがその紋章を目にするのは初めてだが、ザ・シーカーズ・オヴ・トゥルース(The Seekers of Truth)がテンプラーズの上位組織にあたり、ディヴァインそのお方に直接仕える特別な集団であることを知っていた彼の背筋に冷たいものが走る。シーカーズの名が表立って口にされることはなく、陰で囁かれるときでさえ重大事件の際にのみ姿を現すと言い伝えられているのだ。すなわち、今であれば殺害事件のことだ。 

 事件について問われたリースは、どのみちロード・シーカーがすでに全てを知っているかもしれないため、嘘を答えるのは思いとどまったが、従順に屈服することはよしとせず、できるだけ平静を装って対等な立場で知りうる限りのことを伝えようとする。だがそのやり取りを通して、ロード・シーカーがメイジの命や権利をことさらに軽んじているかのようであると感じたリースは憤り、テンプラーにはメイジを守る義務があり、メイジはここで起きていることを知る権利があるはずだと主張することを自制はできなかった。 

 相手の氷のような視線に接して、リースは率直な意見を述べたことを後悔するが、やがてロード・シーカーは、メイジをサークルに収容している理由の一つが彼らを守るためであることを認める一方、魔法が危険な力であることも指摘する。メイジが好まざるともディーモンに憑依されることもあれば、すべてのメイジがまっとうな意図を有しているわけでもないからだ。 

 同僚であったシニア・エンチャンター・ジュノー(Jeannot、仏語:ヤノット)が、昨夜ディヴァインの暗殺に失敗して殺されたことを告げられたリースは、自分が殺害事件の調査だけのためにここに出頭を命じられたのではないと知り、激しく動揺する。さらにジュノーがブラッド・マジックに手を染めていたことも告げられると、リースは自分がその事実を知っていたか、あるいは自分もそのひとりであると疑われていることを悟る。

 ロード・シーカーによれば殺害の犠牲者は六人で、うち四人がイニシエイト(新入会者)、ふたりがアプレンティスであった。全員が胸を一突きされて殺されているが、凶器は見つかっておらず、物証もなにもない。下手人は守衛をすり抜け、牢の鍵を開け、誰にも気づかれずに現場を立ち去っている。 

 リースは心に浮かび上がった考えをなんとか打ち消そうと試みたが無駄であった。その考えを伝える代わりに、彼はテンプラーの集団にこそ犯行が可能であると反論するが、エヴァンジェリンは部下の尋問を終えており、警護の編成変えも済ませていた。 

 ロード・シーカーは、マインド・コントロールによってテンプラーを昏睡させることも、その記憶を操作することもできるブラッド・メイジにこそ犯行が可能であるとの説を披露する。犯人が犠牲者の血を手に入れ続けるなら、事態はさらに想像もつかない段階まで悪化していくかもしれない。 

 エヴァンジェリンはディーモンによる犯行の可能性を示唆する。ロード・シーカーは、このタワーのメイジに影響を与えるほと強力なディーモンならそれも可能であるとし、リース自身が付近のスピリットやディーモンの存在を察知し、それらとの交流すら可能な特殊な媒体(medium)としての才能を有していることを持ち出してきた。

 ホワイト・スパイアはヴェイルが薄い場所であるため、リースは今までファースト・エンチャンターの許可を得て自らをフェイドとの媒体とする研究を続けてきた。カークウォールの叛乱以降、その手の研究は禁じられたが、依然としてリースはテンプラーに気づかれずにフェイドに侵入することが可能であり、夜な夜なディーモンと交流することもできる。ただし覚醒したままフェイドに侵入するにはメイジの集団による十分な準備が必要であるし、スピリットと交流している最中に憑依されないためには大変な作業が求められる。

 リースはその研究を行う都度、騎士団長の仔細な調査を経てその承認を得てきたのだが、ロード・シーカーにとってそのことはいかほどの意味もないようだ。とどのつまり、騎士団長イーロンは自ら管轄するタワーのブラッド・メイジを発見できなかったため解任されたのである。

 リースとエイドリアンは、ジュノーがそうであったようにリバタリアンズ(自由派)のフラタニティ(政治派閥)に属しており、エヴァンジェリンが危惧する理由はそこにあった。リースは、ジュノーとは格別親しくもなかったし、彼がブラッド・マジックに手を染めていたことも当然知らなかったと答える。

 だが、ジュノーと親しいメイジの名前を告げよとのロード・シーカーの要求は、フラタニティの要職にある者としてどうしても従うことができないものであった。リースは、独房に収監されることも、あるいは感情を奪われてトランクィルにされてしまうことも覚悟のうえで要求を拒み、ロード・シーカーとしばらくの間無言のまま睨み合うことになったが、拍子抜けすることには、やがてロード・シーカーは彼にただ退室を命じただけであった。

***

 エイドリアンが受けた尋問もリースのそれと大差のないものであった。だが、憤懣やる方ない顔つきで共有広間(commons)をうろつき回り、メイジを陥れる陰謀について聞く耳のある者は誰であれ捕まえようとする彼女の姿を見る限り、より悪い結果を招いたと言えるかもしれない。 

 共有広間は本来集会のための場所ではないが、ふたりの尋問が終わる頃には大勢のメイジが集まっていた。彼らは、カークウォールのサークルがその運命を辿ったようにここでもライト・オヴ・アナルメントが発動され、サークルの全面廃止と所属メイジ全員の処刑が執り行われるのではないか、さらなるメイジの叛乱を恐れるテンプラーはそこまでの強硬策をとらないのではないか、だがテンプラーの我慢はどこまで続くのか、などと言い合っていた。

 エイドリアンはメイジこそどこまで我慢し続けるのかと問いかける立場だ。ジュノーひとりがディヴァインの傍まで造作なく近づけるはずもなく、彼女にとってロード・シーカーの話は悉く疑わしいのだという。
 リースが危惧していたのは、カレッジ・オヴ・エンチャンターズの閉鎖によって平和裏に自由を獲得する希望が挫折したと考え、直接的な行動を主張する一派がリバタリアンズの中に生まれているという噂であった。禁断のブラッド・マジックに手を染める者たちがこの先も出かねない。 

 だがリースは何よりも、自分以外は誰もすべての真実を知らされていないことに対して罪の意識を感じていた。彼は自分だけが知る秘密を、テンプラーに対してだけでなく、メイジ仲間に対しても伝えていないのだ。

 怒りが収まる様子のないエイドリアンは、リースのほうにずかずかと歩み寄ってくる。

「あなたは何もする気がないの?」
「しているさ。皆の様子を見ている」
「他に何か役に立つことをしなさいよ!」
「いとしい人、エイドリアン。一体全体、僕に何をさせようとしているのさ。君は激怒に塗れているようだけど、それを見ているだけでこちらは辛いんだよ」

 エイドリアン自身は回りに敵が多すぎて人望がない。彼女の見立てでは、メイジたちの信望を集めて何か事を起こすことができるのはリースを置いて他にいないのであり、それはあながち的外れな考えでもなかった。

 エイドリアンはファースト・エンチャンターが役立たずであることを当の本人に聴こえるように大声で述べ立て、エドモンドは目を閉じて苦しそうな顔でそれを聴いている。他のシニア・エンチャンターもあてにならない以上、エイドリアンはリースが何か行動を起こすべきだと要求する。

 いつものようにリースがそれでは何も解決しないと答えると、彼女もいつものように失望を隠さなかったが、今度は少なくとも他のメイジたちに殺害事件の話は詳しく伝えるべきだと主張しはじめる。だが、それこそリースが一番話題にしたくないことであった。リースがその答えを言い澱んでいるとき、数人のテンプラーがやってきて、メイジたちにそれぞれの居室へ戻るよう促した。エイドリアンは彼らとの対決も辞さない構えだったが、ファースト・エンチャンターがテンプラーの指示に従うよう皆に告げて事なきを得る。 

 シニア・エンチャンター以上のメイジにのみ与えられる一人部屋に戻ったリースは、深夜まで寝床に横たわって天井を見つめて過ごしていたが、テンプラーの巡回が途絶える頃を見計らうと、意を決して居室を抜け出すことにした。

 リースは、小さくて単純なスピリットであるウィスプ(Wisp)をヴェイルの向う側から召喚すると、こちらの世界を飛び回れることが嬉しくてしょうがないこの存在を斥候替わりにして通路を先行させる。ウィスプの意識を借りて覗いた光景に、立哨についているひとりのテンプラーの姿が見えたので、リースはウィスプにその光で立哨の注意を惹きつけさせ、自分の姿を見とがめられることなく目的の場所まで進むための短い時間を稼いだ。 

 メイジたちはホワイト・スパイアにたくさんの隠し通路や隠し部屋があることを知っていた。小さな倉庫に辿り着いたリースはそこに隠された入口から隠し通路に潜り込むと、長い間その中を這い回り、最後にはダンジョンからほど遠くない地下の小部屋へ墜落同然に飛び降りた。
 不格好な着地で体を床にしたたか打ち付けた苦痛からようやく立ち直ったリースは、すぐ目の前の地べたに尻をつけて座っている、ぼさぼさのブロンドの髪をした若い男性の姿を見つけて息が止まりそうになる。若者はメイジでもテンプラーでもなく、汚れと埃塗れのレザーを身に着けており、何年も風呂に入ったことがないようだ。その様子はまるで身を隠すものもない開けた場所で見つかり、恐怖のあまり逃げ出すことさえままらなくなった地下牢の鼠のようであった。

 「コール! 驚かすなよ、死ぬかと思った!」
 「長い間会ってくれなかったね。忘れられたのかと思っていた」
 「忘れてなんかいないさ。ここに来るのがどんどん難しくなってくると言っただろう?」 

 墜落時の衝撃と痛みを克服すると、リースはここにやってきた理由を思い出した。自分に質問があると問われたコールは、リースが口を開く前からその中身を正確に知ることができた。自分ではもうどうすることもできないので、どちらにしろリースの助けを借りに来なければならなかったのだ。

 「君なんだろう? 殺害事件の犯人は」 

2013年8月12日 (月)

【DAI】Dragon Age Asunder (2)

 オーレイの貴族階級社会では、公の場でマスクを被るのが習わしである。マスクの豪奢さは家系の裕福さを示しており、マスク職人は職人仲間の羨望の的だ。
 下僕たちも自らの主人に庇護されていることを示すため簡素なマスクを着用する。身分と無関係なマスクを着用することは重大な危険を招く。賢明な貴族はあたかも自らの評判を守るかのようにマスクを守る。

 オーレイでマスクを被らないことは、ふたつのうちどちらかの意味を示す。ひとつは数にも入らない庶民であること。もうひとつはその権勢を競い合うゲームを高みから見下ろしていること。

 ジャスティニア五世(Justinia V)、今宵この宮廷舞踏会に主賓として招かれたチャントリーのディヴァインそのお方は、取り巻きの尼僧たちともどもマスクとは無縁である。チャントリーはゲームを見下ろしているというよりもその埒外にある。とはいえ尼僧たちの中にもゲームに参加する者はおり、ディヴァインそのお方こそ最も優れたプレイヤーとの噂もある。 

 この舞踏会場でただひとり帯剣と鎧の着用を許されている黒髪の女性、テンプラー騎士のエヴァンジェリン(Evangeline)も、チャントリーの配下にある立場上マスクの着用を免除されていた。彼女は、曇りなく磨き上げられた甲冑の胸板の上からチャントリーの星の紋章(starburst)を金で縁取った彼女とっておきの真紅のチュニックを纏っている。長い黒髪も正餐の場にふさわしいように丁寧に編み上げさせたが、並み居る上流の者たちの煌びやかないでたちと比べる術もないのは承知していた。 

 エヴァンジェリンは、宮廷の女たちが自分について交わしている陰口も承知していた。美麗な容姿であるのにいまだに良人を見つけていないこともそのひとつだ。また剣士の道に進んだのはよほど下層の出であるせいか、それとも粗野な立ち振る舞いのせいなのかなどと取沙汰されていた。いずれも誤りであるが、今宵の彼女にとって、ディヴァインの身の安全以外に気にかけることは何もなかった。 

 舞踏会を主催したはずの女帝陛下の姿は見えない。陛下は辺地ハラムシラル(Halamshiral)の冬の宮殿(The Winter Palace)に赴いたとの噂がある。一番最近の恋人と会うためか、叛乱を鎮圧するためかはわからないが、その不在を気にかけている者は誰一人いないようだ。

 ディヴァインは高座に設えられた豪華な玉座に着いていた。オーレイの貴族たちは、否定しようのないほど超越した存在の者が相手であっても高見から見下ろされることをよしとしないので、とおり一篇の儀礼の後で猊下の席に近づく者は皆無であった。

 参列者が踊りを舞う様子を高座から見下ろす猊下の顔は無表情で、そこからは倦厭も何も読み取れない。エヴァンジェリンは猊下こそ氷のような優雅さの象徴であると思っていたが、周囲の者が話題にするのはその若さだけであった。よぼよぼになるまで生きた先代のようには長生きしないで欲しいと願う者さえいた。 

 オーレイの習わしとしてそうした願望は密かに抱くだけであるのだが、背中には決まってダガーを隠し持っている。メイカーの選び給いしお方に対してそのような物言いがまかり通ることをエヴァンジェリンは嫌悪するが、帝国ではそれが常だ。
 舞踏の最中にも恋敵を巧妙に貶める策を弄した娘がいた。ここではその手の行いは密かに賞賛こそされ、糾弾されることはない。 

 猊下の高座の傍らでひたすら立ったままのエヴェンジェリンの足は棒のようで、自分の汗と香水が入り混じった匂いは耐え難いものになっている。彼女が見下ろす無数のマスクの波の中に、たとえ暗殺者や不審者が紛れていたとしても知る術はないだろう。 

 短い赤毛と碧眼が印象的な女性が近づいてくる。ディヴァインの側近のひとりとしてエヴァンジェリンも見かけたことがある女性だが、その落ち着いた身のこなしにも拘わらず尼僧のひとりではないと知って驚きを禁じえなかった。彼女がディヴァインの私的な警護の者だとしても、いざ事が起きれば自らの剣一振りのみで猊下をお守りできると考えるほど初心(うぶ)でもないエヴァンジェリンが気を害する理由もなかった。 
 極めつけの退屈な任務を気の毒がる赤毛の女性に対し、エヴァンジェリンは、騎士団長(Knight-Commander)は自分の出自を考慮して配置したに違いないと告げる。

 彼女たちが高座から見下ろす舞踏会は貴族同志の戦場でもある。今宵もすでに死傷者が生まれているが、優しい言葉と空約束を武器にして、この先も何度も何度も繰り返される、そう容易には決着のつかない戦いだ。

「この者たちは、富と権力をただ我が身の出世のためだけに費している。外の世界が瓦解しようとしているまさにこの時にでも」
 エヴァンジェリンの言葉に赤毛の女性は感心したようだ。「私の考えも同じですわ。猊下もきっとそのようなお考えでしょう」
「では少なくとも三人は賛同者がいるわけですね」

 からからと笑い声をあげたことに許しを請うと、女性はレリアナ(Leliana)と名乗った。エヴァンジェリンも騎士隊長(Knight-Captain)の役職とともに名乗るが、レリアナの口振りは、このテンプラーの氏素性から人柄まで当の昔に知り尽くしているようであった。

 ふたりはカークウォールのサークルが叛乱して街全体を巻き込んだ抗争のこと、その余波はセダス全域に拡大していること、テンプラーズとチャントリーは態度を明確に示すよう促されていることなどについて話をした。レリアナによれば、先ほどのエヴァンジェリンの言葉は十分態度の表明とみなされるものであり、だからこそ今宵猊下の警護に選ばれたのであろうという。 

 血相を変えた若いテンプラーが我を忘れて帯剣したまま舞踏場に駆け込んでくる。エヴェンジェリンの姿を見つけると彼女のレリアナとの会話を遮るための礼儀さえ怠り、ホワイト・スパイアでまたしてもメイジが殺害されたことを伝える。彼はディヴァイン退席後ただちにタワーに帰還すべしとの騎士団長のメモをエヴァンジェリンに手渡し、ロード・シーカー(Lord Seeker)閣下ご本人が本件に興味を持たれていることも付け加えた。

 若いテンプラーはレリアナにも伝言を携えていた。舞踏場の外にいた下僕のひとりから頼まれたもので、フェラルデンの古い友人がレリアナに会いたいという託(ことづけ)であった。 

 立ち去るレリアナを見送りながら、エヴァンジェリンは、猊下に仕えるエージェントの中には、策略ゲームのプロであるバード出身の者が含まれてるとの噂を思い出す。もしあの女性がそうならば、先ほどの会話は極めて危険な類のものであったに違いない。 

 楽団が最後の曲を奏で始め、気の早い列席者が別のお愉しみに興じるため退室し始める頃合いを見てとった主賓のディヴァインが立ち上がると、場内に静寂が訪れる。 

 ディヴァインのスピーチはエヴァンジェリンや居並ぶ尼僧たちの意表を突くものであった。猊下は、チャント・オヴ・ライトの発祥の地であるここヴァル・ロヨーからセダス大陸の半分近くにまでチャントリーの教えが行き届いたことを言祝ぐとともに、それが故にオリージャンがもはやメイカーにとって特別な存在ではないことを肝に銘じるように促したのだ。
 ディヴァインはスピーチを続けながら、舞踏場を埋める列席者たちの間にわけ入っていく。

 だがディヴァインがメイジたちに対する加護を訴えようとしたとき、列席者の中から嘘だとなじる叫び声があがった。紳士にしか見えなかった声の主である男性が自らマスクをはぎ取ると、その下からは憤怒に歪んだ顔が現れる。男は、チャントリーがメイジを都合よく利用するだけであり、その声に一切耳を傾けようとしないことを非難する。冷静に話を聴こうとするディヴァインの言葉を遮ると、男はカークウォールを手本にして戦うことを宣言し、魔法の詠唱をはじめた。場内の人々は恐慌に襲われ、我勝ちに出口を目指す。

 すでに剣を抜き去っていたエヴァンジェリンがディヴァインと男の間に割り込み、テンプラーのオーラで男の魔法を無効化すると、男はオーラでは阻止できないブラッド・マジックでエヴァンジェリンを弾き飛ばした。大理石の床に打ち付けられた衝撃で朦朧となったエヴァンジェリンは、男の繰り出す火の玉に額を焼かれつつも、それを全身に浴びることは辛うじて避けることができた。場内には何かが燃える煙の匂いが立ち込めはじめ、一刻も早くその場から逃げ出そうとする人々の混乱ぶりは手が付けられない様相となっていた。エヴァンジェリンの剣はどこかに飛ばされており、倒れたままの彼女の視界には、舞踏場の隅に追い詰められたディヴァインに迫るメイジのブーツだけが見えた。 

 男の魔法がディヴァインを葬り去ろうとする間一髪、エヴァンジェリンは男のローブの裾を掴むことに成功し、そのまま男の身体ごと床に投げ倒した。彼女の小手が何度か男の顔面をとらえると、やがて骨の砕けるような音がした。血だるまとなった顔から覗く男の眼は、まるで彼女を無言のまま糾弾しているようであった。
 そしてエヴァンジェリンは気を喪った。 

***

 目覚めたエヴァンジェリンは舞踏場のテラスの床に寝かされており、そこには惨劇に巻き込まれて茫然自失している多くの者たちが密集していた。舞踏場の内部からはまだ煙があがっていて、ようやく到着した消火隊が奮闘しても宮廷の半分は形が残らないに違いない。不在の女帝がお戻りになられ、その様を目にしたらどんな顔をされるだろうか。 

 エヴァンジェリンは、女帝の不在の間に起きたこのディヴァイン暗殺騒動は単なる偶然の産物だろうかと訝しがる。仮に女帝が事態に関与しているのであればテンプラーにはなす術がない。そうでなければ首謀者に罪を償わせなけれなならない。 

 レリアナがエヴァンジェリンの身を案じて近づいてきた。メイジの火の玉で被ったはずのエヴァンジェリンの火傷はレリアナが連れてきたメイジの治癒魔法によって跡形もなく消えていた。レリアナからディヴァインが安全にお逃げになったと聞かされ、エヴァンジェリンは安堵した。レリアナは、猊下がエヴァンジェリンの功績をいたく讃えておられることを告げ、たとえひと時たりとも自分がディヴァインの傍を離れるべきではなかったとの自責の念を吐露して、その場を立ち去った。

 テンプラーたちが次々と集結し、あたりの秩序は回復していた。魔法で治癒されたとはいえ、エヴァンジェリンは自分の骨がまだ軋んでいて、肺の中も煤だらけのままのような感じがした。

 魔法で何もかもケリがつくわけではない。彼女は肝に銘じた。

パシフィック・リム、マイナス・ワン

 日本の興行成績が思いのほか振るわないので、太平洋のあちら側ではカテゴリー2くらいのトロールがネットでブチ切れているようですが・・・。パシフィック・リム諸国で人気が出ていないのがジャパンだけですか。 ゆえにマイナス・ワン。

 こちらでのオープニング・ウィークはWWZにもローンレンジャーにも負けたんだって? だってあっち腐ってもブラピとかジョニデだぜ? 宮崎駿もあるし、あと精神年齢12歳のマッカーサー元帥がどうしたこうしたとかいう映画も来てるんじゃなかったっけ? トミー・リー・ジョーンズと西田さん相手じゃさすがに勝てへんやろ(と思ったら客が入っているのはモンスターズなんとかとジャ○ーズでした)。
 パシフィック・リムも当初はトム(クルーズ)を配役しようとしていたそうだが、司令官の役だよね? まさかリンコちゃんとパートナーにするつもりじゃなかったよね? ニコラス・ケイジにしろおっさんたちいい年して危なくてしょうがないからな。

 まあ、作中でもしっかり登場する大陸国はともかく、全く相手にされていない国のカテゴリー3くらいのヘイターがお得意の英語で日本ヘイトのネタを巻きまくっているんだろう。カイジュウにまで無視されちゃってお気の毒です。
(DAのゲイダーさんのTumblrでは、イェーガーのイラストがカナディアン仕様になって、それぞれDAライターたちがネーミングして遊んでいる。やっぱパシフィック・リムなのに登場しないのは悔しいんだろうなあ)

 もちろん、第二次大戦の連合国側しか地球を救っちゃいけない(そうでなければ配給会社のマーケティングが決して許さない)のだが、監督のWWIIテクノロジーへの思い入れの深さがあまりにも強く、日本はカイジュウのコンセプトとヒロイン、ドイツはマシンの名前にドイツ語が用いられ、また作中の科学者にイメージが投影された(科学者のひとりはゴットリーブ)。大英帝国は豪州が代理戦争で登場しているし(ゲイダーさんに悪いがカナディアンは出番なし)、仏国は・・・、ん、また忘れられたか?

 ほおっておくとまた見逃してDVD/BD待ちになってしまう。すでにアッというまに廃れてしまったはずの3D映画ですが、デル・トロ監督がせっかく撮ったのだから大画面で観たほうがいいだろうと思い、意を決して新宿の劇場まで行ってまいりました。

 以下ネタバレ・フリー。 

 監督の日本のサブカルへの尽きない愛に満ち溢れていて、個人的にはもちろんそれだけでえこひいき、好印象。流れるようなテンポの良さで、途中ずっと何の引っかかりもなく、プロットは予想通りに最後まで突っ走る。どこかで観たようなコンセプトもお約束のトロウプも(トップガン! ギャラクティカ! ハルマゲドン!)そこここに登場し、微笑ましくもあり騒々しいまでに賑やかでもあり、ハリウッドが大枚はたいたヴィジュアル・エフェクトもこれでもかってくらいてんこ盛りで、マイケル・ベイのやつと一体どこが違うんだっけと考える暇もありませんでした。あ、あっちよかギャグやウィットの類はこっちが数段面白いってのはありますね。

 でもこれは受けないなあ、日本では。新宿の大劇場でもロビーはごった返していたが、場内はわりと空いていた。これはきっとカイジュウとかこんなに愛されてたんだー、と愛でるものですね。先日のニューズウィーク日本語版で特集していた「ヘンな」ガイジンが日本文化にはまりすぎて日本人以上に極め尽くすようなもので、それをこっちがありがたがるって寸法だ。
 (勘違いする人はいないと思うが、この「『ヘンな』ガイジン」は100%誉め言葉である。ケチつけるような輩はカテゴリー4カイジュウ扱いすることにします) 

 ま、日本が作中に登場するとこっちもだいぶ甘くなっちゃうんですけど、そうじゃなければ、確かに新宿くんだりまで出向いて観なかったな。しかもいつも付き合ってくれる連れがちょうど体を壊していて、「ドリフト」状態でなかったのも、ちっと辛口な評価に影響しているかもしれない。

 個人的にはカテゴリー5(えこひいき込み)。でもきっと日本人一般にはカテゴリー3。

 DVD/BDをあわてて予約しなくてよかった・・・。

【DAI】Dragon Age Asunder (1)

 スパイアのゴースト(幽霊)は僕だ。 

 コール(Cole)は死んでもいないが、存在もしていない。生者の間を気づかれずに自由に行き来できる。

 オーレイのホワイト・スパイアにはサークル・オヴ・メジャイが併設されている。この夜更けには、若いメイジの男女が薄暗い回廊の片隅で逢引きしていた。コールがふたりのすぐ後ろまで近づいても気づかれることはない。

 ヒューマンの女性メイジは、自分がスパイアのゴーストを見たと恋人のエルフに告げた。薄汚れたレザーを着たブロンドのボサボサ髪の若い男。エルフの男は、それを人前で話せばディーモンに感化されたと疑われると彼女に忠告する。彼女が見たという自分の話についてコールはもっと聴きたかったが、二人はその後沈黙を続け、階上から聴こえていた深夜のお勤めの詠唱がやんだ頃、居室に戻っていった。

 コールは自分がディーモンではないことはわかるが、ゴーストかどうかはわからない。

 コールは最初にサークル・タワーに来た日のことを覚えている。他のメイジと同じように、ただメイジであるという理由だけで、テンプラーたちの手によってここのダンジョンに幽閉された。

 メイジになどなりたくはなかった。いっそこのまま死んでしまいたいと思っていた。だがそれっきりテンプラーたちは戻ってこなかった。自分がそう望んだとおりに闇の中に放置されたまま死んだのかもしれない。メイカーのおそばに寄せていただきたいと声が枯れるまで繰り返し伝えた祈りも通じなかったのかもしれない。だが自分のように眠りにつき、飢えを感じ、息もし汗もかくゴーストなどいるのだろうか。 

 コールはこの巨大なタワーのほとんど隅々まで知っている。下層部のうち上のほうの階には厨房倉庫や大きな武器庫があり、その下の階にはたくさんの書庫がある。さらに下の階には「ザ・ピット」と呼ばれる場所があり、コール以外でその深層まで探索した者はほとんどいない。何百年も前に死んだテンプラーたちを弔う大きな霊廟、忘れ去られた古の英雄の彫像、隠された財宝までもが見つかり、隧道は地下水道まで通じているものもあった。

 何層にもわたり無数の牢が続いているダンジョンだけは、コールでさえも必要がなければ近づかない一角だ。だが、今はそこに向かう必要があった。

 脱走者のために仕掛けられた死の罠やテンプラーたちの詰所は、コールが行き来するのに何の障害にもならない。詰所のそばにふたりのテンプラーが現れ、うちひとりはコールが「大鼻」と渾名を付けていた男だが、今さっき独房に置き去りにしてきた若い女メイジのことを話題にしていた。火炎の魔法を使う少女らしい。コールの前を通り過ぎて去っていくときも、テンプラーたちは彼にはまったく気が付かず、冗談を飛ばし続けていた。コールは彼らとすれ違う際に大鼻の腰帯から牢の鍵束の輪をすり取った。

 ダンジョンの奥に進む途中、コールは自分の実体が消えていくようないつもの感覚に襲われ、地面を通り過ぎて永久に落ち続けてしまうのではないかという恐怖で動揺する。まだ間に合うはずだ、と自分に言い聞かせ、おぼつかない手で照明用の魔法の石(glowstone)を取り出し、すすり泣く声のする独房の前に立つ。

 鍵を開けて独房の中に入ると、すすり泣きをやめた黒髪の少女が顔を両手で隠している。誰かの血が一面に着いたぼろ布だけを身に纏っていた。やがて彼女は手の隙間から照明石に照らされたコールの姿を見つめる。彼女にはコールが見えるのだ。彼女はできるだけコールから遠ざかろうと狭い独房で身じろぎする。

 彼女は、炎で両親を焼き殺してしまったことを告げる。そのつもりはなく勝手に手が動いただけだと弁明する。コールはその話には耳を貸さず、少女が自分を見ることができるから、自分がやって来たと告げる。

 コールはドラゴンの頭の形の柄がついたダガーを取り出してみせ、少女が来る前から、ここに連れて来られることを知っていたと言う。 

 なぜ自分を殺すのかと問われたコールは、彼女に何の恨みも関係もないが、そうしなければ自分が消えてしまうので殺さざるを得ない、申し訳ない、と答える。 

 少女は、今度は本心から両親を殺したかったこと、今ではその結果を喜んでいることを告白するが、コールは自分をディーモンと勘違いするなとだけ答える。

 コールは彼女のほうに近づくと自分の眼を見るように命じる。 

 少女がコールの眼を見つめると、コールは短い礼を告げ、彼女の胸をダガーで突く。
 少女の命が絶えるまでの間、コールはその体を抱きしめ、その眼を見つめてすべての命の力を吸い上げた。少女の亡骸が崩れ落ちるまで、コールは彼女の生気を喪った眼から自分の眼を背けることはできなかった。息をすることさえままならなかった。

 コールは独房の壁によりかかることでようやく立っていた。もうやめにしなければ。ようやく少女から眼を離せるようになると、コールはゆっくりと呼吸を取り戻し、床に転がった照明石を仕舞ってあたりを再び闇にする。自分の体から消えかけていたこの世界との繋がりが徐々に戻りつつあることを感じた。

 今度こそ、事態を察したテンプラーたちが駆けつけて来るだろう。ホワイト・スパイア中がスパイアのゴーストの正体が脱走メイジであったことを知るのだと、コールは覚悟した。 

 だが誰もやって来なかった。誰一人。

【DAI】Dragon Age Asunder 前振り

 やると言ってしまった以上やるわけですが、まだ言い訳したりない(笑)。 

 ゲイダーさんの小説では三番目、一番最後にあたる"Asunder"の内容がDAIの序章がわりになっていると予想するのは難しいことではありません。またその登場人物の何人かがDAIに登場すると予想する人もいます(私もそのひとり)。

 舞台はオーレイ帝国、ときは9:40 Dragon。カークウォールのチャントリーが爆破された後、テンプラーとメイジが市街戦を繰り広げたDA2の物語のクライマックスから一年が経過しています。オーレイ領内では大公ギャスパードが女帝セリーン一世の正統性に異議を唱え、市民戦争が勃発している。

 大公と女帝の確執と市民戦争については、長くMEシリーズのライターを務め、DAIからDAチームに異動となったパトリック・ウィークス氏が執筆する"The Masked Empire"の主題になっている。そちらは2014年春に出版予定。

 "Asunder"と"The Masked Empire"は、メイジ・テンプラー抗争とオリージャン市民戦争という、DAIの二つの背景設定に対応していることになります。

 DAシリーズやMEシリーズには、小説版(MEシリーズにもプリクエル小説がたくさんあります)やコミックを読まなくてもゲームプレイにはまったく問題ないようにするという「ルール」がありますから、そちらの予備知識を仕入れなくてもなんら問題ありません。 

 とはいえ、例えばDAシリーズのプリクエルに登場したローゲインやジ・アーキテクトの所業を知っていれば、あるいはMEシリーズのプリクエルでアンダーソン少尉(おっさんにも若かった時代があったんです)が、(プレイヤーの選択によるけど)ME3に登場したカーリー・サンダース女史と非常に長いつきあいがあったことや、サーベラスのイルーシヴ・マンやカイ・レンと暗闘を繰り広げていたことを知っていれば、ちょっと得した気分になるわけです。ならなければあなたはオタクではない。継続性はオタクの大好物。

 言ってしまえば「フレーヴァー」ですね。物語の味付け。

 おやりになったことがあればわかるでしょうが、品質にこだわらなければ英語はベタ訳のほうがはるかに簡単です。アブストラクト(抜粋)は日本語だって難しい。

 気を付けるポイントはDAIに絡みそうなのかなあ、というところを外さないようにする、ってことですかね。 

・フォーマットは試行錯誤することになるでしょうが、以前触れたように一章ごとの目録的なものにしようという目論見は初回でいきなり挫折しました(笑)。結果、次にご覧いただくようなものになった。避けたかったシナプシス(あらすじ)に近くなっちゃいましたね。 

 目録方式はこの手の(内省的、つぶやき的な?)物語には通用しないってことがわかった。もっと劇的な物語にあうんですね。

・登場人物を不用意に紹介するとメチャクチャねたばれになる恐れがあるので、折に触れてやることにします。その必要すらないのが理想ですけどね。

・細部はバッサリ切ることになるかもしれません。ただしプロットだけを淡々と書くのは避けたい。スティーヴン・キングの言う通り小説にとって「プロットなどクソ」なんで・・・。そのとおりで初回やってみて、やっぱ省略できない、譲れない部分があることがわかりました。また「セリフ」は原則カットなんですが、あまりに惜しいやりとりがあれば、そこだけフォーカスするかもしれない。 

・不定期です。最初はたまたま時間があるので集中的にやるつもりですが、私だって本も読みたければゲームもしたい(笑)。

・全部で22章。少なくとも22個の記事が稼げる寸法です。

 ではやってみましょう。どうなりますことやら。

 (あーあ、誰か代わりにやってくんねえかなあ)

 

 

2013年8月11日 (日)

私は私の猫に話しかけてきた。

 手に入れようとしていた新書は「世界史の叡智」本村凌二著。案の定依然として品切れ続き。著者が産経新聞に連載していた世界史関連のコラムがニッチ(マニアック?)な内容で面白かったので書評に飛びついたのですが時すでに遅し。世の中(つってもほとんどが某大学中心の大学生だろう)みなさん良くわかってらっしゃる。

 書店に行ったらそれが売り切れだったので、仕方がないから(活字中毒なので何か買わずにいられない)買ったのが同じ中公新書の、今までこの人の本何冊買ったんだろうと思ってしまうくらい年来からファンである野中郁次郎先生が編者である「戦略論の名著」。
 だがこれは目次と序文(すなわち立ち読み)だけでよかったかも・・・。自分で良く知っている古い戦略論(毛沢東、リデル・ハートあたりまで)については必要ないし(毛沢東については先生の別の著作でこれでもかってくらい読まされた)、興味のあった新しめの戦略論については実にそっけない内容で、まさに「目録」がわりにしかならなかった。少し期待していたマハンの「海上権力史論」については、やっぱ原典にあたるしかないのかあ、と覚悟ができたという効用こそありましたけどね。

 先日も「世界史の・・・」がひょっこり置いてないかなと近所の書店めぐりしてみたけど(Amazonで品切れでなければ最近こんなことはしない)やっぱ見つからず、(活字中毒なので)仕方なく手にしたのが「言語学の教室」なる、これまた中公新書。

 クリティカル・ヒットでした。

 内容紹介はAmazonででも見てください(出た、丸投げ)。言語哲学と認知言語学の貴重な接近(本書は認知言語学者西村義樹氏と哲学者野矢茂樹氏の対談という体裁になっている)とか書いても、書いている自分が何言っているかわからなくなる(笑)。
 ちょうど先の記事でDAIの古文調の英文を唸りながら訳した後で、関連するネタが対談の中に出てくるという素敵な経験もして得をした気分。

 最先端の言語学がどういう状況にあるのかなんてことは、もちろん学者でもないこっちにはどうでもよく、この本のご利益(りやく)は(もちろん認知言語学は愉しいんだよ、という売り込みもあるが)言語が映し出すこの世界の見方、見え方が大きく拡がること。こういう書き方をするときにすら、一瞬「この書き方いけてるのか?」とたじろいでしまうことさえ、この本の効用である。「見る」と「見える」は違うもんね。

 アメリカ構造主義言語学への批判で生成文法が生まれ、その生成文法に異議を唱える形で認知言語学が生まれた。そういう点だけを取り上げても、多様性中心の世界から普遍性追究へ移り、また多様性に回帰するといった綱引きを繰り返す人類の思想史そのものが反映されていると感じることができます。

 また認知言語学の基本的テーゼの一つであるプロトタイプ意味論も非常に興味深いものがあります。ここでは、ある言葉(例えば「鳥」)が示すものには「典型的な」もの(「鳥らしい鳥」)と、典型的ではないもの(「鳥らしくない鳥」)があること、言語習得に際してその何かを必要十分条件で規定することなどできないこと(子どもに鳥を教えるときにその定義を教えても無意味で、典型的な見本を提示するしかないが、真っ先にペンギンを見せたりはしない)、典型から例外へ意味が派生・拡張していったこと、さらには時代や地域によって典型そのものも派生・拡張の仕方も変化すること、それらは言語規則によって捉え切れるものではなく、心理学的要因や文化・社会・生活様式などの文化人類学的要因まで関わってくること(例えば「読む」といったら普通黙読だが、かつては音読していた)などが指摘されています。

 何言ってるかよくわからんですよね。私もわかってないから。
 そうっすね、キャッチーなことを書くとするなら、本書で例示されているこんなフレーズが「おかしな日本語」であるかどうか、わかりますか。

 「昨日、知らない人が私に話しかけました」

 不自然と感じないなら日本語のネイティヴ・スピーカーとしてどうなんだ、という話になってしまうんだけど(笑)。下とは違いますよね。そして下が自然な日本語。

 「昨日、知らない人が私に話しかけてきました」

 でも「太郎が花子に話しかけた」と「太郎が花子に話しかけてきた」は両方成立する。そしてネイティヴならそれらの意味が違うことはすぐ感じ取ることができる。

 表題の猫の例も違和感を感じるもの。ところが「友達が私の猫に話しかけてきた」なら問題ない。

 どうして不自然で違和感を感じるのか(日本語として正しくないのか)を考えてるだけで、これはこれで十分に愉しいですよね。

 この新書を読んで、ずーーーっとAmazonの籠に入れておいたまま逡巡していた、「生成文法」(認知言語学が批判したのがチョムスキーのこの学説)に関する書籍と、ヴィトゲンシュタインの「論理哲学論考」に関する解説書(著者が上述の野矢氏)を買う覚悟がようやくできた。

 残念なことに上に登場した書籍はどれも電子図書化されていない。しょーもないノウハウ本なんかではなくて、のちに参照・引用したくなるような書籍こそ、検索の容易な電子図書にして欲しいのですが、大人の事情で無理なことはわかりきっている。

 でも、あなた。リアルのリテール書店に立ち寄ったからこそ、その新書を見つけたのではないの?

 そうなんだよな。Amazonに文句があるとすれば、「あなたへのお奨め」が何の役にもたたないこと。「その本を買った人はこれも買ってます」って、人がどうであろうが知ったこっちゃないのだ。ユーザー・レヴューなど読めば読むだけ腹がたつので、参考にするのは家電製品や文房具などハードウェア・実用品を購入する場合のみ。

 エキスパート・システムやAIなどの世界に詳しい(というか学生時代そっち系専攻だった)友人に「あれ(あなたへのお奨めになってないお奨め)はなんとかならんのか」と聞いたら「簡単なはずだけどね」と言っていた。
 だったらやって欲しいなあ。といってもシアトルがやる気にならなきゃだめかあ(「シアトル」でAmazonを示す、こういう使い方をメトニミー、換喩って呼ぶことも読めばわかります)。

 真夏の暑さを凌ぐつもりで立ち寄った街角の書店の涼しい店内で、何の気なしに書架に伸ばした指先が清楚な文学少女のか細い指と思わず触れあう、なんて期待するのもいかがわしいおっさんすからね、こっちは。
 過剰包装でもいいから自宅まで送りつけてくるAmazonで結構。

2013年8月 8日 (木)

【DAI】Gameinformer DAI Hub

 前も触れたGIのDAI Hub(逐次更新)に、マーク・ダラー(エグゼクティヴ・プロデューサー)、マイク・レイドロウ(クリエイティヴ・ディレクター)のインタヴュー映像が掲載されていました。

http://www.gameinformer.com/p/dai.aspx

 毎回いちいち探すの面倒なので、このブログのリンク集にも載せておきます。

 今までここで紹介していない、ビックリするようなネタはありませんでした。

 BioWare開発チームのモットーが面白かったので下に。

「コンパニオンたち、コンフリクト(紛争)、そしてコンシークエンス(選択の帰結)に彩られた広大な世界に、君の名を刻め」

Makeyourmark

(追伸)ダラーさんも、だんだんドワ顔になってきたね(笑)。

 

【DAI】新コンセプト・アート

 Dragon Age Twitterにパラパラとアップされるコンセプト画像。

Pride_despaired_2

「彼の者ら目を澄ませしは、驕りがつくらんとし、やがて思い撓み(たわみ)しもの」

"They looked on what pride had wrought, and despaired."


(以下訳者のぼやき)

 今のところこれが一番自信がない。なんちゃって古文になってますしね(仮名遣いまで直すのは許しておくれ)。詩文でかつ古文という二重苦です。

 テヴィンターの廃墟かなあと思って訳を考えました。前に掲載した「古の神の牢獄」と関連するのであれば訳文もつじつまが合うのですが。かつてテヴィンター・マジスターたちが古の神(ドラゴンですね)を捕縛しようとした施設。当然のようにどこかでまずいことが起きて失敗したわけでしょう。

 オーレイの地下水道とみる人もいて、そうなると解釈は違うでしょうね。
 また驕りが生んだ廃墟といえば、リドリー・スコットの映画”Prometheus”に登場するエイリアンの巨大なオブジェなどが連想されます。

 今の言葉で書くとこういう意味のつもりかな。

 彼らが目を凝らしたのは、驕漫が造り出そうと企み、やがて心挫けたもの。

 これでもまだhad wroughtの現代英語had workedの部分で悩んでいる。造った(やり遂げた)後なのか、その中途だったのか。個人ブログなんでこんな程度でやめますが、商売でやるならこれじゃ済まないから大変ですね。

 ちなみに他動詞のdespair(そうであることはおわかりか)は今はありません。despair of とかしないといけない。”Pride had despaired ‘something’.”じゃおかしいよなと気が付けば古語であることがわかるし、それ以前に対になるwroughtが古語なんで予想がつく。意味は”Pride had lost hope for ‘something’.”

 ダンテ「神曲」の翻訳で著名な平川教授が書いていましたが、本来大陸国や西欧の古典はポエトリィ(詩文)が主流であるのに、何故日本には小説(散文)ばかりが紹介されてきたのか。
 詩文は翻訳があまりに難しいからですね。詩情まで伝えるのは至難の業。
 逆に例えば俳句を外国語に訳する苦労も並大抵なことではないのは容易に想像がつく。というかハッキリ言ってしまえば無理でしょう。

 BioWareのシナリオには、チャント・オヴ・ライトを除けば、まだ詩文が少ないだけ紙芝居は楽です(Mass Effectにはたまにありますが)。

 

 

 

 

 

【DAI】Gameinformer記事概要(2)

 前回の続きです。

***

・資源・素材の収集と装備のクラフティングは、プレイヤーキャラクターとすべてのパーティー・メンバー向けに用意されている。カスタマイゼーションにはとても重きを置いている。

・各装備(アーマー)はある特徴的な外見(a certain iconic look)を保持しているが、別のキャラクターが着用するとそれぞれ異なるように見える。コンパニオンそれぞれにも特徴的な外見を付与することを狙っているので、アーマーが各キャラクター用にカスタマイズできる一方で、アーマー固有の特徴的外見も維持される。

・プレイヤー・キャラクター(PC)クラスはもちろん三つ。ウォーリアー、ローグ、メイジ。

・PCの種族は少なくとも三つから選ぶことができる。(クナリが追加されるかどうかという質問に対してのマイク・レイドロウ(リード・デザイナー)の返答は)「四つにしろと? どうかな。どう考えても三つが固いね」(“Do we go to four? I don’t know. Definitely these are the safe bet”.)

・PC種族の選択は他のキャラクターとの交流に彩りを添える。例えばエルフはある種の被害者意識に苛まれているかもしれないが、エルフ居留地の者たちも同族に対しては心を開くことだろう。

・チャントリー/テンプラーはインクイジションを認めていないので、プレイヤーは自分の方法で彼らを「説得」しなければならない。もし彼らの要塞が開城を拒否したら、攻城戦を仕掛けて城門をこじ開けることもできる。それからどうするかはプレイヤーの選択による。

・プレイヤーは作戦行動を行うための拠点を手に入れることができるかもしれないと仄めかされた。もしかしたら自分で命名することのできる城かもしれない。

・ダイアログ・ホイールは残るが、開発チームはキャラクターの発言と選択肢(訳:パラフレイズ)ができるだけ一致するように注力している。またホイール以外に、選択の結果何が起きるか予想する手助けもオプションとして与えられる。

・ストーリーの中で今まで解決していなかった沢山のルーズ・エンドが結末を迎える。赤いレリウム、グレイ・ウォーデンの活動の目的、フレメス、そしてモリガンに関する謎などについては、その全容が解明されるだろう。

・次世代コンソール版にも、過去ゲームのセーヴファイル(に保存されたプレイヤーの選択・決断)が反映されるように頑張っているところだ。

***

 一週間くらい食えるだけのネタは手に入りましたかね?

 でも既報分と、開発チームの発言からそうとしか思えなかったものを除くと、新情報は次の一覧くらい。

・ダンジョンでは様々な方法で障害をクリアすることができる(まさに、オールドスクールですねえ)
・マウント(馬など生き物に乗ること)ができる(あれだけ嫌だできないと言っていたのですが)
・天候によって状況が変化する(スプリント・ミーティングのときに仄めかされていました)
・ディストラクタブルな(プレイヤーがぶっ壊せる)環境(ゾンビ系などで今はやりだから)。
・PC種族はエルフ、ドワ、ヒューマンから選べる(開発期間延長の恩恵)。
・ヴァリック、カッサンドラ、ヴィヴィアンがパーティー・メンバーに加わる(全部で何人かはわからない)。
・モリガンが(カメオ程度ではない立場で)登場するが、パーティー・メンバーではない(だろうと思いました)。
・ストロングホールド以外にキャッスルも手に入る?(これは同じことを言っているんかな)
・ダイアログホイールの他に選択の結果を予想させるオプション。(DA2のアイコンを用いるのではないのかな)
・沢山のルーズエンドの解決(具体的に明らかにされたのははじめて)

 こう並べてみると目指そうとしているのはSkyrimそのものでもないですね。

 個人的注目は「天候の変化による影響」。お天気の都合はJRPGではお得意の分野で、最近ではFFXIIIなどにもあった。
 地形が変化する場合もあった気がする。まさかマイクが遊んで褒めていたP4Gの影響でもないだろうけど。

 「マウント」に関しては、パラディン命(DnDパラディンには特別なマウントがある)の私としてはあるに越したことはないが、TES、Two Worldsはもちろん、乗馬がゲームの主題のひとつであったRDRは称賛を集め、さらに今ではMGSスネークまでもおんまさんに乗る。
 ただしほとんどは主人公ソロの場合。フル3Dでパーティーみんな乗ることができる(かどうかわからないけど)のはマルチプレイやMMO以外ではFFXIII-2のチョコボ(FFXIIもだっけ?)と・・・、あとあったっけ?
 それと敢えて「馬」とは言ってないのは一般論で話しているせいか、それともドラゴンリングとか、エルフの家畜ハラとかも入るのか? え、グリフォン?

 オールドタイマーではあっても、小うるさいオールドスクール派ではないので、開発期間が延びて色々飾り付けが豪華になってきたねー、と素直に面白がっているのが正直な感想である。
 心配の種は、うちのPCが来年まで逝ってしまわずもつかしら? 今のグラボでちゃんと動くかしら?というあたりか。

【DAI】Gameinformer記事概要

 BSNのファンがまとめたGameInformer(GI)の記述。GIデジタル版(英語版)はiOSでもAndroidでも出ているのだが、「日本には売れません」と言われたため、自分の目で元記事を確認する(裏を取る)ことができません。熱心なファンとはいえプロの書き手でもないでしょうから、意味が曖昧になっているところも多い。だからそういう風に取り扱って下さい。取り敢えずおいておくことにします。

***

・アクションは狂乱具合(frantic)を抑え気味にして、周到さが求められる(deliberate)ような、戦術指向アプローチに回帰する。古き時代のパーティー主体の戦術に戻る(”Big return to party-based tactics”)。

・そのことは攻撃スピードが遅くなっていることでもわかるが、より重要なのは、敵側をデザインするにあたって、プレイヤーが戦場を綿密に分析し、行動を入念に吟味しなければならないようにしたことだ。

・戦闘は、ボタン早押しの世界から、状況観察とそれへの対処が優先される構造へと方向転換される。

・敵が次から次へとわらわら湧くのはやめにして、それぞれ特別な役割を与えた敵集団が結託して行動し、プレイヤーに戦場観察(”size up the battlefield”)を強いるようにする。

・どこからともなく敵の援軍が湧いてきて、戦闘を長引かせるような波状攻撃が常態化するようなことはない。

・PC版はそれ向けに最適化されたヴァージョンとなる。「特にコントロールの観点から見るとPCは独特である」ので、「DAOのPC版にあったような、それ用にきちん仕立て上げられたゲーム体験を再現すること目論んでいる」。

・物語の舞台は東部のフェラルデンから西部のオーレイに移る。DA2のようなマップ使いまわしはDAIでは一切ない。

・プレイヤーは、まるでじょうご(ファネル)の中のような狭い道を進まされることにはならない。プレイデモでは、沼地、砂漠、山岳、草原などのそれぞれの環境を三人称視点で自由に探索する様子を見ることができた。

・サイドクエストを誘発するような洞窟、ダンジョン、死体など数多くの隠されたものが発見されるのを待っている。

・「探索の趣向を追及する試みは、ぶっちゃけて言ってしまえばBioWareが長いこと手掛けていなかった分野だ」。「Baldur’s Gateがそうであったように、各エリアはプレイヤーが歩くことのできる単なるスペースであるのと同時に、それぞれの場所には固有のストーリーがある」

・ゲーム内では十分な数の、それぞれが独特(unique)で、かつ探索の手法が色々ある(optional)洞窟を確保するようにしたい。例えばグループにメイジがいたら、崩れた橋をスペルで再建して新しいエリアに向かうことができるようになるなど。

・また、荒れ果てた砦の廃墟(a ruined desert outpost)をインクイジションの拠点(an Inquisition stronghold)として再建できるようになる。

・生き物(訳:馬とは言ってない)に乗れるようにするために考慮すべき分野はとても広い。

・モンスター、例えばドラゴンはプレイヤーとともにレヴェルアップすることはない。中にはとてつもなく強力なものもいるので、プレイヤーはある程度経験を積んでから出直さなければならないだろう。

・一部の環境はゲーム内で破壊されうるものだ。

・ウォーリアー・クラスは敵を近くに引き寄せるための捕獲用の鎖(grappling chain)を持っている。

・巨大で装甲を身に纏ったドラゴンとの戦いに臨むプレイヤーは、脚部を狙い撃ちすること、ウォーリアーに白兵戦で装甲を破壊させること、敵に忍び寄るローグに露出した部位へ毒を付させること、よろめいた敵にスペルをぶっ放すこと、その他色々な手口で攻撃することができる。

・天候の影響は探索に影響を与える。降雨とか、砂漠の砂嵐とか。

・雨天時には一帯の地面は泥濘と化し、降雪時には移動や戦闘時の機敏さは損なわれるし、砂嵐によるダメージを避けるためにプレイヤーは退避場所を見つけなければならなくなる。

・新しいメイジのパーティー・メンバー。ヴィヴィアン(Vivienne)。

・ヴァリックとカッサンドラもパーティーに参加する。

・広大なエリアを面白いものにするため注力している。傾斜地、岩場、高低差、プレイヤーのキャラクターはそれらの障害をそれぞれにしつらえたアニメーションで乗り越えていく。移動キー操作は簡単なものにする。

・モリガンはパーティーには参加しないが、カメオ(顔見世)程度で登場するわけでもない。

***

 長いので後半は次回に。

2013年8月 7日 (水)

【DAI】GameInformer掲載画像かな。

 GameInformer掲載の画像でしょうか。Tumblrに同じものがたくさん出回ってました。

 Frostbiteのせいか、GIのデジタル版のせいか、発色がかなりどぎついほどシャープ。これは好みが分かれそうです。

 ヴァリック、キャスとトリオでいるメイジキャラは噂のヴィヴィアン? もろの顔出しは避けているようですが、ちらっと横顔がわかるものがありますね。エスニシティまでわからないけど、もしかしてアフリカン風?

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 これはコンセプトアートでしょうか。

 んー。本当にオーレイの宮廷にいるような気もするが。

 

Flat Top (てっぺんの平たい駆逐艦です)

 出雲大社ネタは全部やめることにすると(きりがないから)、あたしにとっちゃあと面白そうなネタは、あの「エウレカセブン」の一シーン、(なんとかいう)球形オブジェクトを挟んでのイズモ対月光(だっけ)の砲撃戦はあまりに素晴らしかった!という記憶が蘇ったくらいなのだが。というかあのTVシリーズで素晴らしいと思ったシーンが実はあそこだけ。 調べてみるとエピソード12ですかね。
 そして、あのイズモも最初は連邦空軍の「護衛艦」だった(笑)。

 ヱヴァQのメカ(ヴンダーだっけ)も、エウレカセヴンのそれに通じるものがあったけど、今度はIJNもとい、JMSDFまでそっち方面にいっちゃったのか(ネーミングだけでしょ)。

 日本語の軍事ネタはどこもくそ面白くもないので、やっぱネットに頼る。CNNも・・・、あんま面白くない。
 出た、ボードゲームギーク! ウォーゲーマーあがりの私にとって心の朋友たちである。

http://boardgamegeek.com/thread/1017811/so-japan-has-just-launched-totally-not-an-aircraft

***

 “So Japan has just launched totally-not-an-aircraft-carrier 'destroyer' Izumo (that is definitely not an aircraft carrier)”

 ふーん、日本が「まったくもって空母なんかじゃない”駆逐艦”イズモ(ゼッタイに空母と違う)」を進水させたんだってさ。
(訳:「護衛艦」も「駆逐艦」もあちらの人には「デストロイヤー」です)

 まてよ、これ真っ当な空母だろ?

 対潜任務のヘリコプター・プラットフォームだそうだ。

 
 日本が新型のF-35B戦闘機を買わないのが救いだ・・・。え、買うつもりなのか?

 USSワスプ(Wasp、映像でF-35Bが垂直離着陸V/STOLの試験着艦を行っているUS強襲揚陸艦)とこの日本の「空母なんて呼んでくれるなよ、マジで」駆逐艦とはほぼ同サイズだね。どちらも全長250メートル級。

(訳: 将来的にV/STOL機であるF-35Bを買うかどうかわからないが、JASDFはUS空軍仕様のF-35Aを選定している。一方でUSMCのF-35Bが日本に配備される予定。

 ちなみにニミッツ級(第7艦隊だとカール・ヴィンソン、ジョーワシ)や次世代フォード級(ジェラルド・フォード、JFKなどが建造中)などのUS正規空母は全長333メートル。また世界で真っ当な空母(いわゆる正規空母)を運用しているのは、USと仏のみ(その意図があるまで言えば英・露を含めるのかもしれない)と言ってしまって過言ではない。ヘリコプター空母、強制揚陸艦、カジノ船(笑)まで含めれば、世界中にわらわらいるから「いずも」くらいでは朝日新聞以外誰も騒がない。
 そう言えば仏海軍の空母フォシュはどこ行ったかと思ったらブラジルが買ったのね)

 呼び名に関してはUSだって人のことは言えない。ある種の「駆逐艦」はどうみても「巡洋艦」クラスだし、中には「戦艦」と呼ぶしかないものもある。こちら(US)も日本も政治家たちはどうしても兵器のことを水で薄めて呼ぶ癖があるようだ。

***

 F-35A(42機)の他にV/STOL仕様のF-35Bを買うのか買わないのか、だいたいF-35シリーズはいつ完成するのか。そんなことよりも何よりも、この「いずも」にしろ姉妹艦(建造中)にしろ、すでに就役している「空母とは呼ばせない」護衛艦の「ひゅうが」、「いせ」にしろ、オスプレイも着艦できるし、ドローン機の母艦としても使えてしまう。

 上述のワスプがV/STOL機ハリアーIIを搭載しているように、この「断じて空母なんかじゃない、トラスト・ミー!」駆逐艦だって、すぐに強襲揚陸艦並みの任務に就くことができてしまう。

 というか、そうじゃないものを税金で勝手に造られたら怒るべき。そんな使い道がないもの、余っちゃったからってブラジルだってインドだって買ってくれない。

 個人的にはドローン化が割と早く実現するのではないかと思っているのですが。ドローン用空母として使うことになるんじゃないのかな。

 ちなみに表題はUKのニュースサイトであるここから。なお、「てっぺんが平たい」"Flat-top"は実はそれだけで「空母」って意味になるので、形容矛盾なんだよね。

 http://www.dailymail.co.uk/news/article-2385430/Japan-warship-Izumo-aircraft-carrier-flat-topped-destroyer.html

 

 ボードゲームギークありがとう。

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 ほんとーに死ぬほど遊び倒したんだ、このゲーム。友達(つうかギーク仲間)三人いないと成立しないんだけど、ちょうど揃っていた。運が良かった。

 

【DAI】メイジ・フラタニティ

 こちらからアップしようとしていたら、Gameinformerからジューシーなネタが届いてしまいました。
 以下は、ゲイダーさんの小説”Asunder”を紹介するにあたっての下準備。セダス大陸を襲った大騒乱の主役ともいえるメイジの政治派閥について。
 最初と最後に色々と余談が書いてあるので、そこは無視してくれて結構。
 また固有名詞で「誰それ?」という者にはAsunderに登場するキャラクターが含まれている。それはおいおい触れていく(でも名前のあがっているほとんどのメイジは過去のDAゲームに登場しているのです)。

***

 フラタニティ(fraternity)。アメリカ・カナダ在住経験者、とりわけカレッジなどで学んだことのある人は馴染みがあるでしょうか。その場合はこれがソロリティ(sorority)と対になっていることもご存じでしょう。
 あるいは”90201”の大学版など、学校を舞台にするあちらの映画・ドラマにも頻繁に登場するのでご存じの方も多いでしょうか。

 元々のラテン語の意味はフラタニティが兄弟でソロリティーが姉妹。フラタニティは中世イングランド起源の地域住民の自発的な集まりで、形式上宗教的な意味が強かったようだが、都市化に伴って喪失されていった地方コミュニティの代替・補完機能を有するようになっていたようである。やがて弱者救済・相互扶助など会員間の社会的・経済的支援も行うようになり、また自治機構の役割も果たすようになった。職能組織であったギルドとは異なるものだが、両者は密接に関連しあっていた。

 日本でいうと地域コミュニティなら「寄合」(よりあい)が近いが、「宗教的」意味合いを強調すると「講」(こう)あたり。さらに都市化と相互扶助などを強調すると「無尽講」(むじんこう)かな。ギルドはよく「組合」(くみあい)と呼ばれるが、日本語の「組合」自体の意味は相当広くて漠然としている。ギルドに近いのは他には楽市楽座の「座」(ざ)、「株仲間」(かぶなかま)。

 一方アメリカン(カナディアン)でいうフラタニティ(ソロリティ)は一般に大学(院)の独身寮寄宿生の社交(友愛)クラブを指す。本拠地は大学公認の寮・寄宿舎(ドーミトリー)である場合が専らだが、それ以外にフラタニティ自身が(卒業生の支援なども受けつつ)専用宿舎を学外に用意することも多い。そこら辺の大学の寮すべてにあるわけでもなく、すべての大学生が入れるわけでもなく、会員になったことによって受けられる権威・名誉は由緒正しい大学のこれまた由緒正しい宿舎であるほど高い。そして会員間にはフリー・メイソンリーを模したような秘密結社的な厳しい掟があることが普通である(面接など入会テストや新人へのしごきがあることもあるし、掟を破れば会員の資格を喪失する、すなわち宿舎からも仲間からもパージされる)。

 仲間の結束が固いと言う意味では、魔法学校が舞台である「ハリポタ」の四つの寮、「ハウス」(Houses)、それから期待の映画の原作である「エンダーズ・ゲーム」のバトルスクールの各「アーミー」(Armies)にちょっと似てるようでやっぱ違う。フラタニティの真の目的はただひとつ。会員たちが他のフラタニティを含めた外の社会に対して優越していることを示すことだけである。「友愛」とは同胞間だけの友愛のことなのだ。トラスト・ミー(嘘じゃないよ)!

 なんで北米だけにあるかというと良くわからないが、おそらく表面上階級を否定している社会では疑似「階級」が必要なんだろうと思う。かつて高等教育自体が白人男女(それもアングロサクソンなど中心)しか受けられないものであったので、会員のエスニシティもそうであったし、フラタニティの由緒正しさの序列は暗黙裡に会員の家系・育ちの良さを示す(それは北米の場合は裕福さと強く相関している)。そして学内選挙などではフラタニティ間の戦いになることもしばしばあり、エスタブリッシュメント(Establishment、権力階層、支配階層)の卵が将来の政治の戦いに備えているようでもある。

***

 長々と説明してきたがようやく繋がった。DAで言う「フラタニティ」はサークル・メイジの(カレッジ・オヴ・メジャイの)「政治派閥」である。魔法の能力自体とは関係ない(そちらを呼ぶならふつうに専攻・学派、スクール(schools)だろう)。もちろん籠の鳥、被支配階層の派閥なので基本的に無力なのだが、概ね体制への「迎合」と「反抗」の軸によって次のように分派が形成されている。

エクイタリアンズ(Aequitarians、公正派)
 カレッジ・オヴ・メジャイやフェラルデン・サークルの支配的派閥。チャントリーの掟に関わらず、メイジは責任を自覚し倫理に即した方法で魔法を用いなければならないとする、中庸的で賛同者の多い発想を推奨する。エクイタリアンズは、すべてのメイジが人々の助けとなるべきであり、規範と理想を守るべきだと信じている。(DAシリーズの)登場人物のうちこの派閥に属する著名人は、エドモンド、アーヴィング、リース、スウィーニー、トリン、そしてウィンである。9:40 Dragon時点での派閥代表はリース。

アイソレイショニスツ(Isolationists、孤立派)
 テンプラー、チャントリー、ひいては文明社会との一切の係り合いから訣別することを願うメイジ少数派。その目的は、魔法使用に対する掣肘から解放されることと、自分たちの力が「普通の」人々に悪影響を及ぼす恐れ自体を排除することにある。この派閥の登場人物は今までのところニアルのみだが、彼自身はそのシンパであるだけで、自ら一員であるとは考えていない。

リバタリアンズ (Libertarians、自由派)
 チャントリーの如何なる関与も排除して、サークルの自主運営・自治を望むメイジたち。彼らが9:31 Dragonにカレッジ・オヴ・メジャイに提案した分離宣言に見るように、この派閥の多くのメイジは独立のために平和的な手段に訴えることを支持しているが、少なくとも一分派であるリゾリューショニスツ(Resolutionists、強硬派)は目的のために暴力を行使することも辞さない。リバタリアンズには、アルドレッド、エイドリアン、ジーノットなどが含まれる。9:40 Dragonにカレッジ・オヴ・メジャイで同派を代表しているのはエイドリアンである。

 ローヤリスツ(Loyalists、忠誠派)
 チャントリーの教えを文字通り解釈する者たち。チャントリーの掟とテンプラーの間断なき監視を甘受することから、しばしば「チャントリーの弁明者(apologists)」と呼ばれる。ローヤリスツの理想を体現する例にはケイリがいるが、彼女自身はエンチャンタ―の資格がないので、フラタニティに属することはできない。

ルークロシアンズ(Lucrosians、金権派)
 僅差の二番手にある他派閥に働きかけて政治的影響力を握ることにより、富を蓄積することを優先する少数派である。

***
 ルークロシアンズ(金権派)の地位は今の島国でいったら某宗教政党のそれに似ていますが、「二大勢力の間でキャスティング・ボードを握る少数派の存在」は民主主義(正しくは多数決主義)の大欠陥としてよく話題にされますね。今の世界を見渡せば連立政権が目白押しですから、むしろ民主制下でそういう政党・派閥を欠くほうが稀である。アメリカやイギリスに第三勢力がなかなか生まれにくいのは、ひとつには二大政党がそれぞれ「中庸」であるから隙間が両極端にしか存在しないこと、また元からこの欠陥を意識していて、両極端の政党が生まれる前に叩き潰すからでしょう。そういう意味で二大政党制に元から完全な「思想の自由」などないのです。アメリカで言えば赤か青のどちらかを選ぶ自由があるだけ。
(アメリカにおける宗教と政治の関係については面白い話があるが、余談だらけになるのでまたにしよう)

 平たく言えば、左翼(反体制派)がエイドリアンに代表されるリバタリアンズ(最左翼がリゾリューショニスツ)、中道がウィンとその息子であるリースに代表されるエクイタリアンズ、右翼(体制派)がローヤリスツ。DAIに登場するとされた新コンパニオンのヴィヴィアンはここでしょうかね。

 アイソレイショニスツ(孤立派)はこの軸に表現できないニヒリスト、世捨て人、厭世家の派閥。消極的なアナーキストかもしれない。

 物語の中で事実上中心的な派閥が中道勢力(エクイタリアンズ)であるというのが、いかにも作り手が北米人(カナディアン)らしいというのは言い過ぎでしょうか。当然プレイヤーも最多数の北米を意識して作っているわけですから。あるいは革命勢力(リバタリアンズ)や体制迎合勢力(ローヤリスツ)を選んでしまったら陳腐で一本調子な物語になるからでしょうか。アイソレイショニスツだと物語にすらならないし。
 
 形式だけ民主主義の島国生まれ・育ちの私なんぞは、この(セダスの)激動の時代であってもまだ多数決主義に固執する人たちって壮絶だな、ある意味すげえなあ、という感想を抱きます。民主主義(民衆制)があちらでは宗教そのものである、という一つの証明でしょう。

(余談の余談)
 やっぱり政治と宗教の話をちょっとだけ書きたくなった(笑)、島国でキャスティングボードを握っているような特定宗教団体が政党を構成して議会に登場することはアメリカでは一切ありません。英国、EU諸国には普通にあります。憲法(修正条項)では無宗教も認めているから「やっぱアメリカの政教分離、信教の自由ってすげえなあ」とか驚いてる人が沢山いる。アメリカン自身が皆そう思って、誇りにしている。

 バカを言ってはいけない。アメリカではすべての政治活動が宗教活動なんだよ。目に見えないだけですでに前提に置かれているのだ。政教は不可分なほど密着・癒着している。ここでも、クリスチャニティである限りにおいて信教の自由が認められているのだ。それに比べりゃ(元から社会に対して宗教がなんの影響も果たしていない)島国の政教癒着なんて可愛いもんです。

【DAI】馬は勘定に入れるのか?

 ネタがないから小説版を紹介しようと言った矢先にこれだ。

 Gameinformerの九月号表紙はDAI。

http://dragonage.wikia.com/wiki/User_blog:King_Cousland/%22Ch-ch-changes!%22_%28to_Inquisition...%29

 こちらは今スマホ閲覧なので画像を貼るなどのややこしい操作は避ける。まずはご覧あれ。ハイドラゴン(だそうだ)が、カッサンドラとヴァリックのコンビの行く手を阻んでいるかのような構図。

 さらには、あれだけゲイダーさん他開発スタッフが「乗馬(マウント)は面倒くさいんだよ!」と言っていたにも関わらず、キャラクターが乗馬しているモデル(プレアルファ開発画像)

 それよりもなによりも、GI本文によれば新趣向のひとつとして”the return of the multiple player races”とあるので、エルフ、ドワ(あるいは考えにくいがクナリ?)がPC(主人公)に復帰? マルチプレイだけじゃないの?
 いや、シングルプレイヤー・キャンペーンのこと。一年間のリリース延期で開発の余裕が生まれたそうだ。当然ながら(クナリが欠けることは、私にとっては「残念ながら」ではない)エルフ、ドワーフ、ヒューマンになるだろう。

 その他、DAWikiのブロガーがまとめてくれた新趣向。

・コンバット後ヘルス自動回復の廃止(より戦術的立ち回りが必要となる)

・インクイジター(主人公)は一兵士ではなく、組織を指揮し、かつ拡大していくことになる。組織が充実するに伴って当然のように周囲の尊敬(respect、畏敬かもしれない)を集めていく。

・よりドラマチックなゲームプレイ要素が仄めかされた。「要塞が開城を拒んだら、インクイジションの兵力を用いて攻城戦を挑むことができる」

・インクイジション(組織)の成長は、PC個人の成長と似た道をたどる。すなわちスキル、知識、長所、問題に対処する独自の方法などを獲得していく。

・三人のコンパニオン。オリージャン・メイジのヴィヴィアン(Vivienne)はファースト・エンチャンタ―への道が約束されていたが、この動乱の時代に可能な限りメイジの同志たちを守りたいとの動機を持ってインクイジションに参加する。筋金入りのサークル支持派であったが、その体制自体が、すなわち彼女の世界そのものが崩壊するのを目の当たりにして動揺を隠しきれない。

・ヴィヴィアンに加え、馴染み深い顔のコンパニオンとしてヴァリックとカッサンドラ。

・インクイジションはその性格からして度量の大きな(high caliber、ハイ・キャリバー)人物をコンパニオンとして惹きつける。セダス大陸の中でも最も才能に恵まれた者たち、頂上に近い身分の者たちが、インクイジターの旗頭の元に集結するだろう。

 取り急ぎ、お知らせまで。

(追加)BSNにも、長大なスレッドができていた。種族ごとのキャラクター造形(頭部)のイメージなども出回っているようだ。

http://social.bioware.com/forum/1/topic/371/index/17096503/1

 

 こちら、GI恒例となっているゲーム専用ハブ、DAI。

http://www.gameinformer.com/p/dai.aspx

2013年8月 6日 (火)

目次と目録

 DA小説版の紹介。安請け合いしてしまったのですが、いざやり方を考えるとかなり難しい(笑)。
 最初はこんな感じでどうかと考えました。
 (実をいうとDA小説第一作目のThe Stolen Throneを読んでいるとき、自分が読み進めた部分について、ブログに以下に示すような記載を残しておくと読み終えたときにあらすじが完成するよなと思いついていた。実際には本編紹介のほうが物凄い分量になってしまい断念した)

 かつて小説には、今の「目次」に相当する「目録」なるものがあった。
 章名と頁数だけが記載されている「目次」と異なり、「目録」にはその章の内容紹介を含んでおり、また各章の冒頭にその紹介文が再掲載されているものがある。

 日本だけかというと大陸国にも英国にもあるので、そこら辺のパクリでスタートしたのでしょうか。
 「あー、それのことね」とおわかりいただけるように、ネットで簡単に拾えるものから下に例示する。

 第一回 季基訓を遺して節に死す 白龍雲を挾んで南に歸く

 何の作品かおわかりか? (答えは最後)

 上は簡にして要な例。もうすこし丁寧なものは、例えばこんなもの。

Three Invalids.-Sufferings of George and Harris.-A victim to one hundred and seven fatal maladies.-Useful prescriptions.-Cure for liver complaint in children.-We agree that we are overworked, and need rest.-A week on the rolling deep?-George suggests the River.-Montmorency lodges an objection.-Original motion carried by majority of three to one.

三人の病弱者 ジョージとハリスの悩み 致命的な百七の病気にかかっている一人の男 有効な処方箋 過労が原因、故に休息が必要だということに全員賛成 時化で苦しむ一週間か? ジョージは河を提案する モンモランシーは反対する 三対一の多数によって原案可決

 日本語訳はKindle版の中身検索で見つけたもの。(これも答えは最後に)

 最近の長編小説では「目次」自体が省略されていることも、章名もそっけないナンバリングだけの場合もかなり多い。文学部出身でもないので、こういう趣向がどうして廃れたのかの経緯はよくわからない。

 なんでこんなことを思ったのかというと、結局小説全編の筋書きはネタバレを避けては紹介できないから。
 ただこの方式だからネタばれが完璧防止できるわけでもなく、むしろ海外古典作品などの日本語訳では、この「目録」の要約文がいきなりその章の(というか物語全体の)重大なネタバレになっていたりして驚くこともあった。記憶が定かではないが「水滸伝」の古い訳がそうだったと思う。廃れた理由はそういう興ざめを避けるためかもしれない。

 このように方法を思いついてはいるのです。ただ上に書いたように読み進めていく途上でその章の内容を少しづつまとめていくのは容易だが、読み終わってからやるのは苦行に等しい。もう一度読み返す気力が実はあまりないから。

 WikipediaやDAWikiに掲載されている「あらすじ」をベタ訳する方が早いが、それでは身も蓋もない。読んだことのない(外国語原文と違って読もうと思えば読めるはずの)有名作品の物語を「三行で説明しろ」などという人には無言しか返さないことにしているが、心の中では「悪いがこっちはお前ほど暇じゃない」と思っている。

 自分がもう少し上品な人物であれば、巧妙にねつ造された、だが全くの嘘を教えるのだろう。そして相手は余所で吹聴して大恥をかく。まったく存在しない書物を引用するというネタは例えば太宰治の短編にあったし(嘘であることは読者にわかるようになっている)、ポーだったかドイルだったか忘れたがホメロス(ホーマー)の存在していない一節を引用した作家もいたし、レムはありもしない書籍群の批評集を書いて人々をけむに巻いたが、残念なことに私はそのようなことを仕掛けるには下品過ぎる。

 スティーヴン・キングは幼い頃父親が失踪したため母子家庭で育った。母親が必死に家計をやり繰りして子供たちを世に送り出した時代の話は彼の小説、のちに映画にもなった「アトランティスのこころ」の設定のモデルになっている。
 そんな母親への愛に満ち溢れている彼ですら、後年になって、推理小説をまだ半分も読んでいないのにこっそり結末のページを覗き見している彼女の姿を目にしたときは心底イヤになったと書いていた。

 どうせネタばれブログだろう。言い訳ばかりしていないで早く書けと言われそうだが、まあ、DAIに密接に関連すると踏んでいるゲイダーさんの最新作”Asunder”ならやる気満々ではあるが、言うほど時間の余裕があるわけじゃなし、まだ手法的に悩んでいるし、いきなり取り掛かるもなんなんで助走・準備運動として、背景設定あたりからぼちぼちと。

(蛇足)
 上述の例以外にも「目録」に要旨が記載されている小説って色々あったよなあと探していたら、Amazon Kindleで横光利一氏の「日輪」が無料(すなわち青空文庫)で出ていることを知り、速攻手に入れた(断っておきますが「日輪」には「目録」も要旨もついていない)。

 以前から簡単なあらすじと、当時映画化されたくらい面白い小説であることは知っていたのだが、戦前・戦中の大人気作家であった著者は先の大戦後に「戦争擁護の愛国者」として糾弾され、以降一切正当な評価を受けることがなくなった。そのせいで、彼の作品を手に入れることは極めて困難であったのだ。十年以上前にこの小説を探そうとしていて諦めていた。当時は古書にかなりの金額でも払うつもりだったのだ。
 Kindle万歳。

 「どんな小説か三行で説明してみせよ」と?

 お安いご用だ。

 絶世の美女卑弥呼は、自分を手に入れようと企む近隣諸国の王族たちに翻弄され陰惨かつ数奇な運命を辿るが、やがて彼らを手玉にとるようになり、時には肉親同士を反目し合わせ、時には他国への侵略を身体を許す条件とするなど誑かし、最後には(ネタバレにつき省略(笑))

【答え】

南総里見八犬伝 1814-1842
Three Men in a Boat (To Say Nothing of the Dog) 1998 「ボートの三人男」

2013年8月 5日 (月)

カヴァーはお付けしますか?

 スティーヴン・キングの小説は最近さぼって全然読んでいない。キングに限らずラファティも筒井先生も、他の誰の小説でもどんどん現物の在庫が積み上がっていくだけなのですが。
 読みたいものが片っ端からKindleなど電子書籍化されるならいつでも手に入るし、たとえ衝動買いしても保管場所の心配は(クラウドの容量制限に引っかかるとは思えないので)ほとんどいらない。コンビニが各家庭の冷蔵庫・パントリーの外部化を目指したのなら、電子図書化は自宅の書架・書庫の外部化ってことになる。
 以前も書きましたが、弊害があるとしたら一番大きいのは書籍の「回し読み」、「貸し借り」が難しいことですね。

 和製コミックは(お気に入りの種類こそ少ないが)Sony Reader中心に結構な数手に入れているが、本当に場所を取らないので感動で涙が出ます。過去全巻30冊とか40冊くらいのコミック・シリーズ現物を買っていた頃、Book **fなど大キライ(本を削る? サディストか)な私にとっては、捨てるわけにもいかず、誰か貰ってくれるわけもなく、処分できないまま最後には日に焼けさせたり腐らせたりしてしまって泣いていた。

 ところで、コミック現物版(すなわちリアルのリテール書店)を保護するためだろうが、電子図書化のタイムラグがあり得ないくらい長いのはいかがなものか。現物が出版された記事を見てダウンロード購入しようとしても何か月かたたないと出なかったりする。事情に詳しくないので全部がそうかどうかはわからない。

(追加:と、ある有名コミックの電子書籍化が遅いと文句を書いてから改めて覗いてみたらつい数日前に最新刊がReaderで買えるようになっていた。現物出版から約1か月半遅れ。直前の巻は4から5か月は遅れていたはずなので、徐々に加速してきているのかもしれない)

 自宅のKindleはついにPaperwhite 3G、Fire HD、Fire HD8.9の三台となった。
 勝間なんとかいう女史が「うちにはKindleが7台くらいあってトイレとかあらゆるところに置いているのよ、ハウ・コンヴィニエント!」とかどこかでのたまっていて、またしても純粋な憤怒の念を覚えたが、やってることが似ているからかもしれない。近親憎悪。
 驚くべきことには、初優勝街道爆走中の東北イーグルスの親会社が出したカナダ製端末もすごい売れてんだよな、あれで。またしても出遅れたぞSony(Readerコミックスは私はVitaとSonyスマホで読んでいるので、Reader端末は買ってないし買うつもりもない)。

 ただし電子図書・映像類で利用頻度が高いのはやっぱ(***お子ちゃまはこのブログ読んじゃダメ!***)なもの?
 そんな使い道しかないのも、Kindle本があまりに少ないからだ(ゼッタイ違うだろう!)
 とはいえKindle三台あるからって三冊を同時(シークエンシャリーは良くやっているので、そうではなくサイマルティニアスリーって意味ね)に読めるはずもなし、読む時間が無限にあるはずもないし、今のところは読めるものだけ手軽にダウンロードできる気楽さに喜んでいます。
 そのうちくだらないノウハウ本とか粗製乱造の政治・ビジネス本とかじゃない、読むに値するものが徐々に増えてくることでしょう。

 つい先日、書評で読みたい本が見つかったが「どうせ電子図書化されてないよな」とAmazonで確認してみたら、やっぱりなっていなくて、リアルのリテールに行ってみれば在庫がなくて、仕方なくやはり同時期に書評が出ていたキングの「書くことについて」(On Writing)という文庫を、別のお気に入りの著者の新書と一緒に買った。

「文庫と新書はカヴァーをおつけしますか?」
「いりません」
「ありがとうございます。まとめてヴィニールの袋にお入れしますか?」
「お願いします」

 このリアルリテール書店での会話、ずっと前から意味不明だと思っていた。リサイクル由来とはいえ(いやだからこそ)ヴィニール(プラスチック)の袋の方が紙のカヴァーよか環境インパクトはるかに大きいんじゃないの? 
 書店員の手間が減るから「ありがとう」ということか。カウンターの行列が減るから? 客の目の前で慣れない手つきでカヴァーをつけることこそやめていいと思う。「本を汚さず読みたい」というのは愛書家ではあっても読書家ではない。どうせBook f**k(ん?)に売るためかもしれないし。

 ここは「どちらも要らない」と言えばいいのだろうが、そこまで環境コンシャスネスが高いわけでもない。それにゴミ袋はどれだけあっても困らない。(それをいうならAmazonの「過剰包装」はもはやジョークの世界に突入してきている)

 閑話休題。上で「仕方なく」というのは「これって昔読んだ『小説作法』の文庫化?」ということが気になって、無駄になるかもしれないと思っていたからだが、実際それの改訂版だった。ちょっと士気阻喪しそうになったが、10年以上前に読んだ本をそんなに細部まで覚えているはずもなく、あっちは翻訳・編集が悪かったそうだし、この人って結局読ませてくれるし(この「小説作法」は交通事故の大けがで休筆していた彼がようやく復帰した頃のものだったかな)。

 当時(20世紀末くらいまで)アメリカンのベストセラー作家と言えば、モダンホラーのクーンツとキングがワン・ツー。クーンツはこちらでは馴染薄いかもしれないがあちらでのふたりの人気は拮抗していた。同じくらい売れていたのはホラーでなければ故シェルダンあたり。スーパーマーケットの書棚はホラー、ミステリー、サスペンスがこの順番で占有していた。
 あちらでは「ホラー」がジャンル小説じゃない、という発見は私の自家製「アメリカ論」にも極めて良くフィットするが、その話は長くなるのでまたにします。

 実はクーンツも「ベストセラーの書き方」なる手本書を出している。小説を生業としたい人に向けて言っていることの本質はクーンツもキングも一緒。「死ぬほど読め、死ぬほど書け」。なんか先にネタにした英語学習と似てますよね。この世の中は場数勝負。

 もちろんベストセラー作家になるには他にテクニックもいるそうだが、シェルダンを加えたこのお三方はかなり紆余曲折した人生を送っておられる。テクよかそっちの方が大事なんだろうか。

 おっと、着地点を忘れていた。
 言いたかったことは、ゲイダーさんの小説群はDAファンにはプロットこそ面白いだろうけど、(ご自身も認めているように不慣れだったせいもあって)独立した小説としてそんなにビックリするほと面白くはないということ。

 ゲーム・ライターと小説家の違いもあるんでしょうけどね。

 夏休みに読もうとか思ってる人がいたら別にとめはしませんが。DnDお抱え小説家だったサルヴァトーレ氏のダーク・エルフ・シリーズみたいなものやDnDドラゴンランスなんかの世界を期待すると裏切られます。そこまでドラマチックではない。むしろ敢えてドラマ性を避けて内省的な物語を強調しているのかもしれない。

 なおキングは上述の書籍の前書き(その二)に「できるだけ無駄な言葉を省け」という教えを真っ先に載せている。それを読んでからこの記事を書いたので、今回はすごい苦労しました(笑)。
 

2013年8月 3日 (土)

【DAI】コンセプト・アート

 最近公開されたコンセプト・アート3枚。

Stronghold

 隠されていたのではなく、放置されていたのだ。お前が今手にしている力のように。

It wasn’t hidden, it was uncontrolled. Like the power you now command.

Ruins

 我らの祖先の墓には、とうに忘れ去られた裏切りの名残をとどめる遺骨が散乱している。

The graves of our ancestors are littered with the bones of long-forgotten betrayals.

Ancientprisons

 古の神々が汝らを呼ぶ、古代の牢獄からその歌声で。

"The Old Gods will call to you, from their ancient prisons will they sing".

2013年8月 2日 (金)

【DAI】あの子じゃわからん。

 もはやDAのブログじゃないと言われないように、乾いたタオルからネタを絞り出すようにして。
 おそらく今後DAIリリースまで何度か使いまわすことになるだろう。すでに過去にも似たような試みはしている。
 先にネタにしたPAXAUSのパネルで、クリスが「DAIにはDA小説との繋がりもあるかも」と発言していたのは「そりゃそうでしょ」と気にも留めなかったのですが、書き終えた記事を読み直していて、ふと、どのくらいのキャラクターが使いまわされてるんだっけ、もしかしたらDAIのプロットの推理にも役立つのかなと思いついた。

・収集つかなくなることを避けるため、現にご本人が登場した場合に限る。
・CODEXやレター、レアアイテムの説明のみに登場する場合を除く(例:DAOAのレリアナ、ゼヴラン、DA2のウォーデン/グランド・エンチャンター・フィオナ)。
・登場人物のセリフでメンションされただけのものも除く(例:The Stolen Throneのイーモン卿)
・ゲーム内でキャラクターの生死が分かれる場合は、生き残ったものとする。
・アニメ映画はどうやら「正典」らしいので入れる。
・コミックスは除く・・・、と言いたいところだが大した数ではないのでゲイダーさん原作のもののみ入れておく(オーソン・スコット・カード原作は除く、といってもナイト・コマンダー・グレゴーだけだったかな)。
 ゲーム内パーティーメンバーは*を付した。
 コミックの題名略号:TSG:The Silent Grove、TWS:Those Who Speak, UWS:Until We Sleep
 FEはファースト・エンチャンタ―。

 誰か漏れていたら指摘お願い。

 The Stolen Throne
       マリック →The Calling、UWS
       ローゲイン →The Calling、DAO、DAOA
       ケイラン →DAO
       シェイル → DAO、Asunder

 The Calling
       マリック →UWS
       ローゲイン →DAO、DAOA
       ジ・アーキテクト →DAOA
       ウォーデン・ダンカン →DAO
       ウォーデン・ウーサ →DAOA
       ウォーデン・フィオナ →Asunder

 Dawn of the Seeker
       カッサンドラ →DA2、DAI?
       FE(ホワイトスパイア)エドモンド → Asunder

 DAO    *ウォーデン(PC)→DAOA
       *ウィン →DAOA、Asunder
       *アリスター →DAOA、DA2、TSG、TWS、UWS
       *オーグレン →DAOA
       *レリアナ →DA2、Asunder
       *ゼヴラン →DA2
       *ステン →TWS、UWS
       *モリガン → DAI?
       *シェイル → Asunder
       *ローゲイン →DAOA
       アノーラ →DAOA
       ティーガン →DA2
       イゾルデ →DA2
       FE(フェラルデン)アーヴィング →Asunder
       カレン →DA2
       ボウダン・サンダル →DA2
       イザベラ →DA2、TSG、TWS、UWS
       ドロシア →Asunder
       ソフィア →DA2
       フレメス →DA2

 DAOA   *アンダース →DA2
       *ジャスティス →DA2
       *ナサニエル →DA2

 DA2    *ヴァリック →TSG、TWS、UWS、DAI?
       *イザベラ →TSG、TWS、UWS
       レリアナ →Asunder

 ***
 やってから気が付きましたがこれだけ眺めても意味あんましない(笑)。むしろこのリストに登場しない人がDAIに出てくるケースが結構あるはず。
 ここからわかることは、DAOのコンパニオンたちは大抵どこかに顔を出すこと(犬は勘定に(略))。
 DAOAのコンパニオンたちには、再登場していない人がまだいること。

 Asunderやコミックの重大なネタばれだけは避けるとして(細かいのはすでに上でバレてますね)、DAIへの登場が確実だと思われる人たち。もちろんゲームの物語を生き残っている場合。
 コンパニオンかどうかは(おそらくカッサンドラがそうだろうが他は予想が)難しいのでやめとこう。

【確実】
・シーカー・カッサンドラ
・ヴァリック
・モリガン
・クナリの男性

【文脈上かなり確実】
・ジャスティニア五世(リヴィアド・マザー・ドロシア)
・女帝セリーン一世
・大公ギャスパード
・フィオナ(ウォーデン/グランド・エンチャンタ―)
・レリアナ(シスター・ナイチンゲール)
・フレメス

【シリーズの目撃者としてほぼ確実との噂】
・ボウダン・サンダル(DA2でオリージャンのサークルに招かれていた)
・サー・カレン(またどこかに配転になってナイト・コマンダーに出世してるのかな)

【以下推理・推測レヴェル】
・ロード・シーカー・ランバート(Asunder)
 過去のパターンからすると、小説版で重要な地位を占めていた人物などが、ゲーム内で仇敵・宿敵となっている(ローゲイン、ジ・アーキテクト)。そのままのパターンを踏襲するか。

・ウォーデン・ヴェラナ(DAOA)
 彼女が確実に死ぬケースはなかった気がする。あれからほぼ10年経ってますが、妹さんどうなったかね。
 ゲイダーさんたちライター陣も結構ご執心のキャラなようだし、デーリッシュの叛乱絡みで出るというの、どうでしょう。BioWareはロリキャラは使わないようなので娘(10歳ですからねえ)という選択肢はないかな。

・アヴェリン(DA2)
 オリージャンの父親絡みの謎が解決していない。カークウォールに踏みとどまってはいないのかな。こちらもドニックとの間の子供ネタあるかも。

・プリンス・セバスチャン(DA2)
 個人的にあんまし出てほしいとは思わないが、(特にアンダースが生き残っている場合)文脈上出さざるを得ないのではないか? フリー・マーチズの統合ネタ(失敗するだろうけど)なんかもありそう。

 DAOのコンパニオンが皆再登場しているので、他のDA2コンパニオンもホークの双子の妹弟含め、顔出し程度では出るとみているのですが。

・シェイル(DAO、Asunderなど)
 実際DA2にもボツになった彼女のプロットがあったそうなので、今度こそありそうな気がする。本当の歴史の目撃者としては事実上不死になっているゴーレムがふさわしい。The Stolen Throneから登場しているので、この先ずっとDAの物語に出続けるなんて粋だと思う。ハトや鶏にとっては迷惑千万。あるいはドワーフの姿にとうとう戻るとか。

・アリスター(DAO、DA2など)
 モリガン出すなら出すだろうと思う。

・ジャスティス(DAOA、DA2)
 アンダースの生死にかかわらず、フェイドには戻れないんでしたよね。どうなったんだろ。

・ファースト・エンチャンター(FE)たち、あるいはメイジ・フラタニティの代表者たち(Asunder)
 DAIのプロットがすでにセダス各地のサークル・オヴ・メジャイがなくなった状態からはじまるとすると、FEという肩書きも意味を喪っているんですね。メイジ勢力はフィオナで代表させるほうがスマートとは思うけど、FEたちやフラタニティ代表者が出てくると色々面白いかもしれません。

 とりあえず「あり得そう」なキャラに絞りました。こじつければ誰だって再登場できてしまいますし、あんまりやり過ぎて過去キャラ総登場となるとMass Effect 2みたいに「銀河せまっ!」と突っ込まれてしまう。
 オープンワールド指向って言ってるんだからねえ、って「そんなに都合良く馴染みに出会わないだろ」も、「探し続ければセダスのどこかにいるわけでしょ?」も、どっちもありうるか。

 ところで何度やってもグレイ・ウォーデンの出番が見当らないんです。フィオナ、アンダース、ヴェラナ(よく考えたらみんなメイジだ)がウォーデンといってもそれぞれ違う役割のほうが重要になっているし、ウォーデンの業務に日々励んでいるのは国王でも酔っ払いでもないウォーデン・アリスターくらいだし。
 と思っていたら、新しいコンセプトアートが発表になった。古の神に関わるものらしい。ここにきてアーチディーモン関連のネタが? んー、それについては次回。

 個人的希望。Witch Huntのあの二人(デーリッシュ・ハンターのアリアンとヒーラー・フィン)はモリガンがどこに行っていたのかの謎を解く繋がりで出てきて欲しいかな。なんか好きなんすよね。あ、そういえば犬も登場していたか。いいよこの際、犬もセットで。

 新情報が出るか、パトリック・ウィークス氏の小説が出るかしたら、またアップデートすることにしよう。

【DAI】競争ではない。

 過去記事には追加しておいたのですが、PAXAUSにおけるBioWareパネルのヴィデオがGameSpot AUにアップされています。全部で1時間15分。当初1時間の予定を延長したようです。

http://www.gamespot.com/mass-effect-3/videos/bioware-journeys-down-under-panel-pax-australia-2013-6411947/

 パネラーは、以前も紹介したとおり、Cameron Lee(プロデューサー)、Patrick Weekes(シニア・ライター)、Karin Weekes(リード・エディター、パトリック氏の妻でもある)、そして“Evil” Chris Priestly(コミュニティ担当)。クリスは先月末で長年勤めたBioWareを退社したそうです。

 Weekes夫妻が「ウィークス」夫妻であることもようやくわかりました。過去ウィーケスと表記していましたがやっぱ違いましたね(笑)。

 過去記事で触れていなかったところをかいつまんで紹介しようかと思っていたのですが、時間がなくてもたもたしている間にEurogamerなどゲームサイトですでに一部触れられているようである。

http://www.eurogamer.net/articles/2013-07-24-dragon-age-saves-absolutely-come-across-to-inquisition

 質疑応答形式なので、雑駁な感じになりかねませんが、(他にネタもないし)いってみましょう。

「過去のDAゲームのセーヴファイルに保存されているプレイヤーの行った選択は、(DAIに)間違いなく引き継がれ反映される」(キャメロン・リー)
「私たちのゴールは、どのプラットフォームで遊ぶかに関わらず、プレイヤーに同じだけリッチな体験をしてもらうことだ」(パトリック・ウィークス)
「過去のゲームとの繋がりは間違いなくあるし、小説との係りがあるかもしれないし、以前のゲームをプレイした者にそれとなくわかるものかもしれないが、過去のゲームに依存するということはない。(過去のゲームは)むしろ触れてみることができる礎石のようなもの」(クリス・プリストリー)

「(Originsの主人公であったグレイ・ウォーデンが再登場するかどうかは)良い質問だが、答えられない」(キャメロン)

「(DAIはWitcher3との競争に勝てるかという質問に対し)開発チームは優秀で、さらに時間も手に入れた。当初から一年間のリリース延期となったので、もちろん(伍していけるだろう)」(キャメロン)

「競争という言葉は違う。ヴィデオゲーム会社はお互いに嫌いあっていて『奴らのゲームを叩き潰すぜ』と言い合っているという物語を語りたがる者たちがいるが、それは本当に間違いだ。私はゲームが大好きだからBioWareに入ったのであるから、次のWitcherゲームも素晴らしいものであることを願っているし、私たちの作品も素晴らしいものになるように願っていて、さらに皆が両方のゲームを買ってどちらも遊んでくれることを願っている。

 世の中に本当に素晴らしいゲームが登場するたびに期待される水準のハードルが高くなっていくが、それは脅威ではない。本当の脅威は、自分たちがこれ以上水準をあげられないと考えてしまうことだ。私たちは他のゲームを見るときは、『素晴らしいゲームだ、その優れたところをBioWare流になんとか取り込めないか』と考えるのだ。

一番手ごわい競争相手は、私たちが本当に叩き潰したいと思っているのは、自分たちの過去の作品だ。それが自分がDAチームにいることを本当に名誉と感じる理由のひとつでもあるし、同じようにMEチームに参加していたことを名誉に感じている理由のひとつでもある。新しいプロジェクトが始まるたびに、『よし、過去のゲームでやり遂げた最良の点をとらまえて、今度はそれを上回る出来栄えにしよう、過去の美点が新しいゲームにはとても取り込めないと思えるくらい陳腐で古色蒼然と見えるようにしてやろう』と言ってるんだよ」(パトリック)

「(コンバットについて)過去のどちらのゲームも優れた点がある。どちらのゲームも人々から改良を求められている点もあるし、どちらも優越している分野がある。DA2の素早く流れるようなコンバットはそのひとつで、場面の中でキャラクターを動かす点では優れているので、自分としてはなくしてほしくない。その上でさらにDAIにもOriginsのようなコンバットのタクティカル性を持ち込んでほしい」(パトリック)

「(主人公のVOはDA2に引き続いて与えられるし、またVOを複数声優から選択可能にできないかという質問には答えられないが)私たちがやりたくないのは、モラル上困難な決断を示すに際して、毎回毎回選択文のテキストがこれ見よがしに明るく光っているようなことだ」(パトリック)

「(セリフのパラフレイズ(選択用に示される短文)については)DAIでも用いられるが、選んだパラフレイズのテキストが必ずしもホークやシェパードが実際に喋る内容を反映していないという不満を一部のプレイヤーが抱いていることは承知しているし、その点は改良していけるだろう」(キャメロン)

「(ME3では説得の選択肢が赤色または青色に光っているが)あれには功罪があって、内部でよくこんなジョークをとばしていた。『おお、なんて難しいモラル・チョイスなんだ! 待て、赤か青のテキストは出てないか? よし、それが勝利への道だぜ』」(パトリック)

「少なくともDAIにおいては、この(赤と青のテキストの)問題については何とかしたいと思っている。必ずしも二度と用いないということではない、なぜなら、より良い結果を得るためには前提条件が必要となるセリフの選択肢を用意するというのは粋なアイデアだと思うからだ。(キャラクターの)スタッツにポイントを割り振るとか、パーティーに誰かが同行しているとか、ゲームの最初のほうで行った選択でセリフ選択肢がアンロックされるとか、そういうことでゲームをプレイしてくれるプレイヤーにご褒美をお返しすることになるわけだ。そういうのが好きだ。

「(Mod用ツールの提供について)議論はした。検討はしてみたが、Frostbiteエンジンが相手なのでかなり難しいんだ。
 いずれやるかもしれないが何とも言えない。ゲーム開発者を目指すハードコアなファンや開発者だけじゃなく、すべてのファンが使えるように仕上げるには大変な労力がかかるんだよ」

*****
 キャメロン氏はオーストラリア出身なので、このトリップはお里帰りになる。彼の喋りには豪州訛りがあって、おそらくそのせいであまり多く喋らない(語尾などを濁す)人なので、私ごときのヒアリングでは若干意味が取りきれないところもあった。一部とはいえテキストに起こしてもらえたのはうれしい。

 上でもとに使ったEurogamerのテキストでは、私のお気に入りのやり取りが抜けていました。

ファン「DAIのコンパニオンの人数は大勢にしてもらえないか?」
パトリック「ん、それはパーティーの中の人数のこと? それともベンチも含めた総数のこと?」
ファン「後者」
パトリック「ああ、なるほど。どっちみち答えられないんだけどね」(会場爆笑)

 つうことで、いつものBioWareパネルどおりに「ごめん、答えられない」を連発していた四人ですが、こちらがイライラしそうな愚問(上の例ではWitcher3の話とか、DA2への「またか」というような批判とか、MEエンディング騒動の話とか)も実は少数ありました。その他SWTORとかKOTOR関係もちょっとあったかなくらいで、ほとんどはDAIに関する質問。

 セーヴファイルを用いた過去の決断の反映については、「具体的にどのように」という点は語られませんでした。
 PC(いずれMacも)と現世代コンソールはともかく、次世代コンソールはどちらも現世代との互換性はないとされているので、ファイルを変換する方法を用意するのか、あるいは次世代機についてはMass Effect 2のPS3版で(後にMass Effect Wii U版でも)用いられた外付け紙芝居DLC(interactive backstory comic、Mass Effect Genesis1/2)で過去の選択をおさらいさせるのか、それともDA2リリースの際にユーザーが作ったOrigins/Awakeningセーヴファイル書き換えアプリの類をオフィシャルに用意するのか?

 個人的には紙芝居形式ではコアファンの(余計な)怨嗟を招くと思う。継続性はオタクの大好物。コアな人たちは、あのGenesisで選べるような「誰でもわかる表面的な」決断などではなく、もっと些細でその時は気にも留めなかったような(選択の結果としての)出来事が後日反映されるのを好むのですよね。

 そうは言ってもセーヴファイル書き換えアプリはあまりに身も蓋もない。あれを見てしまうと過去ゲームからどんな変数が持ち込まれているのかが全部わかっちゃう(実際に後続ゲームでその変数が使われるかどうかは別です)。本編をさんざっぱらやり倒したハードコアなプレイヤーはまだしも、カジュアルな僕ちゃん嬢ちゃん(つうかアダルトゲームだけど)に触らせるのはいかがなものか。人体解剖もゲームの解剖も見ないに越したことはない。

 せっかく新旧世代全部同時リリースを宣言したのに、新世代機のほうに制約をかけちゃったら意味がないし、上のパトリックの発言とも矛盾しそう。
 そうなると、PS4とXOne用にオンラインでのファイル変換サーヴィスってことかなあ。ところで新旧ネットワークって共通なの? どうなんでしょ。

 それから、ファンの集いなのにマルチプレイについてほとんど言及されない。DAファンには元々マルチプレイに一切興味がない人が多数なのは間違いないのでさもありなん。
 すべてのゲーム、あらゆるプラットフォームにコネクティヴィティを持たせる、というEAのピーター・ムーア(COO)の宣言なんか皆忘れちゃってるのかな。
 それとも新旧コンソール向け開発の負荷が半端じゃないので、諦めちゃった?
 個人的には「なし」でいいです。

 

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